スキ集
《なりきる》
「マリオー!ジャーン!見てー!」
そう言いながらマリオの家のドアを盛大に開け放ち入ってきたピーチ姫に、マリオは「わぁ!」と驚きつつも感嘆な声をあげた。
「姫もしっかり仮装しているのですね」
マリオの言う通り、今宵はハロウィン。その仮装をピーチはしていたのだ。肌は青黒く塗られ傷だらけ、そしてこれもボロボロのナース服を着ている。
そんなマリオの反応にピーチは満足気だ。
「えぇそうよ!今年はナースゾンビなの♡という事でマリオ!トリックオアトリート!」
そう嬉しそうに言うピーチを見てマリオもニコニコしながら「はい、どうぞ」と大きめのカゴを出してきた。そのカゴの中にはお菓子の入った小袋が沢山入っていたのだった。
「この袋がクッキーで、こっちがチョコ、こっちがキャンディで…」
そう説明していると、途端にピーチはムスッとしだしたのだ。
「う〜…もう!イタズラさせてよぉ!」
そい言いプンスコ怒る姫君にマリオは「ぇ?」と困惑気味だ。
「手紙で仮装していくって書いてあったから、てっきりお菓子が欲しいのかと思って…」
「そ、それもそうだけど…!その…」
そう言い淀んでモジモジしているピーチに益々何なのか分からなくなっているマリオである。
「その…?」
「ぃ…イタズラもしたかったの…!」
「え…もうそれじゃあ"オア"じゃなくて"アンド"じゃ…」
「もう!イジワルね」
「いや意地悪で言ったつもりじゃ…」
「もう…じゃあいいわ…今宵はハロウィン…仮装したからにはなりきらなきゃいけないわね」
そう言い切り替えることにしたピーチはゆっくりとマリオに歩み寄る。先程までの雰囲気が嘘かのように変わり、ジトリとした目でマリオを見つめる。現在のピーチの姿と相まって本当にゾンビになってしまったかのような迫力であった。
そんな彼女に気押されたマリオの足は自然と後へと後退っていたのだった。
「ねぇ、マリオ。ゾンビってね、何でも食べちゃうのよ…?お菓子も…貴方もね…」
「ひ、姫…?」
そして、後退りをしていたマリオの背中に軽い衝撃が走る。その衝撃と冷たい感触が、とうとう壁に追い詰められたことを示唆していた。
(ぁ、逃げられない…)
マリオがそう思った瞬間、ピーチが両手を此方に向けゆっくりと突き出してきたのだ。マリオが驚いている中、マリオの顔を挟む様に壁へトン、と両手を置いたのだ。所謂壁ドンである。
その為マリオとピーチの顔の距離が必然的に近くなり、二人の目と目がパチリと合った瞬間まるで火を吹くかのようにマリオ自身の顔が赤くなるのが分かったのだった。
「ねぇ、マリオ…」
そんな恥ずかしさと驚きの中にいるマリオに優しくピーチは問いかける。
「トリックアンドトリート?」
「ぅ…は…はい…」
小さく消え入りそうな返事でもピーチは満足したのかニコリと微笑み、カプリとマリオの唇を頂くのだった。
おわり
ピチマリでハロウィンです。因みにルイージはデイジーの所へ行っていて留守です。