夏休み
紬side
侑「あかーん、もう無理や」
机に倒れてしまった侑君。彼が放課後、部活ではなく机に向かってるのはもうすぐ期末試験だから。
侑「紬ちゃーん、もう俺無理やー」
治「紬ちゃんに絡むんやない。自分で何とかせえや」
侑「何とかできたら俺はここにはおらん!」
角名「威張るなよ」
銀島「でもI・H前やのになぁ」
角名「俺ら学生だから仕方ないよ」
インハイ?
治「インターハイ。バレーボールの全国大会や」
私の表情から治君がそう説明したくれた。
紬「ぜ、全国、すごいね」
侑「稲荷崎は全国常連やで」
常連!?
侑「あーー、バレーしたい」
治「うっさいわ!言えば言うほどしたなるやろ!」
紬「侑君、」
侑「んー」
紬「出られなかった選手に失礼にならないように、何より、侑君が試合までに満足できる練習が出来るように、その、今、頑張ろう?」
侑「・・」
紬「侑君が分かるまで、教えさせて?」
侑君の隣に座って彼の手元を見てみる。ああ、確かにここは応用問題で難しいかもしれない。でも先生ここ何度も説明してたから出る可能性はあるんだよね。
侑「、、不可抗力や」
治「黙れクソツム」
紬「?」
そっぽを向いてしまった侑君。そんな彼を動画に収めてる倫君。銀島君は笑ってるし、治君は、怒ってる?
侑「あー、紬ちゃん」
紬「?」
侑「よろしくお願いします」
紬「!、うん。侑君、基本は出来てるから大丈夫だよ」
それから侑君はすぐにそれを解けるようになった。
侑「さっすが!俺!」
角名「紬がいたからでしょ」
紬「う、ううん、侑君の力だよ」
銀島「甘やかしたらあかんで」
倫君と結君に言い返してる侑君と反対側で治君が黙々と英語をやってた。でも、ピタリと止まった手。騒ぐ侑君の方を睨んでる。
紬「治君」
治「!」
私はチョコを治君の口に入れてあげた。
紬「ずっと頑張ってる、から」
治「、、美味い」
紬「生チョコ、作ったの」
治「・・紬ちゃん」
紬「なに?」
治君がその大きな体を少し倒して私をのぞき込む。その体制に少し心臓がうるさくなった気がした。
治「英語、全部終わってん。全部合ってたら、ご褒美くれへん?」
紬「ご褒美?」
侑「なんやそれ!俺も欲しい!」
治「お前は紬ちゃんに聞きながらやったやつやんか!」
ご褒美?生チョコはまだあるけど、
治「それ以外な」
紬「!」
それ、って指さされたのは生チョコを入れてたケース。でもこれ以外今日は持ってきてない。目の前で笑ってる治君はそれにきっと気づいてる。
治「丸付けして」
治君に手渡されたそれを、受けとる。
角名「紬、嫌なら断っていいんだよ。試験前に試験勉強するのなんて当たり前なんだから」
銀島「せや、甘えんな宮ツインズ」
侑・治「「こいつと一緒にすな!!」」
侑君に教えてる間に、結構な量を解いてた治君。うん、合ってる。前に説明した通りの解き方をしてくれてた。
紬「あ、」
治「?」
紬「、ここ、スペルミス」
治「嘘やん!!?」
侑「ざまーみろ!」
aと書くべきところをeにしてしまってる。それ以外は全部合ってた。
紬「惜しかったね」
がっくりと肩を落として先ほどの侑君みたいに机に伏してしまった。でも確かにこれだけちゃんと解けて一つのスペルミスはショックかもしれない。
治「・・・」
なんだか、小さな子供みたい。でも、私も思う通りのお芝居が出来なくていじけてるときあったなぁ。その時はお父さんとお母さんが頭撫でてくれてたっけ。
治「!」
紬「スペルミス以外、全部合ってるよ。すごいね」
そして、出来たところをちゃんと褒めてくれてた。そしたらちょっと嬉しいんだよね。治君も同じかは分からないけど。
治「っ!!」
バッと体を起こした治君。自然と離れてしまった。あ、お父さんたちは家族だし、私が治君にやるのとは違う。
紬「、ごめん、馴れ馴れしくしてしまいました」
治「ち、違うねん!ちょ、ちょっとびっくりしただけや」
さっきの侑君みたいにそっぽを向いてしまった治君。また倫君が動画に撮ってる。
侑「紬ちゃんは甘々やなぁ。それミスしてたのにご褒美あげたらあかんよー」
紬「ご褒美?」
ご褒美をあげたつもりはないんだけど。それからまた治君はやる気を出してた。集中すれば時間はあっという間に過ぎていく。気づけばもう8時を回っていた。
銀島「やべ、俺そろそろ帰るわ」
角名「俺も。侑たちは?」
侑「俺も帰るわ。腹減ってん」
治「バレーしてる時以上に腹減るよな。紬ちゃんは?帰らへんの?」
紬「うん、あと少しだけやってから帰るよ」
銀島「うはー、流石学年1位やな」
治「・・なら、俺も残る」
紬「え?」
治「俺おったら邪魔?」
紬「そ、そんなことないけど・・お腹減ってるんじゃない?」
治「飯食べたら寝てしまいそうやから、やっぱりやってく」
治君は本当に頑張り屋だ。
侑「なら先帰るでー」
治「おん」
侑「紬ちゃんありがとうな!明日もよろしゅう!」
紬「うん、また明日ね」
角名「帰り気を付けて」
紬「うん、倫君たちも」
銀島「治!ちゃんと紬ちゃん送って帰るんやで!」
治「わかっとる」
銀島「ならええ!じゃあな紬ちゃん」
紬「う、うん」
3人が教室を出ていってしまって、静かになった。
紬「治君、結君の言ってたこと気にしないで。終わったら好きなタイミングで帰っていいからね」
治「送る」
教科書から視線を離さずにそう言った治君に私はそれ以上何も言えなかった。
紬「・・うん、ここまで終わらせてればいいかな」
満足。時計を見れはすでに9時半過ぎ。やばい、学校がしまっちゃう。
紬「治く・・」
治君はいつの間にか、眠ってた。開いてたのは古文の教科書。
紬「・・治君」
このまま寝かせてあげたいけど、もう学校が閉まっちゃうし、ちゃんと布団で寝た方がいい。
紬「治君」
治「ん、、ん?」
少し体を揺らせばムクっと起き上がった治君。少し寝ぼけてるのかキョロキョロ周りを見回してた。それがちょっと可愛いかった。
紬「ふふ、おはよう」
治「・・!寝てもうてた!」
紬「きっと、疲れてたんだよ。家に帰ったらご飯たくさん食べてたくさん寝て」
治「ハイ、、」
紬「・・落ち込んでるの?まだ試験まで時間はあるよ」
治「ちゃう」
紬「?」
治「紬ちゃんが頑張ってる隣で、寝てしもたから、」
なんて言えばいいんだろう。上手く言えないけど
紬「でも、一緒にいてくれた」
治「!」
紬「侑君たちと帰ることもできたのに、いてくれた、のかな、って・・ちょっと思ったり」
いや、治君が食べたら寝てしまいそう、っていうのが本当の理由だと思うけど。
治「・・なんや、変なところ鋭いんやなぁ紬ちゃんは」
紬「!」
それって、肯定の意味なのかな。
治「忘れ物ない?」
紬「うん、大丈夫」
二人で学校を出た。外は真っ暗だけどお昼より断然涼しい。
治「試験終わったら夏休みやな。まぁ、俺らはずっと部活なんやけど。紬ちゃんは夏休み予定あるん?」
夏に予定は、これと言ってないかな。あ、でも
紬「クラスの人から海に誘われてたくらいかな?」
治「海?」
紬「うん。夏って言えば海だ、って」
治「行くん?」
紬「治君のおかげで少し泳げるようになったから、行ってみようかなぁ」
治「あかん」
紬「?」
治君が急に足を止めたことで、私も自然に足を止める。
紬「治君?」
治「・・海は波もあるし、プールとはちゃうやん?」
確かにそうかもしれない。また溺れたりしたら怖いし。
紬「うん、そうだね。もう少し泳げるようになってから行く。それに部活やってない人は夏期講習もあるし」
そうか、今年の夏はプールでも通って泳げるようになろうかな。
治「紬ちゃん」
治君は自然と家の方向に歩いてくれてる。彼も早く帰りたいはずなのに。
治「夏休み、よかったら、バレー見に来ん?」
紬「バレー・・」
治「I・H終わったら平日は学校の体育館で練習やし、その、勉強の気晴らし程度でええし」
紬「見てみたい」
治「!」
紬「でも、いいの?」
治「なにが?」
紬「真剣にやってる人達の所に、そんな感じで見に行っても・・」
治君は私の言葉に小さく笑った。
治「俺が、紬ちゃんに見に来て欲しいねん。だから、来て?」
な、なんだろう、心臓がどきどきした。
治「紬ちゃん?」
紬「う、うん。行かせていただきます」
まだ夏休みは先なのに、わくわくした。
侑「あかーん、もう無理や」
机に倒れてしまった侑君。彼が放課後、部活ではなく机に向かってるのはもうすぐ期末試験だから。
侑「紬ちゃーん、もう俺無理やー」
治「紬ちゃんに絡むんやない。自分で何とかせえや」
侑「何とかできたら俺はここにはおらん!」
角名「威張るなよ」
銀島「でもI・H前やのになぁ」
角名「俺ら学生だから仕方ないよ」
インハイ?
治「インターハイ。バレーボールの全国大会や」
私の表情から治君がそう説明したくれた。
紬「ぜ、全国、すごいね」
侑「稲荷崎は全国常連やで」
常連!?
侑「あーー、バレーしたい」
治「うっさいわ!言えば言うほどしたなるやろ!」
紬「侑君、」
侑「んー」
紬「出られなかった選手に失礼にならないように、何より、侑君が試合までに満足できる練習が出来るように、その、今、頑張ろう?」
侑「・・」
紬「侑君が分かるまで、教えさせて?」
侑君の隣に座って彼の手元を見てみる。ああ、確かにここは応用問題で難しいかもしれない。でも先生ここ何度も説明してたから出る可能性はあるんだよね。
侑「、、不可抗力や」
治「黙れクソツム」
紬「?」
そっぽを向いてしまった侑君。そんな彼を動画に収めてる倫君。銀島君は笑ってるし、治君は、怒ってる?
侑「あー、紬ちゃん」
紬「?」
侑「よろしくお願いします」
紬「!、うん。侑君、基本は出来てるから大丈夫だよ」
それから侑君はすぐにそれを解けるようになった。
侑「さっすが!俺!」
角名「紬がいたからでしょ」
紬「う、ううん、侑君の力だよ」
銀島「甘やかしたらあかんで」
倫君と結君に言い返してる侑君と反対側で治君が黙々と英語をやってた。でも、ピタリと止まった手。騒ぐ侑君の方を睨んでる。
紬「治君」
治「!」
私はチョコを治君の口に入れてあげた。
紬「ずっと頑張ってる、から」
治「、、美味い」
紬「生チョコ、作ったの」
治「・・紬ちゃん」
紬「なに?」
治君がその大きな体を少し倒して私をのぞき込む。その体制に少し心臓がうるさくなった気がした。
治「英語、全部終わってん。全部合ってたら、ご褒美くれへん?」
紬「ご褒美?」
侑「なんやそれ!俺も欲しい!」
治「お前は紬ちゃんに聞きながらやったやつやんか!」
ご褒美?生チョコはまだあるけど、
治「それ以外な」
紬「!」
それ、って指さされたのは生チョコを入れてたケース。でもこれ以外今日は持ってきてない。目の前で笑ってる治君はそれにきっと気づいてる。
治「丸付けして」
治君に手渡されたそれを、受けとる。
角名「紬、嫌なら断っていいんだよ。試験前に試験勉強するのなんて当たり前なんだから」
銀島「せや、甘えんな宮ツインズ」
侑・治「「こいつと一緒にすな!!」」
侑君に教えてる間に、結構な量を解いてた治君。うん、合ってる。前に説明した通りの解き方をしてくれてた。
紬「あ、」
治「?」
紬「、ここ、スペルミス」
治「嘘やん!!?」
侑「ざまーみろ!」
aと書くべきところをeにしてしまってる。それ以外は全部合ってた。
紬「惜しかったね」
がっくりと肩を落として先ほどの侑君みたいに机に伏してしまった。でも確かにこれだけちゃんと解けて一つのスペルミスはショックかもしれない。
治「・・・」
なんだか、小さな子供みたい。でも、私も思う通りのお芝居が出来なくていじけてるときあったなぁ。その時はお父さんとお母さんが頭撫でてくれてたっけ。
治「!」
紬「スペルミス以外、全部合ってるよ。すごいね」
そして、出来たところをちゃんと褒めてくれてた。そしたらちょっと嬉しいんだよね。治君も同じかは分からないけど。
治「っ!!」
バッと体を起こした治君。自然と離れてしまった。あ、お父さんたちは家族だし、私が治君にやるのとは違う。
紬「、ごめん、馴れ馴れしくしてしまいました」
治「ち、違うねん!ちょ、ちょっとびっくりしただけや」
さっきの侑君みたいにそっぽを向いてしまった治君。また倫君が動画に撮ってる。
侑「紬ちゃんは甘々やなぁ。それミスしてたのにご褒美あげたらあかんよー」
紬「ご褒美?」
ご褒美をあげたつもりはないんだけど。それからまた治君はやる気を出してた。集中すれば時間はあっという間に過ぎていく。気づけばもう8時を回っていた。
銀島「やべ、俺そろそろ帰るわ」
角名「俺も。侑たちは?」
侑「俺も帰るわ。腹減ってん」
治「バレーしてる時以上に腹減るよな。紬ちゃんは?帰らへんの?」
紬「うん、あと少しだけやってから帰るよ」
銀島「うはー、流石学年1位やな」
治「・・なら、俺も残る」
紬「え?」
治「俺おったら邪魔?」
紬「そ、そんなことないけど・・お腹減ってるんじゃない?」
治「飯食べたら寝てしまいそうやから、やっぱりやってく」
治君は本当に頑張り屋だ。
侑「なら先帰るでー」
治「おん」
侑「紬ちゃんありがとうな!明日もよろしゅう!」
紬「うん、また明日ね」
角名「帰り気を付けて」
紬「うん、倫君たちも」
銀島「治!ちゃんと紬ちゃん送って帰るんやで!」
治「わかっとる」
銀島「ならええ!じゃあな紬ちゃん」
紬「う、うん」
3人が教室を出ていってしまって、静かになった。
紬「治君、結君の言ってたこと気にしないで。終わったら好きなタイミングで帰っていいからね」
治「送る」
教科書から視線を離さずにそう言った治君に私はそれ以上何も言えなかった。
紬「・・うん、ここまで終わらせてればいいかな」
満足。時計を見れはすでに9時半過ぎ。やばい、学校がしまっちゃう。
紬「治く・・」
治君はいつの間にか、眠ってた。開いてたのは古文の教科書。
紬「・・治君」
このまま寝かせてあげたいけど、もう学校が閉まっちゃうし、ちゃんと布団で寝た方がいい。
紬「治君」
治「ん、、ん?」
少し体を揺らせばムクっと起き上がった治君。少し寝ぼけてるのかキョロキョロ周りを見回してた。それがちょっと可愛いかった。
紬「ふふ、おはよう」
治「・・!寝てもうてた!」
紬「きっと、疲れてたんだよ。家に帰ったらご飯たくさん食べてたくさん寝て」
治「ハイ、、」
紬「・・落ち込んでるの?まだ試験まで時間はあるよ」
治「ちゃう」
紬「?」
治「紬ちゃんが頑張ってる隣で、寝てしもたから、」
なんて言えばいいんだろう。上手く言えないけど
紬「でも、一緒にいてくれた」
治「!」
紬「侑君たちと帰ることもできたのに、いてくれた、のかな、って・・ちょっと思ったり」
いや、治君が食べたら寝てしまいそう、っていうのが本当の理由だと思うけど。
治「・・なんや、変なところ鋭いんやなぁ紬ちゃんは」
紬「!」
それって、肯定の意味なのかな。
治「忘れ物ない?」
紬「うん、大丈夫」
二人で学校を出た。外は真っ暗だけどお昼より断然涼しい。
治「試験終わったら夏休みやな。まぁ、俺らはずっと部活なんやけど。紬ちゃんは夏休み予定あるん?」
夏に予定は、これと言ってないかな。あ、でも
紬「クラスの人から海に誘われてたくらいかな?」
治「海?」
紬「うん。夏って言えば海だ、って」
治「行くん?」
紬「治君のおかげで少し泳げるようになったから、行ってみようかなぁ」
治「あかん」
紬「?」
治君が急に足を止めたことで、私も自然に足を止める。
紬「治君?」
治「・・海は波もあるし、プールとはちゃうやん?」
確かにそうかもしれない。また溺れたりしたら怖いし。
紬「うん、そうだね。もう少し泳げるようになってから行く。それに部活やってない人は夏期講習もあるし」
そうか、今年の夏はプールでも通って泳げるようになろうかな。
治「紬ちゃん」
治君は自然と家の方向に歩いてくれてる。彼も早く帰りたいはずなのに。
治「夏休み、よかったら、バレー見に来ん?」
紬「バレー・・」
治「I・H終わったら平日は学校の体育館で練習やし、その、勉強の気晴らし程度でええし」
紬「見てみたい」
治「!」
紬「でも、いいの?」
治「なにが?」
紬「真剣にやってる人達の所に、そんな感じで見に行っても・・」
治君は私の言葉に小さく笑った。
治「俺が、紬ちゃんに見に来て欲しいねん。だから、来て?」
な、なんだろう、心臓がどきどきした。
治「紬ちゃん?」
紬「う、うん。行かせていただきます」
まだ夏休みは先なのに、わくわくした。