傘下のひとりごと

ごく個人的な話。

2024/09/17 20:57
昨日は亡くなった元彼の誕生日だった。
誕生日、おめでとう。

私より2つ年上の彼とは職場で知り合った。初めて節点を持ったのはそれこそ勤め先だったけど、実は通っていた中学校は同じだったりする。それが判明したのは彼と同学年の兄がいたからだ。私の苗字は珍しいので、すぐ妹だと判ったらしい。
「夜雨さん、お兄さんいるでしょ」と声を掛けられたのが一番最初。

彼は俳優の伊勢谷友介似の顔立ちですらっとした体型。黙っていればイケメンなのだが、喋るとイメージがガラッと変わる。小学低学年が好みそうなしょうもない下ネタを口にしてよく笑いを取っていた。愛嬌のある人だったのは間違いない。

元々塾の講師をしていたこともあって、後輩に仕事を教えるのが非常に上手かった。事務仕事するより教職に就いた方が良いのでは?と思ったくらいだ。

大学では経済を勉強していて「簿記は俺には鬼門だった」と困ったように笑っていた。私は商業高校の出だったので「あれは算数じゃなくて国語ですよね」と簿記あるあるで話が盛り上がったり(私は一応全商簿記1級まで持ってたりする。日商簿記は2級を2回受けて落ちた)。

また本が好きとのことで何回か一緒に書店に行ったこともある。とは言っても、私とは読むジャンルは全く違ったけれど。彼は歴史が好きで読む本もノンフィクションが多かったように記憶している。そんな彼から勧められた小説で憶えているのは貴志祐介の「黒い家」だ。「めっちくちゃ怖いから読んでみなよ」って言うので本を買った。読んで感想も伝えたけど、彼のリアクションはもう憶えてない。

私はダークで激しい音楽が好きだけど、彼はヒーリングミュージックが好きで私にも色々あれこれとCDを貸してくれた。
趣味趣向はそこまでぴったり合う人ではなかったけど、一緒にいてとにかく楽しかったし、居心地が良かった。

彼は所謂地元の名家の長男だったので、それに対する重圧に苦しんでいた。どうやら父親と上手くいってなかったようで、たまに父親に対する愚痴を零していた。世間体をやたら気にすることや「お家大事」の考えに相当反発を憶えていて、くだらないとも言っていた。

一緒に仕事をして、休みが合えばデートをして、何でもない時に電話で他愛もないお喋りをして、そんなごく平凡な付き合いをしていたけど、私が家の都合で退職し、県外に引っ越すことになってしまってからは関係の維持が難しくなってしまった。

両親が離婚したので、私が母親替わりとしてまだ幼い兄弟の面倒を見ていたので自由に出掛けられなくなってしまったのだ。それでも彼は休日に片道3時間かけて会いに来てくれて、1時間ばかりお茶をした。せっかく来てくれたのだから本当はもっと一緒に過ごしたかったし、出掛けたかったけど、私の家庭状況がそれを許さなかった。だから彼に凄く申し訳ない気持ちがあった。そんな状況だったので、そのうちに彼との関係は自然消滅してしまった。

それから色々あって私は実家を家出して(本当に書き置きして家出した)現在独りで暮らしているのだが、ある時ふと彼のことを思い出してネットで検索してみたのだ。よりを戻したいとか、未練があるとかではなく、今どうしてるのかなという軽い気持ちだった。

そうしたら。
彼の名前が書かれた記事が出てきた。
ひき逃げ事故で死亡したとのこと。
しかも犯人が捕まっていない。

呆然とした。
同姓同名の別人だろうと思ったのだが、事故現場が彼の住まいのごく近くであることから、やはり彼なのだと悟った。
彼が事故に遇ったのは私との関係が切れて大分あとの事だったし、私が彼の死を知ったのは彼が亡くなってから数年経ってからで、悲しいというよりはただただ驚いたの一言に尽きる。

今でもごくたまに彼の夢を見る。
直近で見た夢では仲良くカフェでパンケーキを食べてる夢だ。そういえば割と彼は甘いもの好きだったなと思い出す。

私は2つ年上だった彼の享年を大分過ぎて、現在生きている。何だかとても不思議な感じがする。

博識で剽軽で優しかった彼が好きだった。
当然、彼にはもう恋愛的な感情は抱いていない。
ただ懐かしさばかりがあるだけだ。

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