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現在大乱闘の休憩時間。会場の選手控え室にて

「なぁマリオ、ちょっと…」

丁度休憩していたマリオの元にフォックスがやって来た。
そして小さくそう一言断りを入れた後、フォックスはマリオの耳元に顔を近づけ此方からでは聞こえない程の小さい声でマリオに話をしていたのだ。要は内緒話である。


《内緒話》


マリオも彼の一言で察したのか、耳を傾け彼の話に時折相槌を入れながら真剣に話を聞いている様だった。

そんな二人の様子が、そこから少し離れた位置にいたルイージにとって気になって仕方のないことの様である。

「…兄さん達、何話してるんだろ…」

ボソリと呟いたその一言に、隣にいた時オカリンクことこどもリンクとブレワイリンクが反応したのだった。

「あぁ、二人で何か話してるみたいっすね」

「そりゃあ、試合の運営の話かマスターの話じゃねぇの?」

マリオとフォックスはファイター達のリーダーと副リーダー的な存在であり、よくマスターハンドが投げ出した仕事…試合や会場の運営などを手伝っていたりする。それ故によく二人はその事で話をしている場合がある。
こどもリンクの言葉に「まぁ、そうなんだろうけどさぁ…」と、何処か不満げな様子のルイージである。そんな様子のルイージに、こどもリンクは訝しげな表情でルイージを見た。

「え、どうしたお前。まさかあの二人に混ざって運営の話したいのか?」

「い、いや、そういう訳じゃないんだけどさ…」

(ぁ、そういう訳じゃないんだ…)

兄の仕事手伝いたい訳じゃないんだ…と、ブレワイリンクがそう思う中、こどもリンクがジトリとした目でルイージを見ていた。

「じゃ、なんだよ」

その言葉にルイージはうーん、と悩みながらも話し出す。

「なんて言うか、その…

…内緒話してて、良いなぁ…って…」

・・・。

彼のその言葉に二人は固まる。彼の言葉の真意が図れなかったからだ。

「内緒話ぃ?」

「うん」

「それって、ルイージさんが今のマリオさんの立場になって内緒話したいってことっすか…?」

「い、いや…違くて…」

「じゃあ、あぁいうシチュエーションが良いってことか?他の誰かに聞かれないように小さく話をするって言う…」

「あー、秘密の共有って感じが良いかもしれないっすね」

こどもリンクの話にブレワイリンクが同意するも、ルイージは「ぅ、うーん…」と微妙な反応だ。そんな調子のルイージにとうとうこどもリンクがイライラしだした。

「あーもう、何だよ。お前がちゃんと言えよ」

その言葉にルイージはうーん…とまた思案しながら答えたのだった。

「何というか…兄さんと内緒話してて良いなぁ…って…」

「「…えぇ…」」

彼の言葉に二人の勇者はもう戸惑うしかなかった。

「したら良いじゃないっすか。やりたい理由はあんま分からないっすけど」

「い、いやそう簡単に言わないでくれよっ、なんかこう…自然な感じでしたいじゃんっ」

「自然な…?…どういう自然な流れで内緒話になるかなんて皆目検討もつかないっすね」

ブレワイリンクの返答に「そうバッサリ言わなくたって…」と項垂れているルイージへ、今度はこどもリンクが呆れた様に話したのだ。

「…ていうかお前、よくマリオとチーム組む時二人でしてるじゃねえか」

・・・。

「…ええ!?嘘っ!?」

この一言にルイージは驚きの声をあげる。ブレワイリンクも知らなかったようで、「自覚してなかったのかよ…」と、呆れたように呟いているこどもリンクに「え?そうなんすか?」と問い掛けた。

「コイツ、チーム戦でマリオが味方にいる時は大体マリオと作戦会議してるんだよ。今のアイツらみたいにな」

そう言いながらこどもリンクはマリオとフォックスを仰ぎ見る。その話を聞いて「あぁ…そういえば」と、ブレワイリンクが手を口元にあてながら話し出した。

「この間の時のチーム戦も、マリオさん、ルイージさんに何か耳打ちしてなかったっすか?」

「そ、そうだったっけ?」

「そうそう!そうやって話した後二人でフォーメーション組んで戦ってきやがるんだ」

「あぁ!そうだった!いや息の合ったコンビネーションでしたよもう、俺驚いて思わずやられちゃったっすから」

「耳打ちした後のコイツ等の顔見たか?悪戯するガキの様な顔してるんだぜ?」

「あー!確かに!ちょっとニヤってしてるんすよね」

そんな二人の勇者の会話で流石に思い出したのか、「あー…あれか…」と呟いたルイージである。

「い、いやあれはただ、兄さんに『あれやってみよ』って小さな声で言われてるだけで、それが内緒話になるか分からないし…」
「いやそれが内緒話なんじゃねぇのか?」

「"あれ"だけで伝わるのは流石っすね」

「それに僕から兄さんにしてる事ってあんまり無いっていうか…」

そういじける様に喋るルイージに、子どもリンクはまーた始まったとばかりに「はぁ?」と、ジトリとした目で一言吐き捨てた。

「めんどくさっ」
「いやそれは自分でも思ってるからっ、そんな目で言わないで傷付くからっ!」

そんなルイージにブレワイリンクがうーん…と考えながらも「でもルイージさん…」と口を開く。

「話を聞けば聞く程にルイージさんから仕掛けなきゃ希望の内緒話なんて夢のまた夢じゃないっすか」

「そ、そうなんだけど…、な、何を話せば良いのか分からなくて…」

「それはまぁ、内緒話なんですから。俺等じゃなくマリオさんに話したい事じゃないと…」

「た、確かに…」

そんな二人のやり取りを見ていたこどもリンクはやれやれとばかりに「はぁ…」と溜息をついた。

「じゃあさ、お前がマリオに対して思ってることを伝えれば良いんじゃねぇの?」

「思ってること…?」

「ほら無いか?普段は言えないこととかさ。何でも良いんだよ。感謝の言葉でも良いんだしさ」

そんなこどもリンクの提案にポカンとしていたルイージであったが、納得したのか腕を組み考え始めたのだった。

「思ってることか…。それなら、話せるかも…」

「おぅ、じゃあ頑張れ」

そんなこどもリンクの言葉に兄への言葉をあれこれ考えながら「うん」と返すルイージを、二人の勇者は生暖かい目で見るのだった。

そして数日後の昼休み。

食堂にてマリオとフォックスが遅めの昼食をとりながら雑談をしている中、「兄さーん!」と大きな声で兄を呼びながらルイージが走って来たのだった。

「どうしたんだい?」

駆け寄ってきたルイージへマリオがそう問い掛けると、ルイージは息を軽く整えた後「あ、あのね兄さん…」と兄の耳元に顔を近づけた。

「「?」」

なんだ?とフォックスが不思議に思う中、マリオもルイージの方へ耳を傾ける。

「あのね…」

そう言いながらルイージは小さな声でマリオに一言二言話をした。残念ながらフォックスからでは何を喋っているのかは分からなかった。
だが話を終え「それじゃ!」と走り去っていくルイージの背中を、マリオはにこやかに見送っていたのを見るに、きっと悪い話ではないのだろうと悟る。

「何だったんだ?」

それでもやはり内緒話が気になるフォックスだが、そんな彼の質問に対しマリオは「ふふ」と笑うだけだ。

「おいおい、人前であからさまに内緒話をしといて秘密かよ。気になるじゃないか」

「まぁ、内緒話だからね」

そう言って再び微笑むマリオなのだった。

『あのね…、兄さん、いつもありがとう。兄さんの好きなスイーツ買ったから、夜一緒に食べよう』

あれがルイージなりの気遣いだったのだな…と、弟に感謝しつつ、楽しみの為仕事頑張ろうと意気込むマリオなのだった。


おわり


余りにも自然過ぎて兄と内緒話をしたことが無いと思い込んでいるルイージと小声で喋っていただけなのにルイージに嫉妬されてしまうフォックスの話笑
無意識に近い行動を意識すると途端にぎこちなくなっちゃうよね。あれ、今までどうやってたんだっけ…てなるのは何故なのか。
後マリオとフォックスは同僚のような関係だと個人的には嬉しい。
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