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その気持ちを自覚する

角名side

角名「治、紬大丈夫だった?」

侑と一緒に部室に入ってきた治に聞けば、小さく頷いてた。

侑「帰りのホームルームに戻ってきたけど、ちょっと目が腫れとるくらいやったで」

角名「ならいいけど」

銀島「紬ちゃんどうかしたん?」

角名「今日のプールで溺れたんだよ」

銀島「え!?大丈夫やったん?」

角名「治が助けた」

侑「よう気付いたなぁサム」

治「せやろ」

角名「治が紬を保健室連れて行った後、女子がすごかったよ」

侑「アレ笑えたわ」

いや、別に笑えてはないけど。

侑「治君、ヒーローみたいやったね!、やと」

治「アホらし」

本当に興味なさそうに呟く治。

侑「侑君以外に怒鳴ってるところ初めて見た!、とも言ってたで」

治「それはその通りや」

銀島「え?治が怒鳴ったん?」

角名「うん、侑かと思ってた」

侑「俺がよく怒鳴ってるみたいな言い方やな」

角名「うん」

侑「否定しろや」

銀島「誰に怒鳴ったん?」

銀島の問いに侑がニヤニヤして答えた。

侑「紬ちゃんにや」

銀島「え?!」

うん、お前の反応は俺も分かる。

侑「怖がらせたんちゃう?」

治「ないな」

角名「すごい自信」

治「怖い奴にあんな引っ付かんやろ」

あ、今の表情、侑とそっくり。

銀島「引っ付いたん!?」

侑「そーやで!サムの奴、紬ちゃんにベタベタ触りよって!」

治「お前も触ったやろ」

侑「俺は背中だけや!」

治「角名も触ったし」

角名「俺は治が上着を着る間、ちょっと持ってただけ」

治「紬ちゃんは荷物ちゃうぞ」

なんだか、治ちょっと変?

侑「サム、お前怒ってんの?」

治「別に怒ってへんわ」

侑「アレやろ?好きな子をベタベタ触られて腹立ってるんやろ?」

また、治をからかう。前に一度同じネタで乱闘になったことがある。

治「せやな。だから怒ってるんと違う。腹立ってるだけや」

侑「ほらな~・・え!?」

え!?治が認めた?

治「なんやねん」

侑「お、おま、大丈夫か?!」

治「うるさいわ」

へぇ、治、本当に紬のこと好きなんだ。

治「・・なんや角名」

角名「いや、ちょっと残念だなって」

侑「!角名!お前も紬ちゃん好きなん!?」

角名「いや、好きじゃないけど」

好きまではいってない。いいな、とは思ってたけど。

治「・・」

あ、でも今ので治に敵認識されたかもしれない。

侑「まぁ、俺は分かっとったで。だって俺も紬ちゃん気に入っとるからな!俺が気に入ったもん、サムが嫌いなわけあらへんし」

治「アホか。お前が同じクラスやったいうだけや。後は全部俺の方が上や」

侑「はぁ!?」

いや、なんの喧嘩だよ。でも治の方がおっとりしてる様に見えて、やっぱり侑と同じDNA。負けず嫌いだ。

角名「それで、いつ自覚したの?」

治「あ!?死んでも言わん!!」

面白い。


週2である体育。治の告白を聞いてから案外この時間が楽しみだったりする。銀島は見れなくて悔しそうにしてたっけ。

侑「紬ちゃん、すごない?」

俺に耳打ちしてきた侑。

角名「確かに。前の授業で溺れたのに、普通にやるんだね」

侑「いや、それもなんやけど」

なんだ?侑の指さすほうを見てやっと意味が分かった。治の注意をしっかり頷いて聞いてる紬の姿あった。

角名「でもあれはどっちかというと、治がすごい」

侑「いやいや、あのサムを普通に受け入れてる紬ちゃんのがすごいで」

角名「治って好きな子にはどんな感じになるの?」

侑「知らん」

この双子、互いのこと知ってる事と知らない事が極端すぎないか?

侑「だって、サムが女の子好きになったことなんてあらへんし」

角名「!」

侑「あいつは飯とバレーで構成されとったからな。そこに出会って数か月で紬ちゃんは入り込んだんやで?」

角名「・・それは、紬がすごいな」

侑「せやろ?」

治「紬ちゃん、2コースよりこっち側には来たらあかんよ。紬ちゃんの身長やったら2コースまでや」

紬「うん」

治と紬のそのやり取りは同学年の間で有名になった。


侑「聞いてくれ角名ー!」

角名「なに?」

廊下を歩いてたら急に呼び止められた。あ、ここ侑のクラスか。

侑「またやりよる!」

侑の視線の先には、紬の席の前の椅子に座って、お菓子を食べてる治の姿。

角名「ああ、餌付けタイムね」

これも有名になりつつある。女子が広めたみたいだから、紬が治を誑かしてるみたいに聞こえるけど、逆。治が紬にたかってるだけ。

角名「侑ももらってくれば?」

侑「あとからサムがうっさい」

へぇ。あ、治こっち見た。治がべー、とこっちに向かってやってきたことで、侑がキレた。

侑「おいコラ、クソサム!!お前自分のクラス戻れやボケ!!」

治「休み時間にどこにおっても俺の勝手やろ、アホツム」

侑「紬ちゃんにたかるんヤメロや!!」

治「お前に関係あらへんし」

喧嘩が始まった。まぁ、でも紬いるし乱闘にはならないでしょ。

紬「お、治君、侑君、落ち着いて」

ちょっと同情するよ紬。でも、お前も嬉しそうだしいいよね。


紬side

治「紬ちゃん、今日甘い匂いしとる」

紬「くすぐったいよ、治君」

私の髪に指を通してそう呟いた治君。昨日作ったマフィンかな。

紬「、今日はマフィンだよ」

治「おお!」

机の上に出すと治君の目が輝く。本当に食べることが大好きみたい。

治「全部食べてええの?」

侑君の視線が痛い。

紬「、侑君にも」

侑「流石、紬ちゃんや!」

治「ツムのことなんてええのに」

侑「俺のことなんやと思てんのや!」

拗ねる治君ちょっと可愛い。

紬「でも、たくさん焼いたから」

侑「せやでサム。こういうのはみんなで食べるから美味いんや」

治「紬ちゃんのは一人で食っても美味いわ」

侑「サム!お前紬ちゃんのお菓子一人占めしたことあるんか!?」

治「お前が邪魔して来んかったらできとるわ!」

喧嘩しつつ、ちゃんと分けて食べてくれる。

治「!紬ちゃん、まだ髪濡れてるで」

結構拭いたんだけどな。

治「俺やりたい」

紬「え?」

治「ダメ?」

タオルで髪を拭いていたら、治君のこの申し出。ダメじゃないけど、気が引ける。でも私が返事する前に治君が私の手からタオルを取っていた。

治「痛かったら言うてな」

紬「う、うん」

なんだか、治君ちょっと変わった?気がする。

治「紬ちゃん、今日少し泳げとったな」

侑「俺も見たで!」

紬「少しだけど。ちゃんと足をバタバタさせたら進むようになったよ」

侑「足をバタバタ、そ、そうやな」

治「バタバタせな、進まんなっ」

紬「!わ、笑ってる」

2人して笑う。私おかしいこと言ったかな?

治「ええかな」

紬「ありがとう」

乾かしてくれた髪を手早く三つ編みする。

治「ん、いつもの紬ちゃんや」

クラスの人から髪を下ろした方がいいとか、眼鏡もやめた方がいいとか、たくさん言われたけど、治君たちは何も言わなかった。私も特に変えたいとは思ってないからそのまま。

紬「今年の間にもう少し泳げる様になる」

もう溺れないように。治君に怒鳴らせなくていいように。
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