口は災いの…
「バイクに乗りたい…って?」
そう聞き返すマリオの顔はキョトンとしていた。
そしてそんなことを言ってきた人物であるガノンドロフは、彼の言動に対し腕を組み少々不本意そうな態度ではあるが、一言「そうだ」と返したのだった。
休日の昼下がり、まったりとしていたマリオの元にガノンドロフが急にやってきた。
滅多に無い機会に何事かと思いどうしたのか尋ねてみると、先程の一言で思わず呆気に取られてしまったマリオであった。
何で急に…?と言いたげな彼の眼差しを現在一身に浴びている男ガノンドロフは、苛立たし気に見つめ返す。
「悪いか?」
「い、いや悪い訳では無いんだけど、何でまた、その、バイクに興味を?」
その問いにガノンは苦虫を噛み潰したように話し出した。
「…あの小僧が乗っていた…というのもあるが…」
小僧はリンクのことだと推測し「あぁ…」と一人呟くマリオを他所にガノンは語り始める。
「貴様の所の亀の野郎が見せつけてきたのだ。新作なのだ、と吐かしながらな…!」
「亀って…あぁクッパのことか…」
「そうだ、そのクッパだ、彼奴め、そんな物に興味など無いと言っているのに、そういえば免許持って無かったのだったなと更に煽りやがる…!」
「う、うん…」
「興味が無かったから持っていないだけで!断じて!運転が怖いから持っていない訳ではないのだ!俺は!分かるか!?」
「わ、分かる分かる、分かるからちょっと落ち着いて…っ、ね?」
マリオにそう言われたガノンは少しクールダウンしたのか、「ごほん…!」と咳払いをした後ゆっくりと話し出す。
「兎に角、今すぐにでもバイクに乗れる様にしてもらいたい」
「そ、そうか、話の内容は分かったけど、バイクについての知識とかはある?」
「無いからお前に聞いているのだ」
「そ、そうだよねぇ」
あははーと苦笑いを浮かべるマリオであったが、彼自身どうしても聞きたいことがあり、おずおずとガノンに尋ねた。
「後、つかぬ事を聞くんだけど…」
「何だ?」
「その、何で僕に?他にもバイクの操縦が上手なファイターがいると思うんだけど…」
その質問を聞いたガノンはより一層苦々しい顔を浮かべたのだった。
「…、小僧やクッパに聞くのは癪だしワリオは臭いから嫌だ。他の者も用事があるとかで教える機会が無いと言う。ファルコンに聞いてみるとマリオなら運転できるし教えてもらえる筈だと…言っていたからだ」
「な、成程…」
ガノンの話から他のファイター達からのたらい回しっぷりが容易に想像できた。だから僕にお鉢が回ってきたのか…と渋々だが納得はしたマリオであった。
「分かった。じゃあとりあえず実際に乗ってみようか」
そう笑顔で言いながら立ち上がるマリオに対し、「お前のそういうノリの良さは褒めてやっても良い」と小さく笑うガノンであった。