目覚めの声
「たっく、アイツは一体どこに行ったんだ」
フォックスはそうぶつぶつと愚痴を零しながら1人スタジアム内を歩き回る。
何故彼はキョロキョロと1人で歩き回っているのか。その目的は1つの理由に行き当たる。
彼が思い返すは2時間程前。昼食時のことである。
昼休憩の間やることもなかったフォックスは、隣で食事をしていたマリオ、向かい側正面に座っていたリンク、そしてマリオの向かい側に座っていたサムスに声をかけ、4人で乱闘でもしようかと持ち掛けた。
これに3人共承諾をし、1時間後スタジアムにて待ち合わせると約束をした筈だったのだが、何故かマリオだけが約束の時間になっても現れなかった。暫く待っていても来なかったので、3人はしぶしぶであるが手分けをしてマリオを探すことになったのであった。
「くそ、マリオめ…乱闘になったら真っ先に撃墜してやるからな」
マリオを探し始めてから十数分経つ。身体を動かすなら遅刻者を探すよりも乱闘がしたかった。全員問題なく集まっていたならば今頃乱闘を楽しんでいたに違いないのだ。こう見つからないと愚痴にも棘が出てくるものである。有り得たであろう未来と現実を比べ、苛立ちを覚えるフォックスであった。
苛立ちを募らせつつも、彼はマリオがいそうな所を律儀に探す。そこら辺に彼の気真面目さが出てきている。
ぶつぶつと遅刻者への文句を言いながら探している中、ふとフォックスの足が止まる。どこからか声が聞こえてきたのだ。
なんだ?と思いながらその声に耳を傾けると、数人が話しているのが聞こえてくる。
「マリオー、起きてよー!ねえー!」
「ぽよー!」
「全然起きないねー」
「ねー」
「こ、こんなに揺すったり叩いたりしているのに…」
「もう!なんでー?」
比較的大きなその声たちはこの廊下の先から聞こえてくる。
そしてその声たちのいる所が自分の目的地であることを悟ったフォックスは速足でそこに向かったのだ。