憧れの貴方へ


ここはキノコタウンから少し離れた所にある原っぱ。この原っぱにはノコノコ達が暮らす村への通り道があり、ノコノコロードと言われている所である。

「ぐずっ…!えぐっ…!うぐっ…!」

そして僕はその原っぱで座り込み咽び泣いていた。
理由は単純。僕はルイージさんに振られた。というより逃げられたのだ。

僕は何故逃げられたのか全く分からなかった。だから「待って!ルイージさーん!!」と叫びながら彼を追いかけた。
だが彼は待ってくれず逃げるばかり。僕は内心どうして?と思っていたけれど、彼の家まで行ってやっとその理由が分かった。

僕が彼を追いかけて彼の家の前に立った時、中から彼の声が聞こえてきたんだ。

「いや僕本当に怖かったんだから!!あんなにガタイの良いヨッシーから急に告白されたら誰だって逃げるに決まってるでしょ!」

僕は彼の言葉を聞いて愕然とした。
彼がそんな事を思っていただなんて…。
ただただショックで涙が止まらず、僕はたまらずその場から逃げるように走り去った。
僕は涙を流しながら走った。泣きながらキノコタウンを走り抜け、いつの間にかこの原っぱに来ていた。誰の気配も無いこの場所に僕は座り込み、今の今まで咽び泣いていたのである。

暫く泣いて、ちょっと冷静になってきた所でなんでこうなったのか少しだけ考えられるようになってきた。
そういえば僕が彼と会った時はまだまだ小さいチビヨッシーだったっけ。あの時の僕と大人になった僕とじゃ姿がかなりかけ離れている。これじゃあ誰か分からない訳だ。
後、三年ぶりに見たルイージさんにテンションが上がり過ぎてしまい、いきなり告白してしまったのもきっと良くない。凄くびっくりしてたしなぁ、そうだよなぁ…。
幼い頃から猪突猛進な父とよく似ていると言われていたけどまさかこんな大事な時にそんな性格が仇になるとは思わなかった。

考えれば考える程自分のしていた事が悪手であったというのがよく分かり激しい後悔に陥っていた。

(もうこのままルイージさんには会わずに帰ろう…)

きっとまた会いに行ったら、きっと彼は怖がってしまう。それだけは僕も嫌だった。

そう思った時、僕の後から草を踏む音が聞こえてきた。

ハッとして振り返ると、そこにはルイージさんがいたんだ。
僕は思わず「ルイージさん…」と呟いた。でも急に彼に会ってしまったから何て声をかければ良いのか分からず、それからの言葉が続かなかった。

「え、えっと…君の泣き声を家の中から聞いちゃったんだ。だから…何だか居ても立っても居られなくて…こうして追いかけてきちゃった」

そう言って困ったように頭を掻くルイージさん。
もう会わないようにしようと誓ったのに、最後の最後まで彼に迷惑をかけてしまうなんて…。
そう居た堪れない気持ちになった僕は彼に向かって土下座をし、大きな声で「すいませんでした!!」と謝った。

「僕、憧れのルイージさんを見て舞い上がっちゃって!それでもう我慢できなくて!ルイージさんのことを考えずに突っ走っちゃって…!」

「そ、それであんなことを…」

「すいません!!」

彼の呟くような一言に僕は更に頭を下げ地面にめり込ます勢いで謝った。
流石にそれはやり過ぎたのか、ルイージさんに「ちょ、そんなに謝らなくていいからっ、顔上げてっ」と焦らせてしまった。

僕はルイージさんの言われた通りに顔を上げると、ルイージさんは相変わらず困った顔をしつつも僕に質問をしてきた。

「所でさ、どうして君はそんなに僕の事が好きなんだい?」

「それは…」

僕は彼の質問に答える為、チビヨッシーの時に起きたルイージさんとの出来事を語った。掻い摘んで話すつもりがどんどん長くなり、自分で言うのもなんだけどかなり熱弁してたと思う。本人の前で。これは後々後悔するやつ。

語り終わった後ハッとしてルイージさんを見ると、彼は何か考え込んでいるようだった。

(しまった…!やっぱりやり過ぎた…!)

そう思った僕は「す、すいませんっ、語り過ぎました!」と言って謝ったんだけど、ルイージさんは「あ、う、うん、大丈夫…」と生返事しただけだった。…やっぱり引いてるのかもしれない。これ以上ここにいたらお互い気まずいし辛いだけだ。
そう思った僕は立ち上がりルイージさんに向かって「僕は島に帰ります。本当にご迷惑をかけてしまってごめんなさい」と言い頭を下げた。

「え?」と驚く彼をよそに僕は歩き出す。
彼を見てしまったらまた泣いてしまいそうで、僕はこのまま彼を見ることなく立ち去ることにした。このまま島に帰ったら、もうこの思いは封印して生きていこう。

そう思いながらトボトボと歩く僕の後から、「ま、待って!」と叫ぶルイージさんの声が聞こえた。
その声に反応して僕は振り返る。
振り返えると真剣な顔をしたルイージさんが僕の側にいたんだ。

「僕も君に謝罪をしたいんだ!君のことが分からなくて逃げちゃったこと、そして僕の言葉で君を傷つけたこと。本当にごめん!そして君のことを話してくれてありがとう。君の話を聞いて君がどれだけ僕のことを思ってくれているのかが分かってとても嬉しかった!」

「…へ?」

僕は一瞬彼の言ってることが分からずつい聞き返してしまった。だって、僕が熱く語り過ぎていたから引かれていたと思っていたから。まさか嬉しかったなんて思ってもみなかった。

「ほ、本当に、嬉しかったんですか…?」

「う、うん…。僕のことを本当に思っていて、努力してくれたんだなって伝わったよ。その思いが凄く嬉しかった」

僕はその言葉を聞いて、今まで重りをつけられていたかのように沈んでいた心が一瞬で天高く舞い上がった。
嬉し過ぎて「ほ、本当ですかぁ!?」と聞き返してしまった。

「う、うん…。だからさ、その、いきなり付き合うというのはちょっと、まだお互いのことを知らないからさ、まずはお友達としてお喋りしたり遊んだりしたいな」

僕はルイージさんのその言葉を聞いて衝撃を受けた。
だ、だって、だってそんなこと言われたら、まだ僕の事嫌いじゃないって、また会っても良いって、勘違いしちゃうじゃないか。
本当に、このまま勘違いしてても、良いのかな…。

だから僕は堪らずに「と、友達になっても良いんですか…?」と震える声で聞いた。
するとルイージさんは、とても優しい声で「うん、良いよ」と答えてくれたんだ。

「また、会いに来ても…?」

「勿論。…あ、でも流石にあの勢いで迫られるのはちょっと怖いかな」

「そ、それは、やらないように頑張ります…!」

「ふふ、そうか」

ルイージさんはクスリと笑いながら「じゃあ大丈夫だね」と言ってくれたんだ。その笑顔が眩し過ぎて、僕は思わず頬を赤らめ呆けてしまった。この笑顔が、僕が三年もかけて見たかったものだったと分かったんだ。

でもこれからはこの笑顔を沢山見る事ができるのかと思うと本当に嬉しくて仕方がない!
今はまだお友達になったばっかりだけれど、これからどんどん仲を深めて、いつか恋人に…ルイージさんに釣り合う素敵な大人のヨッシーになれる様に頑張りたいと思う!


ヨッシー視点おわり

次からルイージ視点。
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