Lという名の男の話《前編》
爆発を受けた俺が次に目を覚ましたのは何もない真っ暗闇の中だった。しかも俺自身は空中のような、水中のような感じの闇の中をまるで水死体の様にふよふよと漂っているようだった。
自分でも何を言ってるのかよく分からないが、兎に角俺は何も無い真っ暗闇の中を漂っているのだ。
目を開けた筈なのに真っ暗。暫くしても目が暗闇に慣れるということもなく、ずっと暗闇が広がっているようだった。
そして身体は…あの爆発が本当にあったのか疑問に思える程、痛みが無い。全く無い。それとも全神経が逝ったか?
だが身体を動かすことは…どうやらできるようだ。でもこのふよふよ漂ってる感じはなんともできない。ただじたばたしながら漂ってるだけだ。
しかも今気付いたが、普通暗闇なら俺自身も見えなくなる筈なのに、こんな光源なんて皆無の中俺自身を見ることができてるのだ。…え、俺発光してんの⁉︎何だこれ?え?ほんと何だこれ?
「んもーー!!何だこれーー!!訳分からんーー!!!」
俺は怒り半分やけくそ半分でジタバタと全身を動かしまくった。
だがその時、ガクン!と身体に重力が働いたのだ。そしてその事に気付いた時にはもう遅く、俺は床(相変わらず全面真っ暗だがそこの部分だけ固くなっている所)へ頭から落ちた。幸いその床から浮いてたのは十センチ程の低い位置だったのもあり、落ちた時に「アバッ!?」と変な声が出ただけで済んだ。
だが、痛いものは痛い。後心もちょっと痛い。何でって?変な落ち方して恥ずかしいからだよ!言わせんな!
「くっそー…、ほんと何処だここ…」
痛かった頭や首辺りを摩りながら俺は周りを見渡す。先程同様、変わらずの真っ暗闇だ。そして自分だけの謎な発光。うわー、服のシワまで綺麗に見えるぜ。黒なのに。全然ありがたくねぇけどな!
に…さん…ど…?…
「ひ!?」
急に後の方からテレビの砂嵐のようなノイズに混じり誰かの声が聞こえたのだ。思わずビクッてなった。
こ、こここれは不可抗力だぞ!360度ぐるりと真っ暗闇なのに誰かの声が聞こえてくるなんて普通思わないだろ!?ただ単にビックリしただけだ!俺が怖がりだからじゃないんだからな!!
『うわあああ!!何処ここ!!に、兄さあああん!!』
「ひぎゃああああ!!?」
先程とは違いここら一帯に響き渡る程の大絶叫が俺の後から聞こえたのだ。び、びびビビってねぇしっ!不可抗力だしっ!いきなり大声出されたら普通誰でも驚くもんだろ!?だろ!!?
だが気になるのはやはりこの声だ。真っ暗だから無意識に何も無いと思い込んでいたな。何かがこの暗闇に紛れていてもおかしくはないのだ。警戒はしておいて損は無い。
改めてこの声だが、何処となく俺の声に似ている気がするんだよなぁ…。自分が撮られた動画を見た時とか自分の音声を録音したのを聞いた時の声に近い気がする。
まぁ、だからと言って振り返って確認をしない限り声の正体が分からない訳で。因みに俺は今現在も後を見ていない。
べ、別に怖いとかじゃねぇんだよ、怖くて見えないという訳じゃねぇ。ただ、俺にも後を振り返るタイミングというものがあるんだ。分かるだろ?な?
…まぁ、うだうだしてても始まらねぇ。ここは腹を括るしかないか。
そう意を決した俺はゆっくりと後を振り返る。腹を括ったものの、未知を知ることは恐怖を伴う行動だ。それ故多少の緊張感は拭えない。自然と口の中に溜まった唾を一度飲み込みつつも、後をしっかりと見た。
ゆっくりと後を振り返って真っ先に見えたのは、暗い中ぼやっと光る四角い画面だった。
その四角い画面は俺から少し離れた所にあり何が映し出されているのか現時点では確認できない。もう少し近づいてみる必要がある。
お化けのような類ではないということに少し安堵しつつ、俺はその画面にゆっくりと近づいた。
近づいてみて分かったことだが、テレビとかモニターとかそういった映像機器が一切見当たらない。どうやら本当にこの四角い画像だけがぽつんとここにあるようだ。どういった構造なんだ…?下に機材が埋め込まれてる訳ではなさそうだな…。魔法だったらいけるか…?
『兄さーん…どこに行っちゃったんだよ…ぐすん…』
おっと、機械いじりが得意な分、この画面がどうやってできているのか考えてしまっていた。今気にしなければいけないのはこの画面の内容だった。
先程から俺に似た情けない声(似てる故に若干ムカつく)が聞こえてくるものの、画面からの映像はどっかの景色しか見えない。ていうか薄暗いしおどろおどろしいな。何だここ?…べ、別に怖くなんかねぇし!あー…、面白いわけじゃないし早く場面切り替わってくんねぇかな。
だがよくよく見ると、この画面の映像はどうやらこの情けない声の奴の視点からのもの…の様だ。
コイツが挙動不審ですぐキョロキョロするから映像が凄い速さであちこちに飛ぶ。正直映像酔いしそうだ。酔い防止用の点を画面のどっかに点けといてやりたい位だ。
『どうして僕がこんな薄暗い所に…たしかノワール伯爵の手下につかまって…それで…それから…
うわ~ん…そんなことより早くだれか助けに来てくれないかなぁ~~~…』
コイツ伯爵様の所で捕まっていたのか…。初めて入った時に一通り城の中をうろうろしたが、こんな情けない声の奴見なかったがなぁ…。
ていうか、グズグズメソメソ…。なんかすげぇ腹が立ってきた。こんな岩の影になんかいないでさっさとどっか移動でもしやがれってんだ!そしてこんな映像を見せられてる俺の気持ちも考えろ!ホームビデオにだってこんな映像残さんわ!
そう俺が怒っていた時である。
『あれ…?ルイージ…?』
自分でも何を言ってるのかよく分からないが、兎に角俺は何も無い真っ暗闇の中を漂っているのだ。
目を開けた筈なのに真っ暗。暫くしても目が暗闇に慣れるということもなく、ずっと暗闇が広がっているようだった。
そして身体は…あの爆発が本当にあったのか疑問に思える程、痛みが無い。全く無い。それとも全神経が逝ったか?
だが身体を動かすことは…どうやらできるようだ。でもこのふよふよ漂ってる感じはなんともできない。ただじたばたしながら漂ってるだけだ。
しかも今気付いたが、普通暗闇なら俺自身も見えなくなる筈なのに、こんな光源なんて皆無の中俺自身を見ることができてるのだ。…え、俺発光してんの⁉︎何だこれ?え?ほんと何だこれ?
「んもーー!!何だこれーー!!訳分からんーー!!!」
俺は怒り半分やけくそ半分でジタバタと全身を動かしまくった。
だがその時、ガクン!と身体に重力が働いたのだ。そしてその事に気付いた時にはもう遅く、俺は床(相変わらず全面真っ暗だがそこの部分だけ固くなっている所)へ頭から落ちた。幸いその床から浮いてたのは十センチ程の低い位置だったのもあり、落ちた時に「アバッ!?」と変な声が出ただけで済んだ。
だが、痛いものは痛い。後心もちょっと痛い。何でって?変な落ち方して恥ずかしいからだよ!言わせんな!
「くっそー…、ほんと何処だここ…」
痛かった頭や首辺りを摩りながら俺は周りを見渡す。先程同様、変わらずの真っ暗闇だ。そして自分だけの謎な発光。うわー、服のシワまで綺麗に見えるぜ。黒なのに。全然ありがたくねぇけどな!
に…さん…ど…?…
「ひ!?」
急に後の方からテレビの砂嵐のようなノイズに混じり誰かの声が聞こえたのだ。思わずビクッてなった。
こ、こここれは不可抗力だぞ!360度ぐるりと真っ暗闇なのに誰かの声が聞こえてくるなんて普通思わないだろ!?ただ単にビックリしただけだ!俺が怖がりだからじゃないんだからな!!
『うわあああ!!何処ここ!!に、兄さあああん!!』
「ひぎゃああああ!!?」
先程とは違いここら一帯に響き渡る程の大絶叫が俺の後から聞こえたのだ。び、びびビビってねぇしっ!不可抗力だしっ!いきなり大声出されたら普通誰でも驚くもんだろ!?だろ!!?
だが気になるのはやはりこの声だ。真っ暗だから無意識に何も無いと思い込んでいたな。何かがこの暗闇に紛れていてもおかしくはないのだ。警戒はしておいて損は無い。
改めてこの声だが、何処となく俺の声に似ている気がするんだよなぁ…。自分が撮られた動画を見た時とか自分の音声を録音したのを聞いた時の声に近い気がする。
まぁ、だからと言って振り返って確認をしない限り声の正体が分からない訳で。因みに俺は今現在も後を見ていない。
べ、別に怖いとかじゃねぇんだよ、怖くて見えないという訳じゃねぇ。ただ、俺にも後を振り返るタイミングというものがあるんだ。分かるだろ?な?
…まぁ、うだうだしてても始まらねぇ。ここは腹を括るしかないか。
そう意を決した俺はゆっくりと後を振り返る。腹を括ったものの、未知を知ることは恐怖を伴う行動だ。それ故多少の緊張感は拭えない。自然と口の中に溜まった唾を一度飲み込みつつも、後をしっかりと見た。
ゆっくりと後を振り返って真っ先に見えたのは、暗い中ぼやっと光る四角い画面だった。
その四角い画面は俺から少し離れた所にあり何が映し出されているのか現時点では確認できない。もう少し近づいてみる必要がある。
お化けのような類ではないということに少し安堵しつつ、俺はその画面にゆっくりと近づいた。
近づいてみて分かったことだが、テレビとかモニターとかそういった映像機器が一切見当たらない。どうやら本当にこの四角い画像だけがぽつんとここにあるようだ。どういった構造なんだ…?下に機材が埋め込まれてる訳ではなさそうだな…。魔法だったらいけるか…?
『兄さーん…どこに行っちゃったんだよ…ぐすん…』
おっと、機械いじりが得意な分、この画面がどうやってできているのか考えてしまっていた。今気にしなければいけないのはこの画面の内容だった。
先程から俺に似た情けない声(似てる故に若干ムカつく)が聞こえてくるものの、画面からの映像はどっかの景色しか見えない。ていうか薄暗いしおどろおどろしいな。何だここ?…べ、別に怖くなんかねぇし!あー…、面白いわけじゃないし早く場面切り替わってくんねぇかな。
だがよくよく見ると、この画面の映像はどうやらこの情けない声の奴の視点からのもの…の様だ。
コイツが挙動不審ですぐキョロキョロするから映像が凄い速さであちこちに飛ぶ。正直映像酔いしそうだ。酔い防止用の点を画面のどっかに点けといてやりたい位だ。
『どうして僕がこんな薄暗い所に…たしかノワール伯爵の手下につかまって…それで…それから…
うわ~ん…そんなことより早くだれか助けに来てくれないかなぁ~~~…』
コイツ伯爵様の所で捕まっていたのか…。初めて入った時に一通り城の中をうろうろしたが、こんな情けない声の奴見なかったがなぁ…。
ていうか、グズグズメソメソ…。なんかすげぇ腹が立ってきた。こんな岩の影になんかいないでさっさとどっか移動でもしやがれってんだ!そしてこんな映像を見せられてる俺の気持ちも考えろ!ホームビデオにだってこんな映像残さんわ!
そう俺が怒っていた時である。
『あれ…?ルイージ…?』