11. 観察のその先
フォーンの館での暮らしが始まって数日。
午後の日差しが調薬室へ静かに差し込んでいた。
机の上には魔導書と計算用紙が山のように積まれ、ヒイロは黙々とペンを走らせている。
フォーンは棚へ薬瓶を戻し終えると、静かに振り返った。
「ヒイロ様」
「何かしら」
「作業開始から二時間四十三分が経過しています」
ヒイロは本から目を離さない。
「そう」
「休憩を推奨します」
「あと少し」
短く返事をすると、再びペンを走らせる。
静かな部屋に紙をめくる音だけが響いた。
フォーンは黙ってその背中を見つめる。
机の上には積み重なった魔導書。
書きかけの計算式。
空になったティーカップ。
その光景を静かに記憶へ刻み込む。
(……僕に、できることは)
答えはまだ見つからない。
やがて机の端に置かれた空のティーカップへ目を向け、小さく呟いた。
「……記録」
それだけ言うと、新しい茶葉を用意するため調薬室を後にした。
しばらくして戻ってくると、湯気の立つティーカップをそっと机へ置く。
「どうぞ」
ヒイロはようやくペンを止め、カップへ手を伸ばす。
「……ありがとう」
一口含むと、また何事もなかったように計算へ戻る。
フォーンはその様子を静かに見つめる。
ほんの少しだけ。
胸の奥に、小さな熱が残った。
午後の日差しが調薬室へ静かに差し込んでいた。
机の上には魔導書と計算用紙が山のように積まれ、ヒイロは黙々とペンを走らせている。
フォーンは棚へ薬瓶を戻し終えると、静かに振り返った。
「ヒイロ様」
「何かしら」
「作業開始から二時間四十三分が経過しています」
ヒイロは本から目を離さない。
「そう」
「休憩を推奨します」
「あと少し」
短く返事をすると、再びペンを走らせる。
静かな部屋に紙をめくる音だけが響いた。
フォーンは黙ってその背中を見つめる。
机の上には積み重なった魔導書。
書きかけの計算式。
空になったティーカップ。
その光景を静かに記憶へ刻み込む。
(……僕に、できることは)
答えはまだ見つからない。
やがて机の端に置かれた空のティーカップへ目を向け、小さく呟いた。
「……記録」
それだけ言うと、新しい茶葉を用意するため調薬室を後にした。
しばらくして戻ってくると、湯気の立つティーカップをそっと机へ置く。
「どうぞ」
ヒイロはようやくペンを止め、カップへ手を伸ばす。
「……ありがとう」
一口含むと、また何事もなかったように計算へ戻る。
フォーンはその様子を静かに見つめる。
ほんの少しだけ。
胸の奥に、小さな熱が残った。
1/2ページ