無印
視界の端に、少々遠慮がちに口を開けてあくびをし、若干潤んだ目で黒板をぼんやり見つめている佐久間が映る。
それを見て、学校でこんなに緊張感のない佐久間は珍しいなと思いながら、やっぱり俺の恋人は可愛いと思う。
ああ、でもダメだ。いつもとは違う気の緩んだ姿に何人かが惚けている。
いつも黄色い声を上げてはしゃいでいる女子も、可愛さに気付いてしまって言葉も出ない様子だ。
隣の男子も目を奪われたように動かない。今、生唾を飲み込んでいるのが見えた。
そんな様子はあまり面白くないし、多少嫉妬心がわき上がる。
ただ、それでも、佐久間の良さがかっこよさだけに留まらないことに気付いてくれることに嬉しさを覚えるのだ。
本妻の余裕、というやつなのだろうか。…いや、俺は旦那だが。
とにかく俺は、残念だったな、こいつはもう俺の物なんだと叫び出したくなるような、優越感と焦燥感を覚えたのだった。
…やっぱり、その顔は俺の前だけにしてほしい。
__授業が終わり、みんながいそいそと部活へ向かう。
俺はスクールバッグを片付け、そしてとうとう机に突っ伏してしまった佐久間の代わりに道具を準備してやる。
ベタベタに甘やかしてやるのが好きな俺としては、いつも嫌がられてやれない分、ここぞとばかりに完璧に身の回りを整えてやる。
「んぅ… あれ、源田…? いま、何時だ…」
「おはよう佐久間。 17時前くらいだな」
俺の返答に、佐久間の顔からさあっと血の気が引いていく。
いつもなら17時からウォーミングアップだが、生徒会からの要請で鬼道と総帥が、加えて補修に引っかかった辺見と咲山がおらず、更に風紀委員から何やら苦情の来ていた不動と成神が連れて行かれたということで、急遽18時から練習開始となっている。…のを、きっと佐久間は忘れているのだろう。
「な、何で起こしてくれなかったんだ!」
「寝顔可愛かったぞ」
「バカ!」
青くなったり赤くなったり佐久間は忙しい。
慌てて駆け出そうとしたので、制して練習開始時刻が遅くなった旨を伝えると、また真っ赤になった。可愛い。
「そ、そういうことは早く言え!」
「寝不足で聞いてなかった佐久間が悪いんだけどな」
うぐ、と言葉に詰まる佐久間。もごもごと、だってお前が、と口の中で何やら言い訳をしている。
そんな佐久間に目線を合わせて、ん?とはっきり言えと促すと、羞恥に目元を赤くしながら、俺にだけはっきりと聞こえる程度の小声でこう言った。
「お前が、寝かせてくれないから…っ」
心臓を撃ち抜かれた音がした。
何だこの可愛い生き物は。
俺が放心している隙を突いてぱっと離れると、俺が用意した道具一式を引っつかんで駆け出していった。銀色に光る髪の毛がふわりとたなびいて、それすらも俺の網膜に焼き付いて離れない。
結論:やっぱり俺の恋人は可愛い
(本論は割愛とする)
それを見て、学校でこんなに緊張感のない佐久間は珍しいなと思いながら、やっぱり俺の恋人は可愛いと思う。
ああ、でもダメだ。いつもとは違う気の緩んだ姿に何人かが惚けている。
いつも黄色い声を上げてはしゃいでいる女子も、可愛さに気付いてしまって言葉も出ない様子だ。
隣の男子も目を奪われたように動かない。今、生唾を飲み込んでいるのが見えた。
そんな様子はあまり面白くないし、多少嫉妬心がわき上がる。
ただ、それでも、佐久間の良さがかっこよさだけに留まらないことに気付いてくれることに嬉しさを覚えるのだ。
本妻の余裕、というやつなのだろうか。…いや、俺は旦那だが。
とにかく俺は、残念だったな、こいつはもう俺の物なんだと叫び出したくなるような、優越感と焦燥感を覚えたのだった。
…やっぱり、その顔は俺の前だけにしてほしい。
__授業が終わり、みんながいそいそと部活へ向かう。
俺はスクールバッグを片付け、そしてとうとう机に突っ伏してしまった佐久間の代わりに道具を準備してやる。
ベタベタに甘やかしてやるのが好きな俺としては、いつも嫌がられてやれない分、ここぞとばかりに完璧に身の回りを整えてやる。
「んぅ… あれ、源田…? いま、何時だ…」
「おはよう佐久間。 17時前くらいだな」
俺の返答に、佐久間の顔からさあっと血の気が引いていく。
いつもなら17時からウォーミングアップだが、生徒会からの要請で鬼道と総帥が、加えて補修に引っかかった辺見と咲山がおらず、更に風紀委員から何やら苦情の来ていた不動と成神が連れて行かれたということで、急遽18時から練習開始となっている。…のを、きっと佐久間は忘れているのだろう。
「な、何で起こしてくれなかったんだ!」
「寝顔可愛かったぞ」
「バカ!」
青くなったり赤くなったり佐久間は忙しい。
慌てて駆け出そうとしたので、制して練習開始時刻が遅くなった旨を伝えると、また真っ赤になった。可愛い。
「そ、そういうことは早く言え!」
「寝不足で聞いてなかった佐久間が悪いんだけどな」
うぐ、と言葉に詰まる佐久間。もごもごと、だってお前が、と口の中で何やら言い訳をしている。
そんな佐久間に目線を合わせて、ん?とはっきり言えと促すと、羞恥に目元を赤くしながら、俺にだけはっきりと聞こえる程度の小声でこう言った。
「お前が、寝かせてくれないから…っ」
心臓を撃ち抜かれた音がした。
何だこの可愛い生き物は。
俺が放心している隙を突いてぱっと離れると、俺が用意した道具一式を引っつかんで駆け出していった。銀色に光る髪の毛がふわりとたなびいて、それすらも俺の網膜に焼き付いて離れない。
結論:やっぱり俺の恋人は可愛い
(本論は割愛とする)
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