その気持ちを自覚する
紬side
気が、重い。
母「!紬ちゃんの手作りクッキーがある!」
紬「食べていいよ」
母「わーい!あら、紬ちゃん、今日からプールなの?」
紬「うん」
母「今年は泳げるようになりたいね」
紬「・・うん」
母「ふふ、ほら!姿勢を正す!」
お母さんに背中を叩かれてしまった。地味に痛い。
母「お母さんに似てスタイルは良いんだから!」
紬「・・胸は大きくないけどね」
母「!紬ちゃんのバカ!パパ!」
あれ、お父さん今日はまだいたんだ。
母「パパ、紬ちゃんがママの胸小さいって!」
紬「いや、別に小さいなんて言ってないよ」
父「紬!ママに謝りなさい!」
紬「・・ごめんなさい」
父「ママの胸は美乳なんだから気にすることない。小さくもない」
母「パパ!」
お父さん、強面で何てこと言ってるの。朝からラブラブするのやめてほしいな。
父「紬、今日からプールなら、これを持って行きなさい」
紬「・・いや、これ」
父「何かあればそれを使うんだ」
父に渡されたのは木刀。無理だよ。使えないし。
父「紬、男の半径10メートル以内に入るなよ」
紬「無理でしょ」
父「だが」
母「パパ、紬ちゃんは頭がいいんだから、大丈夫よ」
お母さんがお父さんをおさめてくれてる間に行こう。
紬「行ってきます」
久々に朝いると思ったら、あれだ。仲がいいのはいいけど。
「今日の体育どうするん?」
「私は見学や!」
見学する子も多いみたい。私も見学したい・・でも、泳げるようにもなりたい。
「侑、おはようさん!」
「侑君、朝練お疲れ様!」
女の子たちに囲まれて教室まできた侑君。相変わらずすごい人気。
侑「紬ちゃん、おはようさん」
紬「、おはよう侑君」
侑君と話すのはだいぶ慣れてきたと思う。全部彼が気軽に声をかけて来てくれるからだけど。
侑「紬ちゃん、今日の体育するん?」
紬「?うん」
侑「サムが心配してたで」
治君が?あ、そうか。
紬「治君に、泳げないって話しちゃったから」
侑「いや、ちゃうけど」
紬「?」
侑「なんでもない」
?よくわからなかった。嫌な時間がくるのは早い。
「やっと体育や!」
「プール!」
盛り上がる男子とどこか落ち着かない女子。私もそのうちの一人。前の時間に日焼け止めを塗っておいて良かった。
「い、稲荷さん?」
!?
「稲荷さん、可愛えね!」
「いつもそうしてたらええのに!」
紬「、あ、ありがとう」
いつもの違う?髪型かな?
「というか、足長っ!」
「胸も結構あるんちゃう?」
紬「ふぇ!?」
「あはははは、可愛えなぁ」
ど、ドキドキする。心臓がいたい。私、今までにないぐらい女の子と話せてる!
「おぉ!女子来たで!」
「「「おぉぉぉ!!」」」
紬「!?」
び、びっくりした!知らない顔の人がたくさんいる。あ、そうか。プールの時間は他クラスと合同なんだった。
「男子キモイ!」
「向こう行ってや!」
浮き輪とか、ないよね。
治side
プールは1組から3組が一緒やから、ツムのと角名と一緒やねんな。
侑「さむ!!」
角名「確かにまだちょっと寒いよね」
「流石バレー部はみんなええ身体しとるな」
「腹筋われとるん?」
「サッカー部も負けてへんわ!」
腹減ってきたな。今日紬ちゃん何のお菓子持ってきてくれてんのやろ。
「おぉ女子来たで!」
その声で俺もそっちを見てしまった。頭では食い物のこと考えてても、そっち見てまうんやなぁ。
「おお、やっぱり稲荷崎の女子はレベル高いな!」
「それ俺も思た」
角名「あ」
治「どした角名」
角名「あれ紬じゃない?」
瞬時に角名の視線の先を見た。上でまとめられた髪型でうなじが見えとる。メガネも外しとるし。
侑「うわーアカン、紬ちゃんが一番」
角名「うん」
「ちょ、あれ誰なん?」
「え?わからん!」
周りの男子も紬ちゃんを見つけたらしい。でも普段の紬ちゃんからは想像もできんほど変わっとって気づいてないな。
侑「でももう少しおっぱいあってもええな」
治「ツム黙れ」
きょろきょろしとる紬ちゃん。たぶん浮き輪とか探してるんやろな。でもそんなんないで、流石に。
「ストレッチして入れよー!今日はとりあえず水に慣れることや!」
要は今日はテキトーやいうことやな。
「なぁ侑」
治「俺治や」
「治、あの子誰や?」
ツムのクラスの奴か?視線の先には紬ちゃん。
治「・・なんでや」
「あの子、可愛えやん。あんな子おったか?」
おったわ。お前の目が節穴なだけや。
「なぁ、治、知ってんなら教えてや」
治「ああ、あの子は・・」
ーー紬に彼氏ができたらーー
急に角名の言葉が胸に引っかかりよった。別に、紬ちゃんをそういう意味で好きやなんて思ってへん。思ってない・・はずや。
「治?」
治「!、あ、あの子は稲荷紬ちゃんや」
「え!?稲荷さん!?」
へー、と言って紬ちゃんに見とれとる奴。なんや、モヤつく。アカン、腹減ってるせいや。これが終われば昼休みで飯が食える。ザバザバと水に入って行くのを見とって、なんやそうめん食べたくなってきたな。
紬「治君」
治「!!」
ちょっと視線を下にやれば紬ちゃんがおった。腕も足も丸出し・・意外と胸あるんやな。
紬「、お腹減ったの?」
治「!わかるん?」
紬「やっぱり、雰囲気がおなか減ったなぁ、って言ってた」
そう言って笑う紬ちゃんはもう、めちゃくちゃ可愛いかった。犯罪級や。
侑「あー!サムが紬ちゃんとイチャついとる!!」
治「イチャついてへんわ!」
侑「!紬ちゃん、日焼け止めクリーム塗ったん?」
プールから俺らを見上げるツムの言葉にしゃがんで頷いた紬ちゃん。ツムからしたらえらいアングルになっとるんちゃうか?
侑「背中、白く残っとるよ」
紬「!」
侑「後ろ向いて」
紬「う、うん」
素直にツムに背中を向けた紬ちゃん。ここまで言われるがままにするんもすごいわ。警戒心とか皆無やな。
侑「紬ちゃん背中も綺麗やな」
紬「あ、侑君!」
からかわないで、そう言う紬ちゃんの反応がツムにとってはツボなんや。ツムが紬ちゃんの背中のクリームを延ばすのに触れた。
紬「ん」
侑・治「「!!」」
え?!なん、今の声・・・え!?
紬「?、侑君、出来た?」
侑「!あ、おん!もうええで!」
紬「ありがとう。私も、浅いところから入ってくる」
侑「気ぃつけてなー」
治「・・・」
侑「・・サム、不可抗力や」
治「あ?知ってますけど?」
侑「納得してへん顔やんけ!!」
治「納得できるか!なに気安く触れてんのや!」
侑「しゃーないやろ!」
分かっとる、ツムの手が冷たかったとか、そんなところやろ。ツムも別に他意があったわけやない
侑「紬ちゃんの肌すべすべや」
と思う、たぶん。なのに、なんでこんなイライラすんのや。
侑「・・・サム」
治「なんや」
侑「そろそろ認めろや」
治「あ?」
侑「お前、紬ちゃんのこと、好きなんやろ?」
好き?だいたい好きってどういうことや。
侑「まぁ、どうでもええけど。あんまり余裕かましてると取られんで」
ツムの言葉を耳で聞きながらも、水に足を付けて少しずつ歩いて進む紬ちゃんのことを目で追っとった。
「治君入らへんの?」
「治君も侑君も鍛えてるんやねー」
いつも間にか近くにおった女子。クラスも分からん。
「治君、こっち入らん?」
治「いや、そっち女子のコースやし」
侑「サムが女はキツイな」
「えー、ええやん」
紬ちゃん、泳げとるやろか。あれ?浅いとこおらへん。
紬「っ、たす、けて」
治「!」
侑「サム!?」
これだけ人数がおって、なぜか紬ちゃんの声だけが鮮明に聞こえた。水に飛び込んだことで、幾分か寒さがマシになった気がする。なんや、俺冷静やな。
ゴボっ
紬ちゃん!水中で手足をバタつかせて必死に主張しとるようやった。
紬「っ」
!アカン、もっと手足動かせや!!
ザパッ
治「っはぁはぁ」
紬「っゲホゲホ、っ」
治「アホ!!何してんねん!!」
紬「!」
俺に抱かれたまま、未だに息が荒い紬ちゃんに、俺は怒鳴っとった。
治「泳げへんのに、こんなとこまで来て、死ぬ気か!?」
周りが事態に気づいて騒ぎ出す。それでも俺の怒りは収まらんかった。
治「デカい声で、助け呼べや!!」
腕の中で俺の怒声を浴びながら息を整えとった紬ちゃんの目が赤くなっとった。
「!大丈夫か!!?」
先生もようやく紬ちゃんが溺れとったのに気づいたらしい。遅いわ。
紬「っ、ごめん、なさい」
俺の首に腕を回してしっかり掴まったまま、もたれて俺にだけ聞こえる声量で言った。
紬「ごめん、なさい」
声も体も震えとる。
治「・・もうええから、保健室行くか?」
首を横に振る紬ちゃん。俺はとりあえず、先生がおるところまで紬ちゃんを抱えたまま歩いた。
「宮、ありがとうな」
治「、いえ」
「稲荷、こっちこれるか?」
俺にしがみついたままの紬ちゃんに、先生は頭をかいた。
治「パニックになってるんやと思います。俺が保健室連れていきます」
「悪いな、宮。保健室の方には連絡入れとくわ。後で先生も行くから」
治「はい」
「おーい、お前ら少し散れ。それと場所をもっと譲れよ」
気が、重い。
母「!紬ちゃんの手作りクッキーがある!」
紬「食べていいよ」
母「わーい!あら、紬ちゃん、今日からプールなの?」
紬「うん」
母「今年は泳げるようになりたいね」
紬「・・うん」
母「ふふ、ほら!姿勢を正す!」
お母さんに背中を叩かれてしまった。地味に痛い。
母「お母さんに似てスタイルは良いんだから!」
紬「・・胸は大きくないけどね」
母「!紬ちゃんのバカ!パパ!」
あれ、お父さん今日はまだいたんだ。
母「パパ、紬ちゃんがママの胸小さいって!」
紬「いや、別に小さいなんて言ってないよ」
父「紬!ママに謝りなさい!」
紬「・・ごめんなさい」
父「ママの胸は美乳なんだから気にすることない。小さくもない」
母「パパ!」
お父さん、強面で何てこと言ってるの。朝からラブラブするのやめてほしいな。
父「紬、今日からプールなら、これを持って行きなさい」
紬「・・いや、これ」
父「何かあればそれを使うんだ」
父に渡されたのは木刀。無理だよ。使えないし。
父「紬、男の半径10メートル以内に入るなよ」
紬「無理でしょ」
父「だが」
母「パパ、紬ちゃんは頭がいいんだから、大丈夫よ」
お母さんがお父さんをおさめてくれてる間に行こう。
紬「行ってきます」
久々に朝いると思ったら、あれだ。仲がいいのはいいけど。
「今日の体育どうするん?」
「私は見学や!」
見学する子も多いみたい。私も見学したい・・でも、泳げるようにもなりたい。
「侑、おはようさん!」
「侑君、朝練お疲れ様!」
女の子たちに囲まれて教室まできた侑君。相変わらずすごい人気。
侑「紬ちゃん、おはようさん」
紬「、おはよう侑君」
侑君と話すのはだいぶ慣れてきたと思う。全部彼が気軽に声をかけて来てくれるからだけど。
侑「紬ちゃん、今日の体育するん?」
紬「?うん」
侑「サムが心配してたで」
治君が?あ、そうか。
紬「治君に、泳げないって話しちゃったから」
侑「いや、ちゃうけど」
紬「?」
侑「なんでもない」
?よくわからなかった。嫌な時間がくるのは早い。
「やっと体育や!」
「プール!」
盛り上がる男子とどこか落ち着かない女子。私もそのうちの一人。前の時間に日焼け止めを塗っておいて良かった。
「い、稲荷さん?」
!?
「稲荷さん、可愛えね!」
「いつもそうしてたらええのに!」
紬「、あ、ありがとう」
いつもの違う?髪型かな?
「というか、足長っ!」
「胸も結構あるんちゃう?」
紬「ふぇ!?」
「あはははは、可愛えなぁ」
ど、ドキドキする。心臓がいたい。私、今までにないぐらい女の子と話せてる!
「おぉ!女子来たで!」
「「「おぉぉぉ!!」」」
紬「!?」
び、びっくりした!知らない顔の人がたくさんいる。あ、そうか。プールの時間は他クラスと合同なんだった。
「男子キモイ!」
「向こう行ってや!」
浮き輪とか、ないよね。
治side
プールは1組から3組が一緒やから、ツムのと角名と一緒やねんな。
侑「さむ!!」
角名「確かにまだちょっと寒いよね」
「流石バレー部はみんなええ身体しとるな」
「腹筋われとるん?」
「サッカー部も負けてへんわ!」
腹減ってきたな。今日紬ちゃん何のお菓子持ってきてくれてんのやろ。
「おぉ女子来たで!」
その声で俺もそっちを見てしまった。頭では食い物のこと考えてても、そっち見てまうんやなぁ。
「おお、やっぱり稲荷崎の女子はレベル高いな!」
「それ俺も思た」
角名「あ」
治「どした角名」
角名「あれ紬じゃない?」
瞬時に角名の視線の先を見た。上でまとめられた髪型でうなじが見えとる。メガネも外しとるし。
侑「うわーアカン、紬ちゃんが一番」
角名「うん」
「ちょ、あれ誰なん?」
「え?わからん!」
周りの男子も紬ちゃんを見つけたらしい。でも普段の紬ちゃんからは想像もできんほど変わっとって気づいてないな。
侑「でももう少しおっぱいあってもええな」
治「ツム黙れ」
きょろきょろしとる紬ちゃん。たぶん浮き輪とか探してるんやろな。でもそんなんないで、流石に。
「ストレッチして入れよー!今日はとりあえず水に慣れることや!」
要は今日はテキトーやいうことやな。
「なぁ侑」
治「俺治や」
「治、あの子誰や?」
ツムのクラスの奴か?視線の先には紬ちゃん。
治「・・なんでや」
「あの子、可愛えやん。あんな子おったか?」
おったわ。お前の目が節穴なだけや。
「なぁ、治、知ってんなら教えてや」
治「ああ、あの子は・・」
ーー紬に彼氏ができたらーー
急に角名の言葉が胸に引っかかりよった。別に、紬ちゃんをそういう意味で好きやなんて思ってへん。思ってない・・はずや。
「治?」
治「!、あ、あの子は稲荷紬ちゃんや」
「え!?稲荷さん!?」
へー、と言って紬ちゃんに見とれとる奴。なんや、モヤつく。アカン、腹減ってるせいや。これが終われば昼休みで飯が食える。ザバザバと水に入って行くのを見とって、なんやそうめん食べたくなってきたな。
紬「治君」
治「!!」
ちょっと視線を下にやれば紬ちゃんがおった。腕も足も丸出し・・意外と胸あるんやな。
紬「、お腹減ったの?」
治「!わかるん?」
紬「やっぱり、雰囲気がおなか減ったなぁ、って言ってた」
そう言って笑う紬ちゃんはもう、めちゃくちゃ可愛いかった。犯罪級や。
侑「あー!サムが紬ちゃんとイチャついとる!!」
治「イチャついてへんわ!」
侑「!紬ちゃん、日焼け止めクリーム塗ったん?」
プールから俺らを見上げるツムの言葉にしゃがんで頷いた紬ちゃん。ツムからしたらえらいアングルになっとるんちゃうか?
侑「背中、白く残っとるよ」
紬「!」
侑「後ろ向いて」
紬「う、うん」
素直にツムに背中を向けた紬ちゃん。ここまで言われるがままにするんもすごいわ。警戒心とか皆無やな。
侑「紬ちゃん背中も綺麗やな」
紬「あ、侑君!」
からかわないで、そう言う紬ちゃんの反応がツムにとってはツボなんや。ツムが紬ちゃんの背中のクリームを延ばすのに触れた。
紬「ん」
侑・治「「!!」」
え?!なん、今の声・・・え!?
紬「?、侑君、出来た?」
侑「!あ、おん!もうええで!」
紬「ありがとう。私も、浅いところから入ってくる」
侑「気ぃつけてなー」
治「・・・」
侑「・・サム、不可抗力や」
治「あ?知ってますけど?」
侑「納得してへん顔やんけ!!」
治「納得できるか!なに気安く触れてんのや!」
侑「しゃーないやろ!」
分かっとる、ツムの手が冷たかったとか、そんなところやろ。ツムも別に他意があったわけやない
侑「紬ちゃんの肌すべすべや」
と思う、たぶん。なのに、なんでこんなイライラすんのや。
侑「・・・サム」
治「なんや」
侑「そろそろ認めろや」
治「あ?」
侑「お前、紬ちゃんのこと、好きなんやろ?」
好き?だいたい好きってどういうことや。
侑「まぁ、どうでもええけど。あんまり余裕かましてると取られんで」
ツムの言葉を耳で聞きながらも、水に足を付けて少しずつ歩いて進む紬ちゃんのことを目で追っとった。
「治君入らへんの?」
「治君も侑君も鍛えてるんやねー」
いつも間にか近くにおった女子。クラスも分からん。
「治君、こっち入らん?」
治「いや、そっち女子のコースやし」
侑「サムが女はキツイな」
「えー、ええやん」
紬ちゃん、泳げとるやろか。あれ?浅いとこおらへん。
紬「っ、たす、けて」
治「!」
侑「サム!?」
これだけ人数がおって、なぜか紬ちゃんの声だけが鮮明に聞こえた。水に飛び込んだことで、幾分か寒さがマシになった気がする。なんや、俺冷静やな。
ゴボっ
紬ちゃん!水中で手足をバタつかせて必死に主張しとるようやった。
紬「っ」
!アカン、もっと手足動かせや!!
ザパッ
治「っはぁはぁ」
紬「っゲホゲホ、っ」
治「アホ!!何してんねん!!」
紬「!」
俺に抱かれたまま、未だに息が荒い紬ちゃんに、俺は怒鳴っとった。
治「泳げへんのに、こんなとこまで来て、死ぬ気か!?」
周りが事態に気づいて騒ぎ出す。それでも俺の怒りは収まらんかった。
治「デカい声で、助け呼べや!!」
腕の中で俺の怒声を浴びながら息を整えとった紬ちゃんの目が赤くなっとった。
「!大丈夫か!!?」
先生もようやく紬ちゃんが溺れとったのに気づいたらしい。遅いわ。
紬「っ、ごめん、なさい」
俺の首に腕を回してしっかり掴まったまま、もたれて俺にだけ聞こえる声量で言った。
紬「ごめん、なさい」
声も体も震えとる。
治「・・もうええから、保健室行くか?」
首を横に振る紬ちゃん。俺はとりあえず、先生がおるところまで紬ちゃんを抱えたまま歩いた。
「宮、ありがとうな」
治「、いえ」
「稲荷、こっちこれるか?」
俺にしがみついたままの紬ちゃんに、先生は頭をかいた。
治「パニックになってるんやと思います。俺が保健室連れていきます」
「悪いな、宮。保健室の方には連絡入れとくわ。後で先生も行くから」
治「はい」
「おーい、お前ら少し散れ。それと場所をもっと譲れよ」