6.夜明け前の共鳴
しばらくの間、実験室には薬草の香りと、少年の荒い呼吸だけが響いていた。
ライは身を起こそうとするが、力が入らず再び実験台へ倒れ込む。獣耳が小さく震えた。
「無理に動けば傷が開くわ」
ヒイロは棚へ薬瓶を戻しながら淡々と言う。
「もっともライがそれで構わないなら止めないけれど」
ライは緑色の瞳で彼女を見つめた。
警戒、恐怖、そして困惑。
ようやく掠れた声が漏れる。
「……ボクは……追われてるんだ」
「誰に」
「ハンター……」
ライは小さく息を吐く。
「ずっと追われてる……。逃げても逃げても追ってきて……仲間も、みんな……」
言葉はそこで途切れた.
ヒイロは表情一つ変えずに聞いている。
「人間は……ニホンオオカミは絶滅したって言ってた。だから珍しいから狩るんだって……」
ライは拳を握る。
「なるほど。絶滅したはずの希少種だもの。売れば大金になるとでも考えたのね」
ライは黙って頷いた。
バッドが腕を組んだまま鼻で笑う。
「人間ってのは昔から変わらねぇな」
ヒイロはライを見据えた。
「それで?どうするの」
ライは戸惑う。
「……え?」
「追われている話は聞いたわ。それであなたは私に何を望むの?」
ライは視線を伏せる。
唇を噛み締め、震える声を絞り出した。
「……ここに置いてほしい」
「嫌よ」
即答だった。
ライの肩がびくりと震える。
「この館は避難所じゃないのよ」
静かな声だったが、拒絶には迷いがない。
沈黙が落ちる。
やがてヒイロはライを観察するように眺めた。
獣耳、身体能力、絶滅種。どれも興味深い。
「……ただライに価値があるなら話は別だけど?」
ライが顔を上げる。
バッドが口元を緩めた。
「始まったな」
ヒイロは構わず続ける。
「薬草採取、力仕事、護衛。私の実験への協力。役に立つなら置いてあげるわよ」
一つずつ指を折って数える。
ライは言葉を失う。
「もちろん食事も寝床も無料じゃない。働いて返してもらうわ」
理不尽な要求や屈辱的な条件を覚悟していたライは、そのあまりにも事務的な条件に拍子抜けした。
「……それだけ?」
思わずライが聞き返した。
ヒイロは首を傾げる。
「それ以上、何を期待したの?」
その問いにライは答えられなかった。
少し考えた末、小さく頷く。
「……やる」
その瞳にはまだ恐怖が残っている。
それでも、生きるための決意だけは消えていなかった。
ライは身を起こそうとするが、力が入らず再び実験台へ倒れ込む。獣耳が小さく震えた。
「無理に動けば傷が開くわ」
ヒイロは棚へ薬瓶を戻しながら淡々と言う。
「もっともライがそれで構わないなら止めないけれど」
ライは緑色の瞳で彼女を見つめた。
警戒、恐怖、そして困惑。
ようやく掠れた声が漏れる。
「……ボクは……追われてるんだ」
「誰に」
「ハンター……」
ライは小さく息を吐く。
「ずっと追われてる……。逃げても逃げても追ってきて……仲間も、みんな……」
言葉はそこで途切れた.
ヒイロは表情一つ変えずに聞いている。
「人間は……ニホンオオカミは絶滅したって言ってた。だから珍しいから狩るんだって……」
ライは拳を握る。
「なるほど。絶滅したはずの希少種だもの。売れば大金になるとでも考えたのね」
ライは黙って頷いた。
バッドが腕を組んだまま鼻で笑う。
「人間ってのは昔から変わらねぇな」
ヒイロはライを見据えた。
「それで?どうするの」
ライは戸惑う。
「……え?」
「追われている話は聞いたわ。それであなたは私に何を望むの?」
ライは視線を伏せる。
唇を噛み締め、震える声を絞り出した。
「……ここに置いてほしい」
「嫌よ」
即答だった。
ライの肩がびくりと震える。
「この館は避難所じゃないのよ」
静かな声だったが、拒絶には迷いがない。
沈黙が落ちる。
やがてヒイロはライを観察するように眺めた。
獣耳、身体能力、絶滅種。どれも興味深い。
「……ただライに価値があるなら話は別だけど?」
ライが顔を上げる。
バッドが口元を緩めた。
「始まったな」
ヒイロは構わず続ける。
「薬草採取、力仕事、護衛。私の実験への協力。役に立つなら置いてあげるわよ」
一つずつ指を折って数える。
ライは言葉を失う。
「もちろん食事も寝床も無料じゃない。働いて返してもらうわ」
理不尽な要求や屈辱的な条件を覚悟していたライは、そのあまりにも事務的な条件に拍子抜けした。
「……それだけ?」
思わずライが聞き返した。
ヒイロは首を傾げる。
「それ以上、何を期待したの?」
その問いにライは答えられなかった。
少し考えた末、小さく頷く。
「……やる」
その瞳にはまだ恐怖が残っている。
それでも、生きるための決意だけは消えていなかった。