一歩逃げれば一歩追う
治side
侑【紬ちゃんおります】
メッセージと一緒に送られてきたのはイチゴオレを呆然と飲んでる紬ちゃんの写真。可愛え。
侑【俺の紬ちゃん泣かしたら死なすぞ】
誰がお前の紬ちゃんや。でもツムからの連絡で紬ちゃんが今日学校におるんがわかったし、やることは一つや。
紬「、、お、さむくん」
治「ちょっとええ?」
昼休みに入ってすぐ、紬ちゃんを確保しにツムのクラスに行った。
侑「行ってらっしゃい紬ちゃん」
ツムの言葉も加勢してか、紬ちゃんは黙って俺について来てくれた。今日屋上が開いてるんは確認済みや。
紬「治君、そっちは」
治「開いてるで」
紬「・・」
行きたくない、そう思ってるのが分かる。でも言わせへんよ。
治「誰にも聞かれんで話しできる場所、あそこくらいしかないやん?」
紬「・・うん」
屋上は相変わらず誰もおらん。
紬「あ、の、、」
治「紬ちゃん」
俺は紬ちゃんと一定の距離を取ったまま彼女の名前を呼ぶ。それでも彼女は俺を見てはくれへんかった。
治「紬ちゃん、俺話が終わるまでここから動かん。紬ちゃんが逃げても追わん」
紬「!」
治「だから、話してくれへん?俺のどこが怖い?」
こういう風にしたら、紬ちゃんが逃げて行かんのも言ってくれるっていうのも分かっとった。
紬「っ、、違うの、、治君自身が怖いわけじゃない」
ほら、言うてくれる。なんや、俺もツムのこと言えへんのかもしれんなぁ。
治「なら、何が怖いん?」
紬「、、私ね、昔演劇をやってたんだけど、、その、その練習をクラスの男の子に見られて、、、」
治「・・虐められてたん?」
紬「!・・」
黙って頷いた紬ちゃん。きっと話すのは嫌やったと思う。俺に今聞かれたことに頷くんも。
治「そいつと俺がかぶって見えたん?」
紬「っごめんなさい!でも、治君が誰にも、侑君にも言わないでいてくれてるの知ってる!あの人たちとは違うってわかってる」
治「そういうことやったんか」
紬「治君、本当にごめんなさい」
治「そんな謝らんといて。紬ちゃん、ごめんなぁ」
紬「なんで、治君が謝るの?」
治「俺な、あの日、ここで紬ちゃんを見れて良かったと思っとる」
紬「!」
治「そのことが、紬ちゃんを不安にさせてるとわかっても、そう思っとるよ」
庇うつもりは毛頭ない。そんな過去の男のことなんてさっさと忘れてしまえばええ。
治「そいつきっと、紬ちゃんの演技に心臓持っていかれてん」
紬「?」
治「俺も、ここで紬ちゃんに心臓もってかれたんやから」
紬「!?く、苦しい?!」
私はなんてことを、なんて本気で俺の心配をしとる紬ちゃん。
治「苦しいなぁ。でも心地ええ苦しさやねん」
紬「??」
治「紬ちゃん、俺は紬ちゃんが言わんでって言うなら絶対に言わん。紬ちゃん自身にも言わん。でも、あんな頑張っとる紬ちゃんをもっとたくさんの人が応援してくれたらええなって思うよ」
紬「っ、、治君、、」
治「ふ、泣いてええよ」
前に見た表情とは違う、この涙は流してもええ涙や。
紬「っ、ありがとう、治君っ」
治「・・紬ちゃん、それ俺が泣かせたんやろ?涙、拭わせてくれへんかな」
紬は治君のせいじゃないっ言いながら、俺に触れされてくれた。昔の男の言葉なんて覚えとらんでええ。俺で上書きして、紬ちゃん。
紬side
ど、どどどうすれば、、子供みたいに泣いた挙句、治君に抱きしめて泣き止ませてもらうなんて、恥ずかしすぎる。
治「紬ちゃん、泣き止んだな」
紬「ご、ごめんなさい!!また私は馴れ馴れしく」
治「ええよ。俺がしたくてやったんやから」
治君は優しい。治君のファンの皆さんごめんなさい。
治「紬ちゃん、俺のこと優しいとか思っとる?」
やっぱりエスパー!?
治「ちゃうよ。俺は意地悪もするで」
そう言って私をまた腕に抱き込んだ治君。身長差がありすぎるせいか、治君が覆いかぶさるみたいになってる。
治「紬ちゃんが、何歩後ろに引いても俺はそれより多く紬ちゃんの方へ歩くで」
紬「・・動かないって言ってたのは?」
治「あの話聞いてる間だけの約束や」
私がお芝居をしても、しなくても治君は変わらないよって、そう言ってくれてる気がした。
紬「やっぱり、治君は優しい」
あれから昼休みの残り時間が少ないのに気づいて二人で一緒にご飯を食べた。
治「せや、今度の月曜日ってなんか予定ある?」
紬「?学校」
治「それは俺もですけど。放課後の話」
紬「?特にないよ」
治「土日練習試合やから月曜の練習が早く終わんねん。自主練も禁止されとるしな。やから、その後、どっか行かん?」
紬「え?」
治「あ、ツム達もおるから!」
紬「私は、大丈夫だけど、みんな早く帰って体休めた方がいいんじゃないかな?」
治「俺らのことはええねん。決まりやな。忘れて早く帰ったらあかんよ?」
紬「う、うん」
治君と約束すると彼は人懐っこい笑みを浮かべてた。それはどこか侑君と似てる。
紬「治君」
治「んー?」
紬「その、れ、練習試合、が、頑張って、、ください」
治「!」
驚いてこっちを見た治君に慌てて言った。
紬「そ、その治君は言われなくても頑張ると思うんだけど、」
治「俺、めっちゃ嬉しい」
紬「!」
治「今なら、どんなブロックでも打ち抜ける気がする」
ブロック?よくわからないけど、治君が私にしてくれるように、私が治君にしても大丈夫らしい。
侑「紬ちゃん、サムと仲直りできたん?」
喧嘩?は別にしてなかったけど、
紬「う、うん、ちゃんと話せた」
侑「そか、泣いたん?」
私の目元に触れた侑君。その仕草がさっきの治君と似てた。
紬「、少しだけ」
侑「でも、今の方がええ顔してるな」
自覚はないけど、本当なら、それはきっと
紬「治君の、おかげだよ」
侑「!そか、なら俺がアイツ殴らんでもええな」
紬「、侑君もありがとう」
侑「?俺は別になんもしてへんよ?」
紬「治君と、話をする時間をちゃんと、つくってくれたから」
侑「・・ホンマ、紬ちゃんはええ子やね」
その日から治君からよく連絡が来るようになった。それにちょっと嬉しいと思ってる自分がいる。内容はバレーのこととか、侑君と喧嘩したこととか、いろいろあるけど、治君が自分のことを話してくれるのは嬉しい。
治【明日の約束忘れてない?】
紬「ふふ、治君約束してから毎日言ってる。忘れてないよ」
そう返せば、ホッしたってスタンプが送られてくる。治君にはたくさん迷惑かけたし、お礼したいな。
紬「治君、前にチョコあげたとき美味しそうに食べてたっけ」
まだこの時間なら大丈夫かな。
治side
紬【放課後ちゃんと待ってるから大丈夫だよ】
結構やり取りしてるけど、紬ちゃんは必ず返してくれる。やり取りを頻繫にするようになって確信に変わったことがある。
治「紬ちゃん、天然やな」
侑「せやで」
独り言のつもりで言った言葉に返事が返ってきた。なんやねん、邪魔すんなや。
侑「この前なぁ、古文の問題当てられて答えてたんやけど正解しとったんや」
治「流石やな」
侑「でもな、正解した文を読むように言われたんやけど、読みだしたら漢文やってん。先生も俺らも驚いたわ」
その時のことを思い出して笑うツムが鬱陶しい。
侑「サム、嫉妬か?」
治「うっさいねんお前」
侑「ごめんなぁ紬ちゃんと同じクラスやからなぁ」
治「ウザイ言うてるやろ。同じクラスで恥ばっかりかいてるだけのくせして」
侑「はぁ!?かいてへんわ!紬ちゃんが俺に惚れても文句無しやで!!」
治「お前みたいな人の心も分からん奴に惚れるええ子はおらんわ」
侑「はぁ!?お前かて底意地悪いやろが!!ええ人ぶんな!」
侑【紬ちゃんおります】
メッセージと一緒に送られてきたのはイチゴオレを呆然と飲んでる紬ちゃんの写真。可愛え。
侑【俺の紬ちゃん泣かしたら死なすぞ】
誰がお前の紬ちゃんや。でもツムからの連絡で紬ちゃんが今日学校におるんがわかったし、やることは一つや。
紬「、、お、さむくん」
治「ちょっとええ?」
昼休みに入ってすぐ、紬ちゃんを確保しにツムのクラスに行った。
侑「行ってらっしゃい紬ちゃん」
ツムの言葉も加勢してか、紬ちゃんは黙って俺について来てくれた。今日屋上が開いてるんは確認済みや。
紬「治君、そっちは」
治「開いてるで」
紬「・・」
行きたくない、そう思ってるのが分かる。でも言わせへんよ。
治「誰にも聞かれんで話しできる場所、あそこくらいしかないやん?」
紬「・・うん」
屋上は相変わらず誰もおらん。
紬「あ、の、、」
治「紬ちゃん」
俺は紬ちゃんと一定の距離を取ったまま彼女の名前を呼ぶ。それでも彼女は俺を見てはくれへんかった。
治「紬ちゃん、俺話が終わるまでここから動かん。紬ちゃんが逃げても追わん」
紬「!」
治「だから、話してくれへん?俺のどこが怖い?」
こういう風にしたら、紬ちゃんが逃げて行かんのも言ってくれるっていうのも分かっとった。
紬「っ、、違うの、、治君自身が怖いわけじゃない」
ほら、言うてくれる。なんや、俺もツムのこと言えへんのかもしれんなぁ。
治「なら、何が怖いん?」
紬「、、私ね、昔演劇をやってたんだけど、、その、その練習をクラスの男の子に見られて、、、」
治「・・虐められてたん?」
紬「!・・」
黙って頷いた紬ちゃん。きっと話すのは嫌やったと思う。俺に今聞かれたことに頷くんも。
治「そいつと俺がかぶって見えたん?」
紬「っごめんなさい!でも、治君が誰にも、侑君にも言わないでいてくれてるの知ってる!あの人たちとは違うってわかってる」
治「そういうことやったんか」
紬「治君、本当にごめんなさい」
治「そんな謝らんといて。紬ちゃん、ごめんなぁ」
紬「なんで、治君が謝るの?」
治「俺な、あの日、ここで紬ちゃんを見れて良かったと思っとる」
紬「!」
治「そのことが、紬ちゃんを不安にさせてるとわかっても、そう思っとるよ」
庇うつもりは毛頭ない。そんな過去の男のことなんてさっさと忘れてしまえばええ。
治「そいつきっと、紬ちゃんの演技に心臓持っていかれてん」
紬「?」
治「俺も、ここで紬ちゃんに心臓もってかれたんやから」
紬「!?く、苦しい?!」
私はなんてことを、なんて本気で俺の心配をしとる紬ちゃん。
治「苦しいなぁ。でも心地ええ苦しさやねん」
紬「??」
治「紬ちゃん、俺は紬ちゃんが言わんでって言うなら絶対に言わん。紬ちゃん自身にも言わん。でも、あんな頑張っとる紬ちゃんをもっとたくさんの人が応援してくれたらええなって思うよ」
紬「っ、、治君、、」
治「ふ、泣いてええよ」
前に見た表情とは違う、この涙は流してもええ涙や。
紬「っ、ありがとう、治君っ」
治「・・紬ちゃん、それ俺が泣かせたんやろ?涙、拭わせてくれへんかな」
紬は治君のせいじゃないっ言いながら、俺に触れされてくれた。昔の男の言葉なんて覚えとらんでええ。俺で上書きして、紬ちゃん。
紬side
ど、どどどうすれば、、子供みたいに泣いた挙句、治君に抱きしめて泣き止ませてもらうなんて、恥ずかしすぎる。
治「紬ちゃん、泣き止んだな」
紬「ご、ごめんなさい!!また私は馴れ馴れしく」
治「ええよ。俺がしたくてやったんやから」
治君は優しい。治君のファンの皆さんごめんなさい。
治「紬ちゃん、俺のこと優しいとか思っとる?」
やっぱりエスパー!?
治「ちゃうよ。俺は意地悪もするで」
そう言って私をまた腕に抱き込んだ治君。身長差がありすぎるせいか、治君が覆いかぶさるみたいになってる。
治「紬ちゃんが、何歩後ろに引いても俺はそれより多く紬ちゃんの方へ歩くで」
紬「・・動かないって言ってたのは?」
治「あの話聞いてる間だけの約束や」
私がお芝居をしても、しなくても治君は変わらないよって、そう言ってくれてる気がした。
紬「やっぱり、治君は優しい」
あれから昼休みの残り時間が少ないのに気づいて二人で一緒にご飯を食べた。
治「せや、今度の月曜日ってなんか予定ある?」
紬「?学校」
治「それは俺もですけど。放課後の話」
紬「?特にないよ」
治「土日練習試合やから月曜の練習が早く終わんねん。自主練も禁止されとるしな。やから、その後、どっか行かん?」
紬「え?」
治「あ、ツム達もおるから!」
紬「私は、大丈夫だけど、みんな早く帰って体休めた方がいいんじゃないかな?」
治「俺らのことはええねん。決まりやな。忘れて早く帰ったらあかんよ?」
紬「う、うん」
治君と約束すると彼は人懐っこい笑みを浮かべてた。それはどこか侑君と似てる。
紬「治君」
治「んー?」
紬「その、れ、練習試合、が、頑張って、、ください」
治「!」
驚いてこっちを見た治君に慌てて言った。
紬「そ、その治君は言われなくても頑張ると思うんだけど、」
治「俺、めっちゃ嬉しい」
紬「!」
治「今なら、どんなブロックでも打ち抜ける気がする」
ブロック?よくわからないけど、治君が私にしてくれるように、私が治君にしても大丈夫らしい。
侑「紬ちゃん、サムと仲直りできたん?」
喧嘩?は別にしてなかったけど、
紬「う、うん、ちゃんと話せた」
侑「そか、泣いたん?」
私の目元に触れた侑君。その仕草がさっきの治君と似てた。
紬「、少しだけ」
侑「でも、今の方がええ顔してるな」
自覚はないけど、本当なら、それはきっと
紬「治君の、おかげだよ」
侑「!そか、なら俺がアイツ殴らんでもええな」
紬「、侑君もありがとう」
侑「?俺は別になんもしてへんよ?」
紬「治君と、話をする時間をちゃんと、つくってくれたから」
侑「・・ホンマ、紬ちゃんはええ子やね」
その日から治君からよく連絡が来るようになった。それにちょっと嬉しいと思ってる自分がいる。内容はバレーのこととか、侑君と喧嘩したこととか、いろいろあるけど、治君が自分のことを話してくれるのは嬉しい。
治【明日の約束忘れてない?】
紬「ふふ、治君約束してから毎日言ってる。忘れてないよ」
そう返せば、ホッしたってスタンプが送られてくる。治君にはたくさん迷惑かけたし、お礼したいな。
紬「治君、前にチョコあげたとき美味しそうに食べてたっけ」
まだこの時間なら大丈夫かな。
治side
紬【放課後ちゃんと待ってるから大丈夫だよ】
結構やり取りしてるけど、紬ちゃんは必ず返してくれる。やり取りを頻繫にするようになって確信に変わったことがある。
治「紬ちゃん、天然やな」
侑「せやで」
独り言のつもりで言った言葉に返事が返ってきた。なんやねん、邪魔すんなや。
侑「この前なぁ、古文の問題当てられて答えてたんやけど正解しとったんや」
治「流石やな」
侑「でもな、正解した文を読むように言われたんやけど、読みだしたら漢文やってん。先生も俺らも驚いたわ」
その時のことを思い出して笑うツムが鬱陶しい。
侑「サム、嫉妬か?」
治「うっさいねんお前」
侑「ごめんなぁ紬ちゃんと同じクラスやからなぁ」
治「ウザイ言うてるやろ。同じクラスで恥ばっかりかいてるだけのくせして」
侑「はぁ!?かいてへんわ!紬ちゃんが俺に惚れても文句無しやで!!」
治「お前みたいな人の心も分からん奴に惚れるええ子はおらんわ」
侑「はぁ!?お前かて底意地悪いやろが!!ええ人ぶんな!」