3.摩海の鼓動と魔女の回路
問題の保管場所は、山麓近くに打ち捨てられた廃工場だった。
人払いが徹底された建物の内部には、肌を刺すような重苦しい魔力が淀んでいる。
床にはどす黒い染みが広がり、壁には何かがもがいたような、獣の爪痕に似た傷が深く刻まれている。空気そのものが毒を帯びたように歪み、視界を不透明に揺らしていた。
「……随分と派手にやらかしてくれているわね」
「ぎぎぎ」
(摩海の魔力に当てられて、中にいた奴らが呑まれたんだろ)
帽子がふわりと肩を離れ、まるで先導するように奥の部屋へと向かって浮遊する。
ヒイロは静かな足取りでその後に続いた。
最奥の作業場。
そこには、異様な存在感を放つ巨大な黒鉱石が、不気味な台座に安置されていた。
脈打っている。まるで巨大な肺が呼吸を繰り返しているかのように。
その周囲だけ光が屈折し、どろりとした黒い靄が霧のように漂っていた。
ヒイロは無表情に右手をかざし、幾何学的な魔法陣を展開する。
「封印するわ」
「ぎぎっ!」
(待て。それ、逆効果だ!)
「……何ですって?」
「ぎぎぎ」
(摩海鉱ってのは、抑え込めば抑え込むほど反発して暴走する。強引に蓋をするんじゃねぇ、流れを外に逃がせ)
ヒイロは苛立ちを込めて舌打ちした。
「もっと早く言いなさいよ、この帽子!」
次の瞬間、彼女の言葉に反応したかのように、鉱石が激しく脈動した。
圧縮された黒い魔力が爆ぜ、空間そのものが大きく震える。
「っ――!」
即座に多重防壁を展開するが、押し寄せる圧力が異常に強い。
ヒイロの魔力が削り取られるような、不快な磨耗感が走る。
その時。三角帽子が強く彼女の胸元へとぶつかり、魔力を伝播させるように密着した。
「ぎぎっ!」
(いいから、俺に魔力経路を開け!)
「命令しないで……っ!」
悪態を吐きながらも、彼女はバッドとの間に築かれた契約のパスを全開にする。
瞬間、身体の芯を雷が走ったような熱が駆け抜けた。
人払いが徹底された建物の内部には、肌を刺すような重苦しい魔力が淀んでいる。
床にはどす黒い染みが広がり、壁には何かがもがいたような、獣の爪痕に似た傷が深く刻まれている。空気そのものが毒を帯びたように歪み、視界を不透明に揺らしていた。
「……随分と派手にやらかしてくれているわね」
「ぎぎぎ」
(摩海の魔力に当てられて、中にいた奴らが呑まれたんだろ)
帽子がふわりと肩を離れ、まるで先導するように奥の部屋へと向かって浮遊する。
ヒイロは静かな足取りでその後に続いた。
最奥の作業場。
そこには、異様な存在感を放つ巨大な黒鉱石が、不気味な台座に安置されていた。
脈打っている。まるで巨大な肺が呼吸を繰り返しているかのように。
その周囲だけ光が屈折し、どろりとした黒い靄が霧のように漂っていた。
ヒイロは無表情に右手をかざし、幾何学的な魔法陣を展開する。
「封印するわ」
「ぎぎっ!」
(待て。それ、逆効果だ!)
「……何ですって?」
「ぎぎぎ」
(摩海鉱ってのは、抑え込めば抑え込むほど反発して暴走する。強引に蓋をするんじゃねぇ、流れを外に逃がせ)
ヒイロは苛立ちを込めて舌打ちした。
「もっと早く言いなさいよ、この帽子!」
次の瞬間、彼女の言葉に反応したかのように、鉱石が激しく脈動した。
圧縮された黒い魔力が爆ぜ、空間そのものが大きく震える。
「っ――!」
即座に多重防壁を展開するが、押し寄せる圧力が異常に強い。
ヒイロの魔力が削り取られるような、不快な磨耗感が走る。
その時。三角帽子が強く彼女の胸元へとぶつかり、魔力を伝播させるように密着した。
「ぎぎっ!」
(いいから、俺に魔力経路を開け!)
「命令しないで……っ!」
悪態を吐きながらも、彼女はバッドとの間に築かれた契約のパスを全開にする。
瞬間、身体の芯を雷が走ったような熱が駆け抜けた。