一歩逃げれば一歩追う
治side
ツムの教室に行った日、ずっと探していた子を見つけた。別に好きやって思っとったわけやない。でも気になる子、やった。俺の心臓を奪って行った子や。
侑「あかん分からん!!」
銀島「さっきからそれしか言うてへんやん」
侑「なら銀これ分かるんか!?」
銀島「わからん!」
角名「いばんなよ」
それでもあの子に接触できたのは、教科書を返した時が最後。別のクラスで部活も違うんやから接点なんてないしな。
侑「サム!お前ここわかるか!?」
治「知らん」
角名「知らんって、わかるなら教えてやりなよ」
治「嫌や」
侑「ええねん、角名。サムは俺が羨ましいんや。なぁ?」
角名「は?なんで?」
侑「俺はここで出来へんくても教室に行けば教えてくれる天使がおんねん」
ニヤニヤしてキモイねん。
銀島「天使?」
侑「おん。めっちゃ分かりやすいで」
知っとるわ。あの教科書見てすぐわかったわ。出来る人の教科書やってな。
角名「ならさ、その子ここに呼んでよ」
治「!」
銀島「お!名案や!侑!よべや!」
侑「あかん」
角名「なんで?」
侑「あの子、人見知り激しいねん」
確かに、そんな感じや。
角名「でも、今度の中間テスト、ヘマすれば練習試合参加できないよ?」
侑「うぐっ」
角名「どうする?」
侑「・・ちょっと待っとれ」
侑はそう言って部室を出て行った。テスト期間で授業も早く終わって部活も制限されとる。まだ稲荷さん学校におるんやろか。
角名「で、治の好きな子なわけ?」
治「いや、違うけど?」
角名「ふぅん」
治「なんや」
角名の疑うような視線にイラつく。
角名「別に」
それから少しして侑から連絡がきた。教室でやるから来い言うてる。
銀島「おお!やったな!」
なんや、心臓うるさなってきたな。
侑「じゃあ頼んますセンセ!」
紬「え、っと」
治「いきなりすぎや」
でっかい男が稲荷さんを囲んどる光景はあかんのちゃうか。
角名「俺、角名倫太郎。急にごめんね」
紬「あ、い、いえ!」
銀島「俺は銀島結!よろしゅう!」
紬「あ、は、はい」
人見知りの彼女と視線を合わせるんは大変そうやな。
治「宮治、教科書借りたん覚えてる?」
紬「は、はい!」
治「またお世話になってごめんなぁ」
紬「は、はい!、いや、いいえ!」
治・侑「「どっちやねん」」
侑と被ったそれに、稲荷さんはちょっと笑みを浮かべた。可愛え。
紬「え、っと、稲荷紬です・・よろしくお願いいたします」
丁寧に頭まで下げる彼女。ほんまちっさ。
侑「紬ちゃん、数学教えてや!」
紬「え、っと・・・どこが分からないの?」
侑「ここら辺、もうさっぱり!」
紬「・・ここは、前に説明したことあるよ?」
侑「あれ?そうやった?でもわからん!」
銀島「そこ俺もわからへん!」
紬「じゃ、じゃあもう一度説明するね」
侑「黒板使って!」
紬「えぇ!?」
侑「ええやん!俺ら今は先生と生徒やし!」
紬「せ、先生と、生徒?」
治「ツム」
侑「ええから!雰囲気って大事やで!」
ツムの言葉に稲荷は考えよる。ええんやで、こんなアホに付き合わんといて。
紬「じゃ、じゃあ先生やるよ?」
侑「はい、先生!」
銀島・角名・治「「「やるんかい」」」
でも小さく息をついた稲荷さんは次に視線を上げたときには、別人みたいやった。それは俺以外のやつも気づいとる。
紬「じゃあ説明するね」
そう言って淡々と説明を始める彼女はあの屋上で見た彼女と同じ、真っ直ぐした目をしとった。
侑「紬ちゃん、そこ代入せんの?」
紬「先に式を簡単にしてから代入すると計算が楽なの」
侑「あーそうやった」
紬「侑君」
侑「んー」
稲荷さんがツムの座っていた席の前に立つ。ツムもそれに顔を上げた。
紬「紬ちゃんじゃない、先生、でしょう?」
そう言った彼女に俺らは全員唖然とした。あの角名でさえ。なんや、色気が半端ない。どういうこと?え?稲荷さんやんな?
紬「返事は?」
侑「は、はい」
紬「よろしい。銀島君はできた?」
銀島「ふぇ!?」
紬「・・うん、正解。なんだできるじゃん」
銀島「あ、ああ、うん」
紬「宮君は?」
俺の前に立った稲荷さん。その真っ直ぐした瞳がなんも解けてない俺のノートに落とされる。
紬「わからなかった?どこが分からなかった?」
治「・・・全部です」
侑「あったま悪!!」
角名「・・・」
角名、お前今稲荷さんを見てなに考えてんのや。いやらしい目で見てんちゃうぞ。
紬「なら、もう一回説明するね?」
そう言って俺の隣に立った彼女。なんや甘い匂いするんやけど。その日俺のノートに綺麗な字で公式が書かれていった。
紬「、ご、、ごめんなさいっ!!!」
侑「いや、もうええって」
勉強を教えてもらい終わった頃、稲荷さんはいつもの感じに戻っていた。そして急に謝りだした彼女。なんや人が変わったみたいや。
角名「そうそう。勉強になったし、それに良かったよ、色々」
色々ってなんやねん。お前大半、稲荷さんで変なこと考えてたちゃうんか。
銀島「めちゃくちゃ分かりやすかったで!俺教えてもらった所は完璧や!」
紬「そ、それは良かったです」
侑「な?言うたやろ?困ったときの紬ちゃんやねん」
お前が威張ることちゃうねん。
紬「あ、あの宮君」
治「!」
紬「ご、ごめんなさい、勝手にノートに書いたりして」
治「謝ることちゃうよ。むしろ感謝しとるし。丁寧に教えてくれてありがとうな」
紬「う、うん」
笑った。か、かわいすぎるやろ。
侑「これで何とか部活休まんですむわ!」
紬「休む?」
侑「試験悪いと補習あるやん?あれで練習試合行けへんかもしれんのや」
紬「・・なら、歴史の簡単にまとめたノート、コピーする?」
侑「ええの!?」
紬「うん」
侑「欲しい!!」
銀島「お、俺も!いい?」
紬「う、うん」
角名「俺も」
紬「、うん」
治「稲荷さん、嫌なら嫌て言うていいんやで?」
侑「なんやサムはいらんの?」
治「お前が偉そうにすんなや。俺かて欲しいわ!」
紬「なら、宮君も」
そうして俺も稲荷さんのノートをもらう人数に加算された。なんや悪い気がするわ。
紬「、嫌じゃないよ」
治「!」
紬「大丈夫、」
治「・・ならええんやけど」
角名「でも、なんでここまでしてくれるの?」
角名が俺も思っとったことを聞いた。
侑「紬ちゃんがええ、言うんやからええやんか。うっさい奴らやな」
治「人でなしは黙っとれ」
侑「ああ!?」
治「俺は知らんうちに人でなしになりたくないんや」
侑「誰が人でなしやコラ」
俺とツムの喧嘩を仲裁するように稲荷さんの声が割って入った。
紬「好きなことを一生懸命頑張れる人ってすごいと思うから。そんな人の役に少しでも立てるなら、うれしいなって・・・」
侑「あ、あかん・・かわええ!!可愛すぎるで紬ちゃん!!」
紬「あ、侑君、恥ずかしいから」
ツムの言う通り、可愛すぎやで稲荷さん。
治「稲荷さん」
紬「ふぁ、ふぁい」
ふぁい・・。
治「また分からんとこ、教えてくれん?」
紬「!う、うん!」
関わる接点は作ればええんや。
少し暗くなった帰り道。いつもと違うところは彼女がいること。
角名「紬は方向どっち?一緒なら送る」
侑・治「「は!?」」
角名「?」
?じゃないわ!!
侑「角名!!お前なに紬ちゃんのこと呼び捨てしてんねや!!」
角名「え?ダメだった?」
角名に視線を向けられて肩を揺らした稲荷さんは少しの間のあと首を小さく振った。
角名「ほら、いいって。俺のことも名前でいいよ。俺の名前覚えてる?」
紬「え、、り、りん、、、くん」
あ、忘れたんやな。
角名「うん、まあそんなもん」
侑・治「「うそつけ!!」」
銀島「角名倫太郎やで」
なんやねん!此奴!
治「なら俺のことも名前で呼んで!」
紬「!み、みや、じゃない、治君」
なんや、呼ばれなれてる名前のはずやのに、なんか特別に聞こえよるんはなんでや。
侑「よかったなぁサム」
やからお前はその顔どうにかせぇ。
ツムの教室に行った日、ずっと探していた子を見つけた。別に好きやって思っとったわけやない。でも気になる子、やった。俺の心臓を奪って行った子や。
侑「あかん分からん!!」
銀島「さっきからそれしか言うてへんやん」
侑「なら銀これ分かるんか!?」
銀島「わからん!」
角名「いばんなよ」
それでもあの子に接触できたのは、教科書を返した時が最後。別のクラスで部活も違うんやから接点なんてないしな。
侑「サム!お前ここわかるか!?」
治「知らん」
角名「知らんって、わかるなら教えてやりなよ」
治「嫌や」
侑「ええねん、角名。サムは俺が羨ましいんや。なぁ?」
角名「は?なんで?」
侑「俺はここで出来へんくても教室に行けば教えてくれる天使がおんねん」
ニヤニヤしてキモイねん。
銀島「天使?」
侑「おん。めっちゃ分かりやすいで」
知っとるわ。あの教科書見てすぐわかったわ。出来る人の教科書やってな。
角名「ならさ、その子ここに呼んでよ」
治「!」
銀島「お!名案や!侑!よべや!」
侑「あかん」
角名「なんで?」
侑「あの子、人見知り激しいねん」
確かに、そんな感じや。
角名「でも、今度の中間テスト、ヘマすれば練習試合参加できないよ?」
侑「うぐっ」
角名「どうする?」
侑「・・ちょっと待っとれ」
侑はそう言って部室を出て行った。テスト期間で授業も早く終わって部活も制限されとる。まだ稲荷さん学校におるんやろか。
角名「で、治の好きな子なわけ?」
治「いや、違うけど?」
角名「ふぅん」
治「なんや」
角名の疑うような視線にイラつく。
角名「別に」
それから少しして侑から連絡がきた。教室でやるから来い言うてる。
銀島「おお!やったな!」
なんや、心臓うるさなってきたな。
侑「じゃあ頼んますセンセ!」
紬「え、っと」
治「いきなりすぎや」
でっかい男が稲荷さんを囲んどる光景はあかんのちゃうか。
角名「俺、角名倫太郎。急にごめんね」
紬「あ、い、いえ!」
銀島「俺は銀島結!よろしゅう!」
紬「あ、は、はい」
人見知りの彼女と視線を合わせるんは大変そうやな。
治「宮治、教科書借りたん覚えてる?」
紬「は、はい!」
治「またお世話になってごめんなぁ」
紬「は、はい!、いや、いいえ!」
治・侑「「どっちやねん」」
侑と被ったそれに、稲荷さんはちょっと笑みを浮かべた。可愛え。
紬「え、っと、稲荷紬です・・よろしくお願いいたします」
丁寧に頭まで下げる彼女。ほんまちっさ。
侑「紬ちゃん、数学教えてや!」
紬「え、っと・・・どこが分からないの?」
侑「ここら辺、もうさっぱり!」
紬「・・ここは、前に説明したことあるよ?」
侑「あれ?そうやった?でもわからん!」
銀島「そこ俺もわからへん!」
紬「じゃ、じゃあもう一度説明するね」
侑「黒板使って!」
紬「えぇ!?」
侑「ええやん!俺ら今は先生と生徒やし!」
紬「せ、先生と、生徒?」
治「ツム」
侑「ええから!雰囲気って大事やで!」
ツムの言葉に稲荷は考えよる。ええんやで、こんなアホに付き合わんといて。
紬「じゃ、じゃあ先生やるよ?」
侑「はい、先生!」
銀島・角名・治「「「やるんかい」」」
でも小さく息をついた稲荷さんは次に視線を上げたときには、別人みたいやった。それは俺以外のやつも気づいとる。
紬「じゃあ説明するね」
そう言って淡々と説明を始める彼女はあの屋上で見た彼女と同じ、真っ直ぐした目をしとった。
侑「紬ちゃん、そこ代入せんの?」
紬「先に式を簡単にしてから代入すると計算が楽なの」
侑「あーそうやった」
紬「侑君」
侑「んー」
稲荷さんがツムの座っていた席の前に立つ。ツムもそれに顔を上げた。
紬「紬ちゃんじゃない、先生、でしょう?」
そう言った彼女に俺らは全員唖然とした。あの角名でさえ。なんや、色気が半端ない。どういうこと?え?稲荷さんやんな?
紬「返事は?」
侑「は、はい」
紬「よろしい。銀島君はできた?」
銀島「ふぇ!?」
紬「・・うん、正解。なんだできるじゃん」
銀島「あ、ああ、うん」
紬「宮君は?」
俺の前に立った稲荷さん。その真っ直ぐした瞳がなんも解けてない俺のノートに落とされる。
紬「わからなかった?どこが分からなかった?」
治「・・・全部です」
侑「あったま悪!!」
角名「・・・」
角名、お前今稲荷さんを見てなに考えてんのや。いやらしい目で見てんちゃうぞ。
紬「なら、もう一回説明するね?」
そう言って俺の隣に立った彼女。なんや甘い匂いするんやけど。その日俺のノートに綺麗な字で公式が書かれていった。
紬「、ご、、ごめんなさいっ!!!」
侑「いや、もうええって」
勉強を教えてもらい終わった頃、稲荷さんはいつもの感じに戻っていた。そして急に謝りだした彼女。なんや人が変わったみたいや。
角名「そうそう。勉強になったし、それに良かったよ、色々」
色々ってなんやねん。お前大半、稲荷さんで変なこと考えてたちゃうんか。
銀島「めちゃくちゃ分かりやすかったで!俺教えてもらった所は完璧や!」
紬「そ、それは良かったです」
侑「な?言うたやろ?困ったときの紬ちゃんやねん」
お前が威張ることちゃうねん。
紬「あ、あの宮君」
治「!」
紬「ご、ごめんなさい、勝手にノートに書いたりして」
治「謝ることちゃうよ。むしろ感謝しとるし。丁寧に教えてくれてありがとうな」
紬「う、うん」
笑った。か、かわいすぎるやろ。
侑「これで何とか部活休まんですむわ!」
紬「休む?」
侑「試験悪いと補習あるやん?あれで練習試合行けへんかもしれんのや」
紬「・・なら、歴史の簡単にまとめたノート、コピーする?」
侑「ええの!?」
紬「うん」
侑「欲しい!!」
銀島「お、俺も!いい?」
紬「う、うん」
角名「俺も」
紬「、うん」
治「稲荷さん、嫌なら嫌て言うていいんやで?」
侑「なんやサムはいらんの?」
治「お前が偉そうにすんなや。俺かて欲しいわ!」
紬「なら、宮君も」
そうして俺も稲荷さんのノートをもらう人数に加算された。なんや悪い気がするわ。
紬「、嫌じゃないよ」
治「!」
紬「大丈夫、」
治「・・ならええんやけど」
角名「でも、なんでここまでしてくれるの?」
角名が俺も思っとったことを聞いた。
侑「紬ちゃんがええ、言うんやからええやんか。うっさい奴らやな」
治「人でなしは黙っとれ」
侑「ああ!?」
治「俺は知らんうちに人でなしになりたくないんや」
侑「誰が人でなしやコラ」
俺とツムの喧嘩を仲裁するように稲荷さんの声が割って入った。
紬「好きなことを一生懸命頑張れる人ってすごいと思うから。そんな人の役に少しでも立てるなら、うれしいなって・・・」
侑「あ、あかん・・かわええ!!可愛すぎるで紬ちゃん!!」
紬「あ、侑君、恥ずかしいから」
ツムの言う通り、可愛すぎやで稲荷さん。
治「稲荷さん」
紬「ふぁ、ふぁい」
ふぁい・・。
治「また分からんとこ、教えてくれん?」
紬「!う、うん!」
関わる接点は作ればええんや。
少し暗くなった帰り道。いつもと違うところは彼女がいること。
角名「紬は方向どっち?一緒なら送る」
侑・治「「は!?」」
角名「?」
?じゃないわ!!
侑「角名!!お前なに紬ちゃんのこと呼び捨てしてんねや!!」
角名「え?ダメだった?」
角名に視線を向けられて肩を揺らした稲荷さんは少しの間のあと首を小さく振った。
角名「ほら、いいって。俺のことも名前でいいよ。俺の名前覚えてる?」
紬「え、、り、りん、、、くん」
あ、忘れたんやな。
角名「うん、まあそんなもん」
侑・治「「うそつけ!!」」
銀島「角名倫太郎やで」
なんやねん!此奴!
治「なら俺のことも名前で呼んで!」
紬「!み、みや、じゃない、治君」
なんや、呼ばれなれてる名前のはずやのに、なんか特別に聞こえよるんはなんでや。
侑「よかったなぁサム」
やからお前はその顔どうにかせぇ。