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夏休み

紬side

「ナイスキー治!!」

「きゃぁ!治君ナイスキー!」

すごい。ハイタッチする治君と侑君の姿が目に焼き付く。有名人、その理由がわかった気がする。上手いだけじゃない、素人の私も、2人を見てたらわくわくする。

紬「すごいなぁ」

最後の試合も稲荷崎高校が勝って終わった。挨拶が終わって片づけが始まる。ここもきっと邪魔になるかもしれない。帰ろうかな。

紬「・・タッパーは」

どこにあるのか、わからない。まぁ、いいか。捨てられることは無いと思う。治君にメッセージを入れて帰ろう。

治「紬ちゃん!」

紬「!」

「紬ってだれ?」

「さぁ」

ギャラリーに向かって叫ぶ治君にどうしていいのかわからない。というか、向こうで治君のファンの子たちが私を探してる。こ、怖い。

治「さっきの所で待っとって!」

さっきの所って、体育館裏かな?

「ちょ、紬って誰よ!?」

こ、怖い。こっそりそこを後にして、体育館裏で待った。

治「紬ちゃん」

20分くらいして肩で息をして来た治君。急いで来てくれたのかな。

治「待たせてごめんなぁ」

紬「ううん、大丈夫」

治「今日、来てくれてありがとう」

紬「私も、治君が夢中になってるもの、見せてくれてありがとう。なんだか、わくわくした」

治「・・紬ちゃん」

紬「?」

治「また見に来てくれへんかな?」

紬「うん、また見させてください」

そう言うと、治君は嬉しそうに頷いてた。

治「あ、あとこれ」

紬「!ありがとう」

タッパー、ちゃんと戻ってきた。受け取ろうとしたけど、治君が離してくれなかった。

紬「治君?、、!?」

治君の顔が耳元に!?

治「今度の差し入れは、俺にだけ、な?」

紬「っ、、治君!」

間近での治君の笑顔に心臓が煩かった。聞こえてないといいけど。


侑side

午前中はポンコツ過ぎて使えんかったサムが、午後から今までにないほど調子よかった。3枚ブロックをあそこまで綺麗に打ち抜いたん初めてや。

侑「まぁ俺のトスのおかげや」

角名「治?午後から調子良かったね」

銀島「治は?おらんで?」

角名「紬のところ」

侑「告りに行ったんやろ」

角名「まじか」

知らんけど。いや、もう言えや。バレーしとる時以外、紬ちゃんのことばっかり考えとる。飯食う時もや。鬱陶しくて敵わん。

銀島「でも、紬ちゃんええな」

侑「銀、急にどうしたん?」

銀島「あ、別に好きとかそんなんやないで!ただ、今日の治に狼狽えんで行けたんがすごいなって思てん」

侑「紬ちゃんやからなぁ」

天然で鈍感。でもどこか感情に敏感なところがあんねんな、あの子。

角名「いいよね、紬」

侑「お前もか角名!?」

ガチャ

ちょうど入って来たサム。お前が居らん間に紬ちゃんを狙う男が増えたで。

侑「サム!紬ちゃんに告白したんか!?」

治「なんや急に」

侑「したんか、してないんかどっちや!?あ、もしかして振られたか!?」

治「してへんわ!!」

こいつ、馬鹿なん?

角名「なんだ、言わなかったんだ」

治「ええやろ、別に」

ばっか!

角名「別にいいよ。でも紬の彼氏が俺になっても恨まないでよね」

治「!」

銀島「え!?」

角名の奴は、なんや本気な気がするんよな。

角名「たぶん紬は、今日の不調が侑でも俺でも、治にしたようにしてくれた」

そんで、こいつたまに言い返せんようなこと言うんや。

角名「じゃあ、お疲れ」

銀と一緒に出て行った角名をサムはめちゃくちゃ睨んどった。いや、睨むくらいなら言い返せ。なんでもええから。

侑「お前、なんで言わんやったん?」

治「・・今やない気がした」

侑「逃げたんやな」

治「ちゃうわ!!」

侑「ならなんでや」

治「・・なんでもええやろ」

侑「まぁ別にええけど。サム、俺は紬ちゃんの味方やからな」

治「紬ちゃんがかわいそうやろが、ヤメロ」

侑「どういう意味や」


それから紬ちゃんは練習に何度か来てくれた。その度に差し入れを持ってきてくれて、北さんたちの間でも紬ちゃんの存在は知られた。

北「治の彼女、また差し入れくれたん?」

侑「彼女ちゃいます、北さん」

北「なんや、違うんか」

治「・・そのうち彼女にするんで」

北「ええ子みたいやからな、大事にせなあかんよ」

尾白「お前はオカンか」


結局サムが紬ちゃんに告白する前に夏休みは終わったんやけど。ヘタレサム。
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