GO

がらり。

「…、音無先せ…、」
「っふ、…、ぅ……、ぁ、神童く…、ごめんなさい、ちょっと待ってて…」

音無先生に用があって尋ねてみると、先生は、部屋の外からは見えず、聞こえない位置で泣きじゃくっていた。俺は、待ってて、の言葉を無視して隣に座った。

「……大丈夫ですか?」
「何、でもないの……っごめんね……」

涙を、何度も何度も拭って言った。

……あなたにとって俺は、ただの生徒なんですか。

「何でもない訳ないじゃありませんか……。そんな、大丈夫そうじゃないのに……」
「だ、大丈夫よ、これくらい……、」

そういって先生は気丈に振る舞おうとする。
……でも。

「涙、溢れてます、」
「……ぁ、」

その言葉を引き金に、先生は大粒の涙をこぼし始めた。
声を上げずに泣く先生に、見惚れないはずがない。

「……、泣きたかったら、ちゃんと泣いてください」
「神童、くん…… でも、」

彼女はまだ先生と生徒という関係を気にしているらしい。
そこで俺は、強行突破を図る。ぎゅ、と抱き着いてみた。

「えっ」
「俺は受け止めて見せますから。 ……だって、俺は、」

そこで、口をつぐむ。
それ以上言ったら、余計に彼女が遠くなってしまいそうで。

「……、心配させてごめんなさい」

そう言って俺に笑顔を向けた。そして優しく頭を撫でる。
何も知らない子どもみたいに、俺は黙って目を瞑ってそれを受け入れた。

__先生には、付き合っている人がいるらしい。しかし、心が離れそうで怖いのだと、そう零してくれた。



俺なら貴女を悲しませたりしないのに

(その言葉を、ぐっと喉の奥に押し込んだ)
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