14.魔女の館の招かれざる、見習いシスター

モニカはきょろきょろと辺りを見回す。

古い家具に、壁際へ並べられた本。
奥にはいくつかの扉があり、どこへ続いているのか分からない。

けれど、思っていたような不気味なものは見当たらなかった。

「建物が洋館だからもっと不気味なのかと思ってたんだけど、案外普通?」

「失礼ね。少し古いものがある程度よ」

ヒイロは二人に背を向け、廊下を歩き始めた。
応接室へ通すとソファに座るよう促した。

「それで?どんな要件なの」

モニカは姿勢を正した。

「単刀直入に言うわ!
 困ってる人に高い薬を売りつけるのは、やめたほうがいいと思う!」

いきなり言い切った。
ヒイロが僅かに眉を動かす。

「……何の話?」

「とぼけても駄目よ!」

「別にとぼけていないけれど」

「教会で聞いたの。山に住んでる魔女が、困ってる人にものすごく高い薬を売ってるって!」

「それで?」

モニカが身を乗り出す。

「それでって……悪いことじゃない!
 薬が必要な人は困ってるんでしょう? そんな人から高いお金を取るなんて駄目よ!」

勢いに押されるように、向かいのソファが小さく軋んだ。
ヒイロは黙ってモニカを見た。

「高い薬を売っている、という部分なら間違ってはいないわ」

「ほら、やっぱり悪い魔女じゃない!」

モニカが勢いよくウィズを見る。

「薬によっては、相応の値段を取っているわ。
 材料、調合にかかる時間、失敗した場合の損失。それらを含めた価格よ」

「でも困ってる人なんでしょう?もう少し安くしてあげればいいじゃない!」

モニカは当然のことのように言った。
ヒイロは一瞬だけモニカを見る。

「嫌よ」

「えっ」

あまりに迷いのない返事に、モニカが固まった。

「私は慈善事業をしているわけではないの。払えないなら作らない。ただ、それだけよ」

「そ、そんな言い方……!」

ヒイロは足を組む。

「それの何が悪いのかしら。必要な対価だわ」

「だって……」

ヒイロは隣のウィズに視線を移す。

「……貴女、幼いのね。この子はどういった教育をしてるのかしら。
 ここは学校でも託児所じゃないのよ?」

「僕も保護者じゃないからね」

「ウィズさんは私のパートナーなの。私が改心させた吸血鬼なんだからっ!」

モニカはむっとして答えた。

ウィズはふと、館の奥から漂う気配に気づいた。
どこか、懐かしい。

――遠い昔、どこかで感じたことのある気配だった。
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