Lという名の男の話《前編》
俺ことミスターLが最期に覚えているのは、モノノフ王国での出来事だった。
「ううう…どぼぢで…どぼぢで…ヤツらに勝てないんだよ…」
もはや空虚と化したかつてのモノノフ王国の片隅で、俺は悲観に暮れていた。
憎き赤い男ことマリオ率いる勇者一行に我が愛機エルガンダーZをめっためたに粉砕され、挙句の果てになぜ勝てないんだとぼやいた俺にこともあろうか1匹のフェアリンから「弱いからじゃない?」という屈辱的な一言を言われ…俺の自尊心は地の底に叩き落された。もうオーバーキルなんてもんじゃない。あの出来事は俺の繊細なガラスのハートをボッロボロのバッキバキに砕いていったのだ。そりゃ泣き言だって出てくるさ。
そしてそんな最中、奴が現れたのだ。
「やあエリリン。またまた負けちゃったのか~い?」
「ディメーンか…」
奴は道化師ディメーン。黄色と紫のコントラストが際立つ道化師の服を纏い、黒と白の2色に分かれている笑顔の仮面を着けたふざけた奴だ。仮面を着けているため素顔は一度も見たことはない。「んっふっふ」と気味悪く笑いながら何かにつけて俺をおちょくりやがる。
こいつもジャンプマニアである赤い男とは別の意味で俺を苛つかせる為、基本追っ払ったり無視を決め込んでいたが、今の俺のずたぼろな心境では奴を無視できる程気丈には振舞えなかった。
「い、いったい奴らに勝つにはどうしたらいいんだろう…このままじゃ僕…
い、いや、俺は伯爵に合わせる顔がないぜ…」
どうやら俺は相当弱っているようだ。こいつに弱音を吐いている上に僕だなんて言い方をしてしまうとは…。だがもう、奴にでも吐き出さなければならない程俺の心はぼろっぼろなのだ。
こんな自分の現状を見て更に落ち込む中、奴はいつもの気味の悪い笑顔を浮かべたのだ。
「んっふっふ、そうなんだ?ちょうどよかった~♪」
奴はそう言うや否や、俺に向かって魔法を撃ってきやがった。俺がギリギリ飛びのいた後、俺がいた場所にボン!と爆発が起きる。あ、焦ったー…。
ていうかこいつ…!俺を攻撃しやがった…!
「な…!?何をするっ!?あぶねえだろっ!!!」
俺は慌てつつも奴をキッと睨みつけた。だが奴は悪びれることもなく飄々としていた。
「合わせる顔がないんだろ?ならあの世へ行っちゃいなよ~♪」
なんだそれ…。ふざけてるとしか思えない言動に俺の腸が煮えくり返りそうだ。
「ふざけるな…。ジョーダンは顔だけにしておけ!」
「ヒドイな、ふざけてるだなんて…。僕は大まじめだよ『ミスターL』」
いつもとは違う口調に思わず奴を見る。仮面のせいで全くもって表情は分からないが、いつものへらへらした感じは一切無く、少々真面目そうな雰囲気を醸し出している。
…はっ、そんな感じも出せるのかよ、出せるなら先に出しとけってんだ。
そしてそんな奴は口を開く。
「いいかい?キミが伯爵さまのそばにいるとボクには何かと都合が悪いんだ」
真面目そうな雰囲気の割には言ってることは相変わらず自分本位なのが腹立つ。
だが、奴の魔力は本物だ。最初に顔を合わせた時、一目見ただけで分かった。並大抵、いや俺でさえも太刀打ちできない程の魔力をコイツは秘めているのが分かる。
だからこそこの状況は良くない。非常に超絶に良くない。愛機も自身もボロボロ、というか木っ端微塵(主に心が)。最早無と帰した、逃げ場の無い空白の世界でコイツとタイマンを張るなんてことは無理だと本能が訴えている。正直逃げられるならとっくの昔に逃げている。
「ここなら伯爵さまや他の奴らに見つかる心配もない。今がチャンスなんだよ」
なんだよ。俺にちょくちょくちょっかいをかけていたのはこの為か、俺を殺す機会を窺ってたってことかよ。すげぇ腹立つわ。本当にコイツは俺の事を馬鹿にし過ぎている。
ていうかさっきから腹立ってばっかだな。この怒りのパワーで茶でも沸かせるんじゃないか?とも思える。いや、冗談だが。
「分かるだろう『ミスターL』」
だがそう思ったのも束の間、奴が先程の台詞を言うや否や俺の視界が黄色く染まる。奴は魔法で俺を四角い空間に閉じ込めたのだ。これは奴の空間魔法だ、見たことがある。マーキングした空間を爆発させるのが奴の得意としている戦法の一つだ。高威力の爆発によって木っ端微塵にされ塵一つ残らない。そしてその事を認識したと共にとてつもない恐怖が俺を襲う。
その空間魔法が俺を丸々覆ったのだ。それは俺の動きを封じたと共に奴の爆発範囲内に入ったということになる。
逃げられない。
俺では壊せない強固なバリアがこの事実を俺に突きつける。こんなボロボロな状態であんな強力な爆発に巻き込まれたらお陀仏確定だ。
急速に近づいてくる死の気配にガクガクと足が、身体中が打ち震える。
「う、うわ~~~~!!よ…よせ~~!!」
「んっふっふっふっふ~~」
恐怖からか、奴への静止の叫びも震えちまう。情けないが仕方ない、震えは本能!そして今は緊急事態なんだから!だが張られたバリアの向こうにいる奴は笑っているくせにかなりマジな目をしてるのが分かる。殺ル気満々ってかこの野郎。
「心配しなくてだぁいじょうぶだよ?寂しくないように他の奴らもす~ぐに後を追わせてあげるからね~♡」
パチン!と奴の指パッチンの音が聞こえた直後、ドンドン!!と耳をつんざくような爆発音、そして共にくる衝撃波と超高熱が何処にも逃げる事なく指定された空間の中で激しく暴れ回る。それが相乗効果となり物凄い威力の火力を引き起こす。
そんなものに俺が耐えられることもなく。叫び声と共に俺の意識は遠のいていった。きっとこれ塵一つ落ちていないんじゃねぇか?とも思いながら。
「ううう…どぼぢで…どぼぢで…ヤツらに勝てないんだよ…」
もはや空虚と化したかつてのモノノフ王国の片隅で、俺は悲観に暮れていた。
憎き赤い男ことマリオ率いる勇者一行に我が愛機エルガンダーZをめっためたに粉砕され、挙句の果てになぜ勝てないんだとぼやいた俺にこともあろうか1匹のフェアリンから「弱いからじゃない?」という屈辱的な一言を言われ…俺の自尊心は地の底に叩き落された。もうオーバーキルなんてもんじゃない。あの出来事は俺の繊細なガラスのハートをボッロボロのバッキバキに砕いていったのだ。そりゃ泣き言だって出てくるさ。
そしてそんな最中、奴が現れたのだ。
「やあエリリン。またまた負けちゃったのか~い?」
「ディメーンか…」
奴は道化師ディメーン。黄色と紫のコントラストが際立つ道化師の服を纏い、黒と白の2色に分かれている笑顔の仮面を着けたふざけた奴だ。仮面を着けているため素顔は一度も見たことはない。「んっふっふ」と気味悪く笑いながら何かにつけて俺をおちょくりやがる。
こいつもジャンプマニアである赤い男とは別の意味で俺を苛つかせる為、基本追っ払ったり無視を決め込んでいたが、今の俺のずたぼろな心境では奴を無視できる程気丈には振舞えなかった。
「い、いったい奴らに勝つにはどうしたらいいんだろう…このままじゃ僕…
い、いや、俺は伯爵に合わせる顔がないぜ…」
どうやら俺は相当弱っているようだ。こいつに弱音を吐いている上に僕だなんて言い方をしてしまうとは…。だがもう、奴にでも吐き出さなければならない程俺の心はぼろっぼろなのだ。
こんな自分の現状を見て更に落ち込む中、奴はいつもの気味の悪い笑顔を浮かべたのだ。
「んっふっふ、そうなんだ?ちょうどよかった~♪」
奴はそう言うや否や、俺に向かって魔法を撃ってきやがった。俺がギリギリ飛びのいた後、俺がいた場所にボン!と爆発が起きる。あ、焦ったー…。
ていうかこいつ…!俺を攻撃しやがった…!
「な…!?何をするっ!?あぶねえだろっ!!!」
俺は慌てつつも奴をキッと睨みつけた。だが奴は悪びれることもなく飄々としていた。
「合わせる顔がないんだろ?ならあの世へ行っちゃいなよ~♪」
なんだそれ…。ふざけてるとしか思えない言動に俺の腸が煮えくり返りそうだ。
「ふざけるな…。ジョーダンは顔だけにしておけ!」
「ヒドイな、ふざけてるだなんて…。僕は大まじめだよ『ミスターL』」
いつもとは違う口調に思わず奴を見る。仮面のせいで全くもって表情は分からないが、いつものへらへらした感じは一切無く、少々真面目そうな雰囲気を醸し出している。
…はっ、そんな感じも出せるのかよ、出せるなら先に出しとけってんだ。
そしてそんな奴は口を開く。
「いいかい?キミが伯爵さまのそばにいるとボクには何かと都合が悪いんだ」
真面目そうな雰囲気の割には言ってることは相変わらず自分本位なのが腹立つ。
だが、奴の魔力は本物だ。最初に顔を合わせた時、一目見ただけで分かった。並大抵、いや俺でさえも太刀打ちできない程の魔力をコイツは秘めているのが分かる。
だからこそこの状況は良くない。非常に超絶に良くない。愛機も自身もボロボロ、というか木っ端微塵(主に心が)。最早無と帰した、逃げ場の無い空白の世界でコイツとタイマンを張るなんてことは無理だと本能が訴えている。正直逃げられるならとっくの昔に逃げている。
「ここなら伯爵さまや他の奴らに見つかる心配もない。今がチャンスなんだよ」
なんだよ。俺にちょくちょくちょっかいをかけていたのはこの為か、俺を殺す機会を窺ってたってことかよ。すげぇ腹立つわ。本当にコイツは俺の事を馬鹿にし過ぎている。
ていうかさっきから腹立ってばっかだな。この怒りのパワーで茶でも沸かせるんじゃないか?とも思える。いや、冗談だが。
「分かるだろう『ミスターL』」
だがそう思ったのも束の間、奴が先程の台詞を言うや否や俺の視界が黄色く染まる。奴は魔法で俺を四角い空間に閉じ込めたのだ。これは奴の空間魔法だ、見たことがある。マーキングした空間を爆発させるのが奴の得意としている戦法の一つだ。高威力の爆発によって木っ端微塵にされ塵一つ残らない。そしてその事を認識したと共にとてつもない恐怖が俺を襲う。
その空間魔法が俺を丸々覆ったのだ。それは俺の動きを封じたと共に奴の爆発範囲内に入ったということになる。
逃げられない。
俺では壊せない強固なバリアがこの事実を俺に突きつける。こんなボロボロな状態であんな強力な爆発に巻き込まれたらお陀仏確定だ。
急速に近づいてくる死の気配にガクガクと足が、身体中が打ち震える。
「う、うわ~~~~!!よ…よせ~~!!」
「んっふっふっふっふ~~」
恐怖からか、奴への静止の叫びも震えちまう。情けないが仕方ない、震えは本能!そして今は緊急事態なんだから!だが張られたバリアの向こうにいる奴は笑っているくせにかなりマジな目をしてるのが分かる。殺ル気満々ってかこの野郎。
「心配しなくてだぁいじょうぶだよ?寂しくないように他の奴らもす~ぐに後を追わせてあげるからね~♡」
パチン!と奴の指パッチンの音が聞こえた直後、ドンドン!!と耳をつんざくような爆発音、そして共にくる衝撃波と超高熱が何処にも逃げる事なく指定された空間の中で激しく暴れ回る。それが相乗効果となり物凄い威力の火力を引き起こす。
そんなものに俺が耐えられることもなく。叫び声と共に俺の意識は遠のいていった。きっとこれ塵一つ落ちていないんじゃねぇか?とも思いながら。