13.終わりなき訪問の予告

数日。
さらに数日。

霧の匂いが変わった頃、
瓶の中の液体が、ようやく落ち着いた顔を見せた。

「……ここまでね」

それ以上、薬の効きを強めることはしなかった。
そこで手を止め、封をする。

名を与える瞬間だけ、ほんのわずかに躊躇してから――押す。

《リーメン・カーム》。

約束の日。

商談室に置かれた小瓶を、アウグストは両手で受け取った。
言葉は少ない。
だが、その視線だけで十分だった。

作り手を見る目ではない。
目の前の小瓶に込められた時間を、確かめるような目だった。

「……待つ時間すら、価値でした」

「感想はいらないわ」

ヒイロは動かない。

アウグストは小瓶を受け取ると、すぐには仕舞わなかった。
指先でそっと縁をなぞり、慈しむように見つめる。

「……貴女が、この薬を私のために調合してくださった。
 その事実だけで、十分価値があります」

ヒイロは眉一つ動かさない。

「勘違いしないで。それは道具よ。あんたの一部じゃない」

「ええ。分かっています」

即答だった。

だが、その口元だけが、ほんのわずかに歪む。

「だからこそ……制限を含めて、この薬なんですね」

アウグストは、それを不満に思う様子もなかった。
むしろ、制限すらも含めて受け入れているようだった。

ヒイロは淡々と告げる。

「次に来る時は、余計なことを言わなくなってるかもしれないわね」

アウグストは静かに笑った。

「努力しましょう」

テオドーラが、くぐもった声でケタケタと笑う。
扉の前で、彼は一度だけ振り返った。

視線はヒイロではなく、彼女の背後――調合室の奥を見ている。

「では。薬は大切に使わせていただきます」

扉が閉まる。
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