無印

『兄貴!』
「……ぇ、アツ、ヤ……?」

僕は訳が分からなかった。
何で? どうして?

アツヤが僕を呼んだ。はっきり、そう聞こえたんだ、兄貴って。

「アツヤ、本当は死んでないんだろ!?」

僕は夢中になって声を張り上げた。気のせいだと思いたくなかった。

「みんなで僕をからかってるだけなんだろ!?」

お医者さんとか、看護師さんとかたくさんの大人が駆けつけてきた。
夢なの? だったら、醒めてよ……

「ねえ! アツヤ!」
「もうアツヤくんは……」
「信じたいのはわかるけど、」

うるさい。うるさいよ。アツヤの声が聞こえないでしょ?

『兄貴』
「アツ、ヤ……」

思わず涙がこぼれる。
だって今、心の中から、聞こえてきたんだ。アツヤの声が。

『オレ、まだいるよ』

心に直接響く声。
あぁ。なんだ。アツヤは死んでいない。僕の中に居るんだ。

窓を見ると、鏡のように映ったアツヤが見えた気がした。

「”兄貴”」

そう口に出すと、アツヤがまた居なくなった。
でも、きっと僕が元気になったらまた、迎えに来てくれるよね?
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