春風が連れてくる
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「ねぇ、音無にお姉さんって居たの?」
「うん。 あれ、言ってなかったっけ?」
「えー、言ってくださいッスよ」
「ごめんごめん、」
私は現在、質問攻めにあっている。
お姉ちゃんはあまり目立つタイプじゃないから、私が口に出さなければ分からないと思う。
しかも私とは全く正反対のタイプでうるさくもないし。
「あれ、でもこの前3年の順位表に載ってたよね? 音無ってあったから、覚えてたけど」
「うん、そう。 お姉ちゃん」
「へー、音無似てないんだな、いって」
「うるさいな、似てなくて悪かったねーだ」
昔からよく言われてた。
って言っても小学生くらいからかな。
その度にお姉ちゃんは、私に向かってこう言ってくれた。
《姉妹だからって似てなきゃいけないわけじゃない。似てなくても私たちは姉妹だよ。》
何度、その言葉に救われたことだろう。
泣いちゃったときは、何度だって抱きしめてくれた。
頭がよくて優しくて綺麗な、私の自慢のお姉ちゃん。
「ねぇ、そのお姉さん連れてきてよ、屋上」
「へ?」
突然言われて、私はびっくりした。
…まさか、あのサッカー部が昼休みにたまに集まっている屋上、ってこと?
「きれーだったでヤンスし!」
「私は美人じゃなくて悪かったわね!」
「ちが、そういう意味じゃないよ! ただ音無ってほら、鬼道さんと兄妹じゃん? …だから、その…」
「…分かった、呼べばいいんでしょ?」
「わーい!」
…美人に弱いやつらめ。
というわけで、私はお姉ちゃんを3年の教室まで呼びに行くことになったのでした。
__「え、いいの? 私サッカー部でも何でもないのに」
「いいのいいの! 私お姉ちゃんと一緒にご飯食べたいし」
「? うん…」
春奈ちゃんが嬉しそうにぱあ、と表情を明るくさせた。
私は友達に向かって苦笑しながら謝り、屋上へ一緒に向かうことになった。
「ごめんなさい、無理矢理だったみたいで」
「気にしないで。私もサッカー部に加われるなんて嬉しいし」
「ありがとう、お姉ちゃん。 その…実は、私のクラスメイトがどうしてもって…」
「え? そうなの?」
驚いた。
私なんて誰も知らないと思った。
ふと、先を歩いていた春奈ちゃんがこちらに振り向き、
「ちゃんと気をつけなきゃ駄目だよ! お姉ちゃん綺麗だしモテるんだから!」
「え、」
「いい?」
「…あ、うん…?」
有無を言わせぬ表情でこちらを見ていたので、私は思わず頷いてしまった。
すると満足そうに微笑み、階段を軽やかに上っていった。
…私は綺麗でもないし、モテもしないんだけどなぁ。
内心そう思いながら、一人苦笑しながら春奈ちゃんの後ろをついて行った。
がちゃ、ぎぃい。
屋上の扉が軋んで何とも言えない音を立てた。
まさにひらがなでぎぃい、といった音だ。
…初めて屋上に来たかもしれない。
「お、音無じゃないか。遅かったな」
「はい、すいませんでした」
そう言ったのは、朝練の時に私が声をかけた少年だった。
春奈ちゃんは申し訳なさそうに笑って、それから私を紹介した。
「私のお姉ちゃんです! 今日一緒に食べてもいいですか?」
「おう、もちろんだ! 先輩、ですよね?」
オレンジ色のバンダナを巻いた人が、にかっと笑いかけてきた。
えっと、確か彼がサッカー部のキャプテン。
どうやら敬語に違和感があるようで、変な顔をしながら私にそう聞いてきた。
笑いを噛み殺し、軽く会釈をした。
「はい、音無理桜といいます。よろしくお願いします」
「へー…」
「お姉ちゃん、こっちで食べよう?」
春奈ちゃんがひょこひょこ跳ねながら手招きをしている。
何の疑いもなく来てしまったけど、いいんだろうか、これ。
と、思いながら勧められるまま座った次の瞬間、目の前に男子がいた。
それも、ゴーグルをかけている、妙なひと。
お互い、ぴしりという効果音とともに固まってしまう。
「「!?」」
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、会うのは初めてだよね?」
春奈ちゃんの一言で、ようやく我に返る。
あ、そういうことだったんだ。
もしかして、会わせたかったからかな。
そういえば春奈ちゃん言ってたなぁ、サッカー部だって。
「あ、そうですか。初めまして、」
「は、初めまして。俺は鬼道有人と言います」
丁寧に挨拶をしてくれた。
何だか不思議だ、この関係。
実の兄妹と義理の姉妹がここに居るという…うわぁ、分かりにくい。
「お兄ちゃん堅苦しいね、何か違和感がある」
「そ、うか?」
血が繋がっているからか、それとも苦しい時間を支え合いながら生きてきたからか、とても仲がいい。
微笑ましい感じがして、ふわふわとしたものが辺りに散っているようだ。
二人とも年下だからか、とても可愛い。
「あ、ご飯食べよ」
「うん、そうだね」
柔らかな日差しに、みんなのはしゃぐ声。
楽しすぎて、ここに居たら居心地が良すぎて離れられなくなりそうだ。
「貴女みたいな人が春奈のお姉さんで本当に良かったと思います」
「え? あ、ありがとう」
「ちょ、お兄ちゃん、さっきから変だよー」
春奈ちゃんが少し慌てて鬼道くんにそう言っている。
そのまま会話を続けて、よく笑う二人。
こうして見ていると、本当にお互い大切に思ってるんだな、と思う。
と、ふと腕時計を見ると、時刻が近づいてきていた。
次は、あ、移動教室だ。
「ごめんね、春奈ちゃん。もう行かなくちゃ。誘ってくれてありがとう、楽しかった」
「え、あ、ごめんなさい、気付かなくって、」
「ううん、気にしないで。じゃあもう行くね、ありがとう」
「うん!」
ふわりと風が吹き、私の髪がなびく。
しあわせだな、って、ふとそう感じた。
__「綺麗な人だねぇ」
「そりゃもう! 私の自慢のお姉ちゃんですから!」
マックスたちが春奈と喋っている。
内容は、先ほどの理桜さん…、いや先輩の話題だ。
俺もやはり、綺麗だと思った。
そして、どことなく春奈に似ているような話し方だとも感じた。
「さっきから鬼道くんとしか喋ってなかったしね、僕たちにも喋らせてほしかったよ」
「え、」
まさか矛先が俺に向くとは。
そんなに言うならこちらへ来れば良かっただろうに。
「あ、じゃあ今度サッカー部の練習に誘ってみますね」
「え、本当か!」
「ずっと笑ってくれてましたし、きっといいって言ってくれると思います」
ふわり、と笑う。彼女はそんな感じだった。
ずっとにこにことして俺たちを見ていた。
俺たちが彼女の瞳にどんな風に映っていたのかは分からないが、楽しそうにしていた。
そして、三人で話しているときに居心地が良く感じたのは、俺も同じだった。
「鬼道?」
「え、」
「どうか、したか?」
豪炎寺が不思議そうにこちらを見ている。
変な顔でもしていたんだろうか。
「別に、」
「そうか。ならいいんだが」
気遣うようにこちらを少し見やり、また会話へと戻っていった。
彼の問いかけに俺は何だかどきりとしたのだが、どうしてだったのだろうか。
「うん。 あれ、言ってなかったっけ?」
「えー、言ってくださいッスよ」
「ごめんごめん、」
私は現在、質問攻めにあっている。
お姉ちゃんはあまり目立つタイプじゃないから、私が口に出さなければ分からないと思う。
しかも私とは全く正反対のタイプでうるさくもないし。
「あれ、でもこの前3年の順位表に載ってたよね? 音無ってあったから、覚えてたけど」
「うん、そう。 お姉ちゃん」
「へー、音無似てないんだな、いって」
「うるさいな、似てなくて悪かったねーだ」
昔からよく言われてた。
って言っても小学生くらいからかな。
その度にお姉ちゃんは、私に向かってこう言ってくれた。
《姉妹だからって似てなきゃいけないわけじゃない。似てなくても私たちは姉妹だよ。》
何度、その言葉に救われたことだろう。
泣いちゃったときは、何度だって抱きしめてくれた。
頭がよくて優しくて綺麗な、私の自慢のお姉ちゃん。
「ねぇ、そのお姉さん連れてきてよ、屋上」
「へ?」
突然言われて、私はびっくりした。
…まさか、あのサッカー部が昼休みにたまに集まっている屋上、ってこと?
「きれーだったでヤンスし!」
「私は美人じゃなくて悪かったわね!」
「ちが、そういう意味じゃないよ! ただ音無ってほら、鬼道さんと兄妹じゃん? …だから、その…」
「…分かった、呼べばいいんでしょ?」
「わーい!」
…美人に弱いやつらめ。
というわけで、私はお姉ちゃんを3年の教室まで呼びに行くことになったのでした。
__「え、いいの? 私サッカー部でも何でもないのに」
「いいのいいの! 私お姉ちゃんと一緒にご飯食べたいし」
「? うん…」
春奈ちゃんが嬉しそうにぱあ、と表情を明るくさせた。
私は友達に向かって苦笑しながら謝り、屋上へ一緒に向かうことになった。
「ごめんなさい、無理矢理だったみたいで」
「気にしないで。私もサッカー部に加われるなんて嬉しいし」
「ありがとう、お姉ちゃん。 その…実は、私のクラスメイトがどうしてもって…」
「え? そうなの?」
驚いた。
私なんて誰も知らないと思った。
ふと、先を歩いていた春奈ちゃんがこちらに振り向き、
「ちゃんと気をつけなきゃ駄目だよ! お姉ちゃん綺麗だしモテるんだから!」
「え、」
「いい?」
「…あ、うん…?」
有無を言わせぬ表情でこちらを見ていたので、私は思わず頷いてしまった。
すると満足そうに微笑み、階段を軽やかに上っていった。
…私は綺麗でもないし、モテもしないんだけどなぁ。
内心そう思いながら、一人苦笑しながら春奈ちゃんの後ろをついて行った。
がちゃ、ぎぃい。
屋上の扉が軋んで何とも言えない音を立てた。
まさにひらがなでぎぃい、といった音だ。
…初めて屋上に来たかもしれない。
「お、音無じゃないか。遅かったな」
「はい、すいませんでした」
そう言ったのは、朝練の時に私が声をかけた少年だった。
春奈ちゃんは申し訳なさそうに笑って、それから私を紹介した。
「私のお姉ちゃんです! 今日一緒に食べてもいいですか?」
「おう、もちろんだ! 先輩、ですよね?」
オレンジ色のバンダナを巻いた人が、にかっと笑いかけてきた。
えっと、確か彼がサッカー部のキャプテン。
どうやら敬語に違和感があるようで、変な顔をしながら私にそう聞いてきた。
笑いを噛み殺し、軽く会釈をした。
「はい、音無理桜といいます。よろしくお願いします」
「へー…」
「お姉ちゃん、こっちで食べよう?」
春奈ちゃんがひょこひょこ跳ねながら手招きをしている。
何の疑いもなく来てしまったけど、いいんだろうか、これ。
と、思いながら勧められるまま座った次の瞬間、目の前に男子がいた。
それも、ゴーグルをかけている、妙なひと。
お互い、ぴしりという効果音とともに固まってしまう。
「「!?」」
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、会うのは初めてだよね?」
春奈ちゃんの一言で、ようやく我に返る。
あ、そういうことだったんだ。
もしかして、会わせたかったからかな。
そういえば春奈ちゃん言ってたなぁ、サッカー部だって。
「あ、そうですか。初めまして、」
「は、初めまして。俺は鬼道有人と言います」
丁寧に挨拶をしてくれた。
何だか不思議だ、この関係。
実の兄妹と義理の姉妹がここに居るという…うわぁ、分かりにくい。
「お兄ちゃん堅苦しいね、何か違和感がある」
「そ、うか?」
血が繋がっているからか、それとも苦しい時間を支え合いながら生きてきたからか、とても仲がいい。
微笑ましい感じがして、ふわふわとしたものが辺りに散っているようだ。
二人とも年下だからか、とても可愛い。
「あ、ご飯食べよ」
「うん、そうだね」
柔らかな日差しに、みんなのはしゃぐ声。
楽しすぎて、ここに居たら居心地が良すぎて離れられなくなりそうだ。
「貴女みたいな人が春奈のお姉さんで本当に良かったと思います」
「え? あ、ありがとう」
「ちょ、お兄ちゃん、さっきから変だよー」
春奈ちゃんが少し慌てて鬼道くんにそう言っている。
そのまま会話を続けて、よく笑う二人。
こうして見ていると、本当にお互い大切に思ってるんだな、と思う。
と、ふと腕時計を見ると、時刻が近づいてきていた。
次は、あ、移動教室だ。
「ごめんね、春奈ちゃん。もう行かなくちゃ。誘ってくれてありがとう、楽しかった」
「え、あ、ごめんなさい、気付かなくって、」
「ううん、気にしないで。じゃあもう行くね、ありがとう」
「うん!」
ふわりと風が吹き、私の髪がなびく。
しあわせだな、って、ふとそう感じた。
__「綺麗な人だねぇ」
「そりゃもう! 私の自慢のお姉ちゃんですから!」
マックスたちが春奈と喋っている。
内容は、先ほどの理桜さん…、いや先輩の話題だ。
俺もやはり、綺麗だと思った。
そして、どことなく春奈に似ているような話し方だとも感じた。
「さっきから鬼道くんとしか喋ってなかったしね、僕たちにも喋らせてほしかったよ」
「え、」
まさか矛先が俺に向くとは。
そんなに言うならこちらへ来れば良かっただろうに。
「あ、じゃあ今度サッカー部の練習に誘ってみますね」
「え、本当か!」
「ずっと笑ってくれてましたし、きっといいって言ってくれると思います」
ふわり、と笑う。彼女はそんな感じだった。
ずっとにこにことして俺たちを見ていた。
俺たちが彼女の瞳にどんな風に映っていたのかは分からないが、楽しそうにしていた。
そして、三人で話しているときに居心地が良く感じたのは、俺も同じだった。
「鬼道?」
「え、」
「どうか、したか?」
豪炎寺が不思議そうにこちらを見ている。
変な顔でもしていたんだろうか。
「別に、」
「そうか。ならいいんだが」
気遣うようにこちらを少し見やり、また会話へと戻っていった。
彼の問いかけに俺は何だかどきりとしたのだが、どうしてだったのだろうか。