探し物

日もだいぶ落ちてきた頃、カービィと女の子はもとの公園に戻ってきました。猫がいそうな所は全て探し終えてしまったからです。

女の子はとても悲しそうな顔をしていました。カービィはその悲しみを取り除いてあげたいと思いましたが、自分1人の力ではこれが精一杯なのだと思ってしまったのです。仲間の力を借りなければいけない…と。


その時


ブオオオオオ!


道路の向こうから大きなトラックがやって来ました。こちらを通り過ぎようとしているのです。

「あ!」

女の子がいきなり声をあげました。女の子の視線の先には…


「ネコだわ!」

なんと1匹の猫が道路を横断しようとしていたのです。この夕暮れ時、トラックは猫の存在に気付かぬまま猛スピードでこちらに向かってきます。このままではあの猫は後数秒で確実に轢かれてしまうでしょう。

「いやああああああああああ!!」

女の子は悲鳴をあげます。きっと自分の猫と重なって見えてしまったのかもしれません。カービィはその叫び声と同時に弾かれるように走り出しました。そして電話でどこかにかけると…どこからともなくワープスターが現れました。

「ポヨー!!」

カービィはワープスターに飛び乗ると、猛スピードで猫のもとへと飛んでいきした。

キキイイイイイイイイイ!!!

トラックはカービィの乗ったワープスターに気付き、慌ててブレーキを踏みました。そのお陰もあり、カービィは間一髪猫を拾い上げたのでした。


「……」

カービィは猫を救った事を知らせようと、女の子のもとへ戻ってきました。けれど、女の子はその場に座り込み、動こうとしません。

「ポヨ?」

カービィは心配になって女の子の顔を覗きこみました。女の子は、声も出さずにただただ泣いていたのです。

「!?」

カービィは慌てて女の子の涙を拭おうと手を差し伸べました。けれど、涙は水のように冷たく、水のように冷たい涙は雨のように流れ出て、カービィの手をすり抜けていくのでした。


「思い出したの…」

「…?」

女の子はぽつりとそう言いました。カービィは、女の子はカービィではなくもっと遠くの物を見ていることに気付き、女の子の視線を追いました。
するとそこには、歩道にある電信柱。そしてその下に、花束やお菓子、手紙などが置かれていたのでした。カービィは、何故道端にお花やお菓子が置かれているのか不思議でなりませんでした。

「ミーちゃんは…もう……ごめんなさい……ミーちゃん…」

女の子は涙を流し、ただただミーちゃんにごめんなさいと謝り続けていました。カービィはどうしたらいいのか、何と声を掛けていいのか分かりませんでした。でも、悲しくて悲しくて、いつの間にかカービィも大きな声で泣いていたのでした。

それに一番驚いたのは女の子です。女の子は目を丸くし唖然としていました。

「ポヨちゃん…!?」

カービィはワンワンと泣いています。暫くしてカービィは自分のせいで泣いているのだと気付いた女の子は慌ててカービィに謝りました。

「ごめんね!ごめんねポヨちゃん!わたしもうダイジョウブだから泣かないで?」

そう言われたカービィは目を開けました。目の前の女の子はもう涙を流しておらず、泣きじゃくった顔で微笑んでいました。
あぁ、よかった、とカービィは思いました。目の前の女の子は笑ってくれているのです。とても安心したのか、いつの間にか涙も引っ込んでいました。


「ポヨちゃん、今日はありがとうね!ミーちゃんがどこにいるのか分かって、ほんとうに良かった…」


そう言って女の子はニコリと微笑みました。カービィも、それにつられて微笑みました。

「わたし、もうかえらなきゃ」

もう日が沈みかけ、空の色が深い青になろうとしていました。きっと皆心配しているでしょう。
カービィはそう思い女の子の方へ向くと…

「ポヨヨ?」

女の子はもういなくなっていました。まださよならも言っていないのにな…と思いながら、カービィもとぼとぼ家路に着くのでした。


館に帰り着くと、ルイージを始め、メンバーの皆が心配して待ってくれていました。
大人達には「暗くなる前には帰りなさいと言ったでしょ!」と怒られたけど、「ちゃんとお使いできたね」とも言われて、カービィはとても嬉しかったようでした。

夕ご飯の後、カービィはマリオに今日起きたことを話しました。
一通り話し終えると、マリオは頑張ったねと頭を撫でてくれました。

「カービィ、明日一緒にその公園に行こうか。何かお供えの物持っていかないとね」

「ポヨ!」

そう元気な返事をしたカービィは、今日買った大好きなマキシムトマトをあげようと思ったのでした。


大好きなあの子にまた会えることを願って…


おわり


次、あとがきとおまけ
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