13.終わりなき訪問の予告

アウグストは館を振り返り、小さく笑う。

「困りましたねぇ……」

肩のテオドーラが、ケタケタと笑う。

「ええ、テーラさん。分かっていますよ」

アウグストは白衣の内ポケットへ手を添えた。

「本来なら、完成した薬の効果について考えるべきなのでしょうが……」

視線は、自然と霧の向こうの館へ戻る。

「どうにも、作り手のほうが気になってしまう」

小さく息を吐く。

「不思議ですねぇ。
 これほど明確に距離を置かれたのは、久しぶりです」

テオドーラが楽しそうに笑う。

「普通なら、不快に思うところなのでしょうね」

アウグストは目を細めた。

「ですが、あの方は違う。
 必要以上に近づけない。けれど、依頼には正確に応える」

その姿を思い出し、口元が緩む。

「……もっと話をしてみたいものです。
 きっと、また言われるのでしょうね。『黙りなさい』と」

テオドーラがケタケタと笑う。

「ええ、悪くありません」

アウグストはもう一度、館を見る。

「次に伺う時は……もう少し、相応しい依頼を考えなければいけませんね」

そう呟き、歩き出す。

霧の中へ消えていく背中には、
先ほどまでの患者を見る医師の顔ではなく――
ひとりの魔女に、久しく忘れていた興味を抱いた男の笑みが浮かんでいた。
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