目覚めの声
彼らのいた所はスタジアム地下の廊下の突き当り。
このフロアにあるのはスタジアムの管理をする部屋やマスター、クレイジーが観戦の際に滞在する部屋などであり、一般のファイターが何かしらの用事がないと訪れないであろうエリアである。
そんな廊下の突き当りにある、これまた何故かこんな所に設置したのか分からないベンチで、何故か腰かけたまま寝てしまっているマリオの周りに、何故か子どもたちがぐるりと彼を取り囲み大声を出しているという謎な状況であった。
(これは…また面倒な状況だな…)
そう思ったフォックスは片手で顔を覆い溜息をついた。
あの大きな声を聞いた時点で嫌な予感はしていた。やっとマリオを見つけてもそのまま連れて帰ることは出来ないのだろうなという彼の予感はものの見事に当たってしまったのである。
こんなんだったらさっさと諦めてサムス達の3人で乱闘をしていた方が良かったのではないかという考えすら浮かんでくる。
このまま回れ右して戻ってしまおうかと迷っている内に、先程の溜息に気付いた子ども達がフォックスの元へ駆け寄ってきた。
「あ!フォックスー!」
(げっ!気付かれたっ!)
内心げげっ!と思っていたフォックスに、駆け寄ってきた子ども達の内の一人であるネスは訝し気にその表情を見た。
「…何でそんなに嫌そうにしてるの?」
「あ、いやその…俺はマリオを探していたんだが、かなり面倒なことになっているなと思ってな、はは…」
ネスは勘が鋭く、その気になれば超能力で心も読める。相手の感情にも機敏で読心術は大人顔負けだ。
腹の探り合いでネスには勝てないと思っているフォックスは、そんなに表情が出ていたのかと驚きつつも隠し通すのを諦め思っていたことの一部を子供達に伝えたのだ。
「そうなんだよ!聞いて!マリオったら全然起きてくれないんだよ!」
「そうなの!ほっぺを叩いても抓っても駄目だった!」
「くすぐっても駄目だったしねー」
「ねー」
フォックスの話を聞き、少々興奮気味で話すネスを皮切りに、リュカ、アイスクライマーのポポ、ナナの順で矢継ぎ早に話し出す。
「ぽよよー!」
「うん、分かってるよカービィ。あのマイク攻撃は本当に凄かったからね」
「そうそう!耳がキーンとして壊れるかと思った」
「あれで起きないマリオさんがどうかしてるのよ」
「確かに」
ぷんぷんと怒っているカービィを子ども達4人が慰めてはいるがマリオへの非難の声が止まることはない。その圧にフォックスは思わず引き気味になりながらも返事をする。
「そ、そうか…。だが何故お前達はマリオを起こそうとしているんだ?何かマリオに用か?」
「うん!小腹がすいちゃったから皆でマリオと一緒にお菓子を作ろって話になって…」
ネスがそう説明しだす。マリオは以前パティシエの仕事もしていたようでお菓子を作るのが得意だ。子ども達にもお菓子を作ってあげていたのをフォックスは何度か見ていた。
「そうそう!」とポポが横からネスの説明を割り込む形で話し出した。
「マリオさんを探したんだけど全然見つからなかったから、こっちも意地になっちゃってね…、ね?ナナ」
「ね!逆にどこにいるのか気になっちゃってお菓子そっちのけで探し回っちゃった!」
ポポから話を引き継いだナナが「大変だったよねー」「ねー」と二人仲良く感想を述べた。その二人の話を今度はリュカが引き継ぐ。
「何とかここまで来てやっと見つけたんですけど、何故か眠りっぱなしで…起こそうと思っても起きなくて…」
「そうなんだよ!声をかけても揺すっても起きないからさ、もうここまで来たら!っと思って一杯試したよね。でもぜんっぜん!起きないからもうなんで!?って感じなんだよ!」
「ぽよ!」
リュカの話を被せるようにネスが勢いよく話し出した。お腹がすいている中探し回った末に見つけた奴は眠りこけてて、しかも起こそうとしても起きないのだから相当腹を立てているのだろう。カービィもネスの話に同意しているようだ。
子どもたちの話を聞き、フォックスは「ふむ…」と手を口元に置き考える。
ネスを始め、スマメンの子どもたちはスマブラに参戦しているだけありアクティブな子が多く、少々、いやかなり過激な部類に入ることを仕出かす。現につねられ叩かれたと見られるマリオの頬は赤く痕が残っている。結構痛かった筈だ。
そんな、頭の辞書に”手加減”という言葉が載っているのかどうか疑問に思えてしまう彼らの、それはもう熱烈なモーニングコールを受けて尚こうして眠っているのだ。相当深い眠りについていると言えよう。
「おい、マリオ起きろ。試合の時間だぞ」
フォックスが試しに手をマリオの左肩に置き、前後に揺すりながら声を掛けてみるものの全くもって彼からの反応はない。聞こえてくるのは彼の規則正しい呼吸の音だけだ。
「…マジか、本当に起きねぇ」
普通のうたた寝位なら何度か揺すれば起きるもんなんだがな…とフォックスは今までの事を思いながら頭をかいた。
フォックスもこれまで何度か事務作業中居眠りをしているマリオを起こした経験はある。大体は先程のように少し揺すりながら声をかければ起きてくれたのだ。
だが、今回は今までの経験にないケースであった。子どもたちの話は本当であると納得したフォックスである。だがそれと同時に何故ここまでしても起きないのか?という疑問も当然ながら湧き出てくる。子ども達も同じような事を思ったのか、お手上げ状態のフォックスの側で色々話し始めた。
「やっぱり起きないねぇ」
「うん、何でだろうねぇ?いつもならこれっ位したらすぐに起きるのに」
「うん、確かに!」
「なんか変なキノコでもたべちゃったんじゃない?」
「あはは!あるかも!」
「ありえる!」
「ぽよ!ぽよよ!」
「え?僕ならマキシムトマトが良いって?」
「ぽよ!」
「カービィらしいね」
そうして笑い合う子ども達の声も大きい筈なのに、マリオはピクリともしない。
このフロアにあるのはスタジアムの管理をする部屋やマスター、クレイジーが観戦の際に滞在する部屋などであり、一般のファイターが何かしらの用事がないと訪れないであろうエリアである。
そんな廊下の突き当りにある、これまた何故かこんな所に設置したのか分からないベンチで、何故か腰かけたまま寝てしまっているマリオの周りに、何故か子どもたちがぐるりと彼を取り囲み大声を出しているという謎な状況であった。
(これは…また面倒な状況だな…)
そう思ったフォックスは片手で顔を覆い溜息をついた。
あの大きな声を聞いた時点で嫌な予感はしていた。やっとマリオを見つけてもそのまま連れて帰ることは出来ないのだろうなという彼の予感はものの見事に当たってしまったのである。
こんなんだったらさっさと諦めてサムス達の3人で乱闘をしていた方が良かったのではないかという考えすら浮かんでくる。
このまま回れ右して戻ってしまおうかと迷っている内に、先程の溜息に気付いた子ども達がフォックスの元へ駆け寄ってきた。
「あ!フォックスー!」
(げっ!気付かれたっ!)
内心げげっ!と思っていたフォックスに、駆け寄ってきた子ども達の内の一人であるネスは訝し気にその表情を見た。
「…何でそんなに嫌そうにしてるの?」
「あ、いやその…俺はマリオを探していたんだが、かなり面倒なことになっているなと思ってな、はは…」
ネスは勘が鋭く、その気になれば超能力で心も読める。相手の感情にも機敏で読心術は大人顔負けだ。
腹の探り合いでネスには勝てないと思っているフォックスは、そんなに表情が出ていたのかと驚きつつも隠し通すのを諦め思っていたことの一部を子供達に伝えたのだ。
「そうなんだよ!聞いて!マリオったら全然起きてくれないんだよ!」
「そうなの!ほっぺを叩いても抓っても駄目だった!」
「くすぐっても駄目だったしねー」
「ねー」
フォックスの話を聞き、少々興奮気味で話すネスを皮切りに、リュカ、アイスクライマーのポポ、ナナの順で矢継ぎ早に話し出す。
「ぽよよー!」
「うん、分かってるよカービィ。あのマイク攻撃は本当に凄かったからね」
「そうそう!耳がキーンとして壊れるかと思った」
「あれで起きないマリオさんがどうかしてるのよ」
「確かに」
ぷんぷんと怒っているカービィを子ども達4人が慰めてはいるがマリオへの非難の声が止まることはない。その圧にフォックスは思わず引き気味になりながらも返事をする。
「そ、そうか…。だが何故お前達はマリオを起こそうとしているんだ?何かマリオに用か?」
「うん!小腹がすいちゃったから皆でマリオと一緒にお菓子を作ろって話になって…」
ネスがそう説明しだす。マリオは以前パティシエの仕事もしていたようでお菓子を作るのが得意だ。子ども達にもお菓子を作ってあげていたのをフォックスは何度か見ていた。
「そうそう!」とポポが横からネスの説明を割り込む形で話し出した。
「マリオさんを探したんだけど全然見つからなかったから、こっちも意地になっちゃってね…、ね?ナナ」
「ね!逆にどこにいるのか気になっちゃってお菓子そっちのけで探し回っちゃった!」
ポポから話を引き継いだナナが「大変だったよねー」「ねー」と二人仲良く感想を述べた。その二人の話を今度はリュカが引き継ぐ。
「何とかここまで来てやっと見つけたんですけど、何故か眠りっぱなしで…起こそうと思っても起きなくて…」
「そうなんだよ!声をかけても揺すっても起きないからさ、もうここまで来たら!っと思って一杯試したよね。でもぜんっぜん!起きないからもうなんで!?って感じなんだよ!」
「ぽよ!」
リュカの話を被せるようにネスが勢いよく話し出した。お腹がすいている中探し回った末に見つけた奴は眠りこけてて、しかも起こそうとしても起きないのだから相当腹を立てているのだろう。カービィもネスの話に同意しているようだ。
子どもたちの話を聞き、フォックスは「ふむ…」と手を口元に置き考える。
ネスを始め、スマメンの子どもたちはスマブラに参戦しているだけありアクティブな子が多く、少々、いやかなり過激な部類に入ることを仕出かす。現につねられ叩かれたと見られるマリオの頬は赤く痕が残っている。結構痛かった筈だ。
そんな、頭の辞書に”手加減”という言葉が載っているのかどうか疑問に思えてしまう彼らの、それはもう熱烈なモーニングコールを受けて尚こうして眠っているのだ。相当深い眠りについていると言えよう。
「おい、マリオ起きろ。試合の時間だぞ」
フォックスが試しに手をマリオの左肩に置き、前後に揺すりながら声を掛けてみるものの全くもって彼からの反応はない。聞こえてくるのは彼の規則正しい呼吸の音だけだ。
「…マジか、本当に起きねぇ」
普通のうたた寝位なら何度か揺すれば起きるもんなんだがな…とフォックスは今までの事を思いながら頭をかいた。
フォックスもこれまで何度か事務作業中居眠りをしているマリオを起こした経験はある。大体は先程のように少し揺すりながら声をかければ起きてくれたのだ。
だが、今回は今までの経験にないケースであった。子どもたちの話は本当であると納得したフォックスである。だがそれと同時に何故ここまでしても起きないのか?という疑問も当然ながら湧き出てくる。子ども達も同じような事を思ったのか、お手上げ状態のフォックスの側で色々話し始めた。
「やっぱり起きないねぇ」
「うん、何でだろうねぇ?いつもならこれっ位したらすぐに起きるのに」
「うん、確かに!」
「なんか変なキノコでもたべちゃったんじゃない?」
「あはは!あるかも!」
「ありえる!」
「ぽよ!ぽよよ!」
「え?僕ならマキシムトマトが良いって?」
「ぽよ!」
「カービィらしいね」
そうして笑い合う子ども達の声も大きい筈なのに、マリオはピクリともしない。