ケンカ

~スマブラ館居間~

トントンカンカン

「たっく、何で我輩等があの兄弟喧嘩の後片付けをやらなぁいかんのだ!」

「本当、全くだ…!」

そう言いながら壁の修繕をしているクッパやファルコンを始め、男たちが後片付けをしていた。

「ほらほら、いつもは貴方達が壁を壊している側なのですから、頑張って下さい!」

「「そうだそうだー!」」

そう言いながら、ゼルダや子ども達は側で男達の応援をしているのだった。


「はい、マリオ!これでいいわよ!」

「…ありがとうございます。姫」

マリオは居間のソファに座らされて、ピーチから斧男にやられた左腕と、ルイージに殴られた頬の傷の手当を受けていた。

両方共そんな大した怪我ではなく自分で処置できるのであるが、目の前にいる優しき姫が、自分の為に手当をすると申し出てきてくれたのだ。その申し出を無下にすることはマリオにはできなかった。

そんなマリオの元に、サムスがやってきた。

「どう?怪我は」

「あぁ、姫が手当してくれたからね、この通り大丈夫だよ」

「そう、それは良かった。…ねぇマリオ」

「?」

「何故貴方、ルイージを追わなかったの?」

「…」

サムスの質問に、マリオは黙ったまま俯いた。

「殴られたから怒ってる訳?」

「いや…、そうじゃないんだ」

「…」

「ずっと考えてるんだ…、何故あんなにルイージは怒っていたんだろう…って。それが分からなきゃ、僕が何を言っても通じない気がするんだ」

「…そうね」

だからマリオは、一発殴った後、飛び出したルイージを追わず、ずっと考え込んでいたのか、とサムスはそう納得していた。


「そんなの簡単よ」

2人「?」

マリオの隣でずっと話を聞いていたピーチが、そう一言言ってのけたのである。

驚いたのは他でもないマリオだ。

「な、何故ルイージは怒っているのです…!?」

そんな彼の問いに、ピーチはさも当たり前のように答えた。


「だってマリオ、貴方誰にも頼りなさすぎだもの」

「!?」

「確かにね」

サムスもそう同意するように、マリオはリーダーだからといって色んな仕事を一人で抱えている所がよくあった。そして今回の斧男の事件でも、事務仕事などを終えクタクタの身体で挑んだ結果故の怪我なのだ。

「貴方の事を1番よく知っているのは他でもないルイージなのよ?彼が心配しないはずないわ」

「私もそう思うわ…」

「サムス…」

「もし私がルイージの立場だったら…きっと…

もっと自分を頼ってほしいって思うわね…」

「!?」

『兄さんはいつもそうだ!!
自分ばっかり犠牲に…』

サムスの一言がマリオの中で、ルイージが殴られる前に言っていたこととリンクしていく…。

「私は、…こう思うわ」

「姫…?」


「…1人で抱え込んでいる貴方が壊れないように、守って、支えてあげたいって…」

「ぁ…」


ザザザ…


ピーチの一言が、マリオの記憶の中に眠っていたある思い出を呼び起こしたのだ。


『じゃあ僕は…   』


ザザザ…


忘れていた、遠い日の大事な大事な約束。


(思い出した…)

「そうか…、だから怒ってたのか…」

2人(マリオ?)

2人が心配する中、マリオは1人納得できたように独り言をつぶやいていた。そしてスクッとソファから立ち上がったのだ。

「2人共ありがとう。ちょっと行ってくる…!」

「えぇ、いってらっしゃい」

「気を付けてね!マリオ!」

マリオは2人とスマメンに見送られながら、館を後にした。

「…。あっちにいそうな気がする…」

(今ならきっと…仲直りが出来る気がするよ、ルイージ…。待ってて…)

マリオは手を胸に当て、心のまま森の方へと向かうのだった。
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