スキ集


俺だ、スネークだ。
大乱闘も新シーズンに移行し、久々に俺の元へ招待状が届いた。

そして今、俺はここに戻ってきた。また彼等と戦えるという期待と高揚感と共に。

《手合わせ》

俺は彼の怒涛の攻撃を搔い潜りながら手榴弾を手に取る。
目の前の小柄な男は最初に会った時と全く変わらず好戦的な目で俺を見る。
トレードマークの赤い帽子を被りなおす暇もなく繰り出してきた蹴りを寸での所で避けつつ、俺は手榴弾のピンを外し彼に投げつけた。

手榴弾はピンを外した後時間経過で爆発する。だが彼が使う炎技が当たれば即爆発してしまう代物だ。彼もそう無下にはできまい。
実際彼は投げた手榴弾に気を取られ俺から視線を外したのだ。

この一瞬の隙が勝機だ。

俺はその隙にロケットランチャーを構え、彼に向かって撃った。そして利き足に思いっきり力を込め、飛び込むように彼の元へ駆け出す。その勢いのままに彼へダッシュ攻撃を繰り出したのだ。
ランチャーを避け反応に遅れた彼が気付いた時にはもう遅く、俺のダッシュ攻撃をもろに受け彼の身体は宙に浮いた。俺は追いかけるようにジャンプし、宙を舞う彼へ大きく蹴りを入れる。

だが彼もそう易々と攻撃を受け入れてくれる訳では無い様で、身体を翻し俺の蹴りをやり過ごした。
俺は心の中で小さく舌打ちをする。このまま蹴りが当たっていれば撃墜とは言わずも場外には飛ばせる。戻ってくるところを狩れば容易く撃墜できる為やはり当たってほしい場面であった。

だがそんな気持ちとは裏腹に、やはりこう来なくては、というゾクゾクとするような高揚感が俺を包んでいたのだ。

今回の乱闘はストック制、残機3での勝負。
吹っ飛ばし吹っ飛ばされ、現在お互い残機が1。もう後も余裕もない場面である。
だがそれなのに、この一瞬が、この遊びのようで真剣な戦いが、途轍もなく楽しい。この楽しさが、俺に実感を与える。

俺はこの、祭りのような戦場に帰ってきたのだと。

俺と彼は同時に着地した瞬間、各々攻撃態勢に入る。
彼は小ジャンプからのメテオ攻撃。俺はダッシュ攻撃をした為お互いの攻撃は空振りに終わった。だがそれでいい。俺はダッシュ攻撃であるローリングをしている最中に地面に落ちていた手榴弾を拾うことができたのだからな。
この世界の手榴弾は爆発するまでの時間が長い為、先程投げた手榴弾がまだ爆発せずに残っていたのだ。だがそれでも後数秒できっと爆発してしまうだろう。今これを彼に投げつければ間違いなくダメージを食らう筈である。

俺は彼の方へと振り返りつつ、手に持っている手榴弾を投げつけようと大きく振りかぶった。
だが、彼に投げつけることは、できなかったのだ。

気付いた時にはもう遅かった。
何故か彼は俺のすぐ傍にまで来ていて俺の身体を掴んでいたんだ。

掴まれている状態では体の自由が利かないのもあるが、それ以前に俺はかなり驚いていた。
何故なら彼は俺が手榴弾を持っている事に気が付いている筈だ。それなのに、敢えてこちらに来た。ダメージを受ける恐怖をものともせず。
俺を撃墜できるなら共に爆発を受けても良いと思っているのだ。

(とんだ戦闘狂だな)

俺はそう呆れると共に喜びを噛み締める。そりゃそうだ、俺もそんな彼らの仲間なのだから。
そしてとうとう、タイムリミットだ。

ボーン!という轟音と衝撃と共に俺達は宙を舞う。爆風と煙が躍る中、視界の端で動く何かを見つけた瞬間俺は目を見開いた。

彼だ。
しかも既に俺を捉え今まさに蹴り上げようとしていた瞬間だった。
彼は、この瞬間の為に爆発を受け入れたというのか。色々と衝撃である。
だがこの時点でもう俺は何も出来ない。反応がもう追いつかないのだ。

そう、この一瞬の隙が、彼にとっての勝機だ。

そこからはあっという間だった。
俺は彼のサマーソルトを食らった後、スーパージャンプパンチで見事場外を決められてしまったのだった。
悔しい気持ちは勿論ある。だがそれ以上に未だ覚めることの無い高揚感と清々しさが戦い抜いた俺を包んでいたのだ。

「お疲れ様スネーク」

振り返るとそこには今の今まで戦っていた彼が、先程の事がまるで無かったかのような穏やかな笑みを浮かべて俺を見ていた。

「どう?小手調べ位にはなったかな?」

そう茶目っ気たっぷりで聞いてくる彼に、俺は小さく笑う。

「あぁ、良いウォーミングアップだった」

そんな俺の返答に、彼はクスクス笑いながら「そうか」と返したのだった。

「じゃあ改めて…おかえり、スネーク」

そう嬉しそうに差し出すその手を俺はがっしりと手に取り握る。

「あぁ、…ただいま」

照れくさそうにひねり出されたその言葉でも、彼は満足そうに微笑む。
だからこそここは、こんなにも楽しいのだ。


おわり


久々の参戦で内心ウキウキなスネークさんの話。
因みにウォーミングアップに彼を誘ったのはスネークさんです。
初参戦のファイターの最初の手合わせをするのは兄さんの仕事だったりします。それをスネークさんは覚えていたのでしょうね。
マリエル氏のマリオ好プレイ集の動画が大好き過ぎてついそのワンシーンを参考にさせてもらいました。あの動きは真似できない。爆発の最中攻撃に繋げるのは天才過ぎる。
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