口は災いの…


「え、えええええ!??ほんとにぶつかっちゃったのぉ!?」

ネスの驚きの声にマリオは「うん」と頷く。そんなマリオにフォックスはドン引きしつつも心配そうに声を掛ける。

「大丈夫だったのか…?」

「うん、まぁそこは大丈夫。ぶつかった時に宙に投げ出されたけど無事に着地したし、二人なんか着地した後その場で乱闘しだすし」

「「えぇ…」」

「もう大変だったんだよぉ…、ブロックにぶつかったせいでバイク壊れちゃったし、二人の乱闘が激しすぎて止められなくって、結局僕が一人で後片付けするはめになったし、マスターなんか『折角ヒト(神)が作ったものをたった小一時間でぶっ壊すとは!もっと大切にしろ!』ってご立腹だったから。謝り倒したのも僕だったし」
「いや流石にそれはマスターが正論だわ」
「ごもっともじゃね?」
「マスター可哀想」

「えぇ!?ま、まぁそうなんだけど…」

「でも僕も大変だったんだよ…」と体育座りで少しいじけだしたマリオに対し、「あー悪い悪い、冗談だ…」、「よしよし」とそれぞれ頭を撫でてあげているフォックスとネス、「悪かったって」と軽く謝るこどもリンクなのであった。
二人のお陰でマリオの機嫌が戻った所で「ところでさ」と、こどもリンクが切り出した。

「マリオお前、今日朝からいなかっただろ?大乱闘誘おうと思って探したんだぞ」

「え?そうだったの?それは悪かったね」

「確かに、そう言えばいなかったな。何処行ってたんだ?」

フォックスの質問にマリオは「あぁ」と何でもないように答えたのだった。


「ガノンとツーリングに行ってたんだ」


・・・。


「「は?」」

「な、何でガノン…?しかもツーリング…?」

三人共困惑している中、こどもリンクが戸惑いながらそう尋ねると、「いやどうやらね…」とマリオは説明を始めた。

「あの後バイク熱に火がついたみたいで、早々に免許とってあちこちバイクで行くようになったんだって。それで一人だとつまらないからってよく僕を誘ってくるんだよね」

「「え…」」
「えー凄い!バイクで旅いいなぁ!」

「確かに凄いよねぇガノン、最近はサイドカーにも手を出してさ、僕を側車に乗せて色々な場所に連れてってくれるんだよねぇ。この間も…」とネスにこれまでのガノンとのツーリングの話をし始めるマリオである。
そんな中こどもリンクは「なぁ、フォックス」と二人の会話を遮らないよう小声でフォックスに話しかける。

「なんだ…?」

「なんて言うか、その…この話、クッパやルイージ達が聞いていなくて良かったな…」

そんなこどもリンクの言葉にフォックスは困惑しつつも「あぁ、そうだな…」と返す。
マリオに対して異常に独占欲を示すクッパと誰から見ても心配性を通り越したブラコンなルイージ、そしてマリオにぞっこんなピーチ姫等々、マリオに対して特別な感情を抱いているファイターが少なからずいる。そんな彼等にこの話を聞かれたらどうなってしまうのか想像に難くない。だが幸いなことに、彼等は現在乱闘中の為この場にいなかったのが救いだ。その事に心底ほっとしつつも、とある疑問をフォックスはこどもリンクに投げかける。

「だが、何故ガノンドロフはマリオを誘っているんだろうな?ツーリングなら他の奴らでも良さそうなのに…」

「さぁ…当て付けじゃね?クッパへの」

「…一理あるな」

彼のその言葉に、何故か妙に納得してしまったフォックスなのであった。
結局マリオの話は彼らの番が来るまで続いた。後にネスから子ども達にツーリングの話が広まり、子ども達がガノンへバイクに乗せてほしいとお願いした事がきっかけでこの話がクッパ達の耳に入り、ガノンとクッパによる大喧嘩の末、仲裁・後始末に奔走することになるとは、今のマリオには予想だにしなかったのだった。

おわり

次、あとがきとおまけ
4/5ページ
スキ