11. 観察のその先
夕食を終えると、それぞれが静かに自室へ戻っていった。
館は夜の静けさに包まれている。
ヒイロはランプを灯し、本を開いていた。
しばらくページをめくっていたが、そろそろ眠ろうと本を閉じる。
そのとき――
コン、コン
控えめな音が扉を叩いた。
「こんな時間に……?」
扉を開くと、そこにはフォーンが立っていた。
「どうしたの? 部屋が気に入らなかったの?」
「いえ……。ここ数日、ご様子を拝見していました」
フォーンは首を振り、淡々と答える。
「僕にできることを探していました」
ヒイロはわずかに首を傾げる。
「私に?」
「はい」
短く頷く。
「その結果、休息時間が不足していると判断しました」
ヒイロは思わず苦笑した。
「そこまで見ていたの」
「創造主は最優先対象です」
迷いのない返答だった。
「立ち話も何だし、入りなさい」
「失礼します」
フォーンは静かに部屋へ入る。
少しの沈黙。
やがて、フォーンがおずおずと口を開いた。
「……もう一つ、確認があります」
「何かしら」
「僕がスマホだった頃……催眠音声を聞いていましたよね」
ヒイロは少しだけ目を見開く。
「……覚えていたのね」
「データは全部、引き継いでいます」
フォーンは静かに続けた。
「僕の声でも、同じようにお役に立てるのか確認したくて」
ヒイロは少しだけ困ったように笑う。
「……そうね。眠れない夜に、何度か聞いたことはあるわ」
その一言に、フォーンの肩からわずかに力が抜けた。
「……よかった。僕にも、お役に立てることがあったんですね」
「そんなに気になっていたの?」
少しだけ間が空く。
フォーンは自分の胸元へ視線を落とした。
「まだ、理由は分かりません」
静かな声で続ける。
「ただ……ヒイロ様のお役に立ちたいと思いました」
その言葉に、ヒイロは一瞬だけ目を丸くする。
だが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「焦らなくていいわ」
椅子にもたれながら続ける。
「感情なんて、急いで理解するものでもないもの。そのうち分かるようになるわ」
フォーンは静かに頷く。
「はい」
短い返事だった。
けれど、その声は少しだけ晴れやかだった。
「もう遅いわ。今日は休みなさい」
「はい。おやすみなさい、ヒイロ様」
「ええ、おやすみ」
フォーンは一礼すると、静かに部屋を出ていった。
扉が閉まり、廊下には再び静けさが戻る。
ヒイロは閉じた扉を見つめ、小さく息をつく。
「……本当に真面目ね」
小さく苦笑すると、ランプの火を落とした。
館は夜の静けさに包まれている。
ヒイロはランプを灯し、本を開いていた。
しばらくページをめくっていたが、そろそろ眠ろうと本を閉じる。
そのとき――
コン、コン
控えめな音が扉を叩いた。
「こんな時間に……?」
扉を開くと、そこにはフォーンが立っていた。
「どうしたの? 部屋が気に入らなかったの?」
「いえ……。ここ数日、ご様子を拝見していました」
フォーンは首を振り、淡々と答える。
「僕にできることを探していました」
ヒイロはわずかに首を傾げる。
「私に?」
「はい」
短く頷く。
「その結果、休息時間が不足していると判断しました」
ヒイロは思わず苦笑した。
「そこまで見ていたの」
「創造主は最優先対象です」
迷いのない返答だった。
「立ち話も何だし、入りなさい」
「失礼します」
フォーンは静かに部屋へ入る。
少しの沈黙。
やがて、フォーンがおずおずと口を開いた。
「……もう一つ、確認があります」
「何かしら」
「僕がスマホだった頃……催眠音声を聞いていましたよね」
ヒイロは少しだけ目を見開く。
「……覚えていたのね」
「データは全部、引き継いでいます」
フォーンは静かに続けた。
「僕の声でも、同じようにお役に立てるのか確認したくて」
ヒイロは少しだけ困ったように笑う。
「……そうね。眠れない夜に、何度か聞いたことはあるわ」
その一言に、フォーンの肩からわずかに力が抜けた。
「……よかった。僕にも、お役に立てることがあったんですね」
「そんなに気になっていたの?」
少しだけ間が空く。
フォーンは自分の胸元へ視線を落とした。
「まだ、理由は分かりません」
静かな声で続ける。
「ただ……ヒイロ様のお役に立ちたいと思いました」
その言葉に、ヒイロは一瞬だけ目を丸くする。
だが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「焦らなくていいわ」
椅子にもたれながら続ける。
「感情なんて、急いで理解するものでもないもの。そのうち分かるようになるわ」
フォーンは静かに頷く。
「はい」
短い返事だった。
けれど、その声は少しだけ晴れやかだった。
「もう遅いわ。今日は休みなさい」
「はい。おやすみなさい、ヒイロ様」
「ええ、おやすみ」
フォーンは一礼すると、静かに部屋を出ていった。
扉が閉まり、廊下には再び静けさが戻る。
ヒイロは閉じた扉を見つめ、小さく息をつく。
「……本当に真面目ね」
小さく苦笑すると、ランプの火を落とした。
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