10. 館に響く、新たな足音
午後の日差しが、調薬室へ静かに差し込んでいた。
最後の薬瓶を棚へ戻したヒイロは、小さく息を吐く。
「……暇ね」
机の端に置かれたスマートフォンへ視線を向ける。
何度も魔力を流し、弄り続けた実験用の端末。
「そういえば、まだ試してなかったかしら」
指先から紫色の魔力が細く流れる。
一瞬の静寂。
やがて、画面がふっと光った。
「……あら」
光は消えない。
むしろ、静かに膨らみ始める。
机の上のスマートフォンが音もなく浮かび上がった。
ゆっくりと回転する。
紫色の光が床へ落ち、小さな魔法陣を描き始めた。
「……」
ヒイロは逃げない。
むしろ興味深そうに、その光景を眺めていた。
魔法陣は一つ、また一つと重なり、静かに広がっていく。
部屋の空気が、わずかに震えた。
棚に並んだ薬瓶が、かた、と小さく鳴る。
「普通じゃないわね」
その呟きと同時に、光が一気に膨らんだ。
廊下を歩いていたライが耳をぴくりと動かす。
「……?」
見慣れた実験室から漏れる魔力。
でも、いつもと違う。
「ヒイロ様?」
扉を開けた瞬間、白い光が視界いっぱいに広がった。
「うわっ!」
思わず腕で目を覆う。
室内では、光がゆっくりと渦を巻いていた。
人の背丈ほどまで膨らんだ光は、まるで息をするように明滅を繰り返している。
「……これは予想以上ね」
ヒイロは興味深そうに呟く。
その声に応えるように、光がふっと静まった。
静寂。
次の瞬間、輪郭が浮かび上がる。
細い腕。
肩。
揺れる赤い髪。
光が薄れていくたび、一人の少年の姿が少しずつ現れていく。
やがて最後の光が消えた。
少年はゆっくりと目を開く。
黒い瞳が、静かに部屋を見渡した。
机。
薬棚。
窓。
そして最後に、ヒイロで止まる。
しばらく見つめ合う沈黙。
やがて少年は、小さく口を開いた。
「……解析完了」
静かな声だった。
少年は一歩だけ歩み寄る。
「あなたが、僕の創造主ですね」
問いではなく、確認。
ヒイロは口元をわずかに緩めた。
「ええ。そういうことになるわね」
「了解しました」
短く頷く。
迷いも戸惑いもない。
与えられた情報を、そのまま受け入れているだけだった。
「面白いものが出来たわね」
ヒイロは小さく笑う。
最後の薬瓶を棚へ戻したヒイロは、小さく息を吐く。
「……暇ね」
机の端に置かれたスマートフォンへ視線を向ける。
何度も魔力を流し、弄り続けた実験用の端末。
「そういえば、まだ試してなかったかしら」
指先から紫色の魔力が細く流れる。
一瞬の静寂。
やがて、画面がふっと光った。
「……あら」
光は消えない。
むしろ、静かに膨らみ始める。
机の上のスマートフォンが音もなく浮かび上がった。
ゆっくりと回転する。
紫色の光が床へ落ち、小さな魔法陣を描き始めた。
「……」
ヒイロは逃げない。
むしろ興味深そうに、その光景を眺めていた。
魔法陣は一つ、また一つと重なり、静かに広がっていく。
部屋の空気が、わずかに震えた。
棚に並んだ薬瓶が、かた、と小さく鳴る。
「普通じゃないわね」
その呟きと同時に、光が一気に膨らんだ。
廊下を歩いていたライが耳をぴくりと動かす。
「……?」
見慣れた実験室から漏れる魔力。
でも、いつもと違う。
「ヒイロ様?」
扉を開けた瞬間、白い光が視界いっぱいに広がった。
「うわっ!」
思わず腕で目を覆う。
室内では、光がゆっくりと渦を巻いていた。
人の背丈ほどまで膨らんだ光は、まるで息をするように明滅を繰り返している。
「……これは予想以上ね」
ヒイロは興味深そうに呟く。
その声に応えるように、光がふっと静まった。
静寂。
次の瞬間、輪郭が浮かび上がる。
細い腕。
肩。
揺れる赤い髪。
光が薄れていくたび、一人の少年の姿が少しずつ現れていく。
やがて最後の光が消えた。
少年はゆっくりと目を開く。
黒い瞳が、静かに部屋を見渡した。
机。
薬棚。
窓。
そして最後に、ヒイロで止まる。
しばらく見つめ合う沈黙。
やがて少年は、小さく口を開いた。
「……解析完了」
静かな声だった。
少年は一歩だけ歩み寄る。
「あなたが、僕の創造主ですね」
問いではなく、確認。
ヒイロは口元をわずかに緩めた。
「ええ。そういうことになるわね」
「了解しました」
短く頷く。
迷いも戸惑いもない。
与えられた情報を、そのまま受け入れているだけだった。
「面白いものが出来たわね」
ヒイロは小さく笑う。
1/3ページ