傘下のひとりごと
読んだ本の抜粋
2024/09/15 08:40体は、ときには屈辱的なほど、感情を隠そうとしない。あるいは、隠すことができない。
(初夜/イアン・マキューアン)
見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある。見られる傷みに耐えようとして、人は歯をむくのだ。しかし誰もが見るだけの人間になるわけにはいかない。見られた者が見返せば、こんどは見ていたものが、見られる側にまわってしまうのだ。
(箱男/安部公房)
窓の夢想は、鏡以上の力をもって、自分に自分を返してくる。窓から外を覗くことは、内側を覗くことに等しいのだ。窓を前にした戸惑いはいつまでも心の識閾にとどまって、書くという営為のなかからついに消えることがない。
(戸惑う窓/堀江敏幸)
人を審判する場合。それは自分に、しかばねに、神を感じている時だ。
(もの思う葦/太宰治)
「太陽」は「夜」だけをひたすら愛し、地球へ、その光の暴力を、淫らな男根を差し向けている。だが太陽は、眼差しに、夜に、出会うことができない。地表の夜の広がりが絶えず太陽光の汚れに向けて進んでいるというのに。
(太陽肛門/ジョルジョ・バタイユ)
月は衛星ではない
あれは空に空いた穴だ
向こうの世界の光が穴からもれているから光って見えるのだ
(笑う吸血鬼/丸尾末広)
あなたはあなたの関係者ですか
あなたはあなたとどうやって関係をもったのですか
あなたはあなたの関係者だとあなたは証明できるのですか
(自殺サークル/古屋兎丸)
太陽も死も直視することはできない……
(ラ・ロシェ・フーコー)
神はおぞましいものへの恐怖である。神を探ってゆけばだから、おぞましいものへ行き当たる。
(わが母/ジョルジュ・バタイユ)
溢れる豊かさこそ美だ。
(ウィリアム・ブレイク)
死を避け、荒廃から身を清く保つ生命でなく、死に耐え死のなかでおのれを維持しようとする生命こそが精神の生命である。精神は絶対の分裂に身を置くことからこそ真理を獲得するのだ。
(精神現象学「序説」/ヘーゲル)
愛したい、とはげしく求める念がわたしのなかにあって、それ自身が愛のことばとなる。わたしは光なのだ。夜であればいいのに!この身が光を放ち、光をめぐらせているということ、これがわたしの孤独なのだ。
(ツァラトゥストラはかく語りき/ニーチェ)
神と名のつくあらゆるものは、人間と少しばかりちがった眼を持っていたに過ぎない。
(望遠鏡と電話/川端康成)
私はうめく、もう望んではいないのだ
もう耐えることができないのだ
私の牢獄を。
苦しげに
私はこう言う
私を窒息させる言葉たちよ
私を放っておいてくれ
私を放してくれ
私は別なことに飢えているのだ。
私は死を欲しているのだ
こんな言葉たちの支配など
望ましい恐怖のかけらもない連鎖など
認めたくはないのだ。
私というこの自我
こんなものは何でもありはしない
存在するものの
だらしない受容というだけだ
私は憎む
この道具の生を。
私は裂けめを探している
私の裂けめをだ
砕かれるためにである。
私が愛するのは雨、
雷、
泥、
水の漠たる広がり、
大地の底。
断じて私などではない。
大地の底で
おお、私の墓穴よ、
私を私から解放してくれ。
私はもうこんな存在を望んではいないのだ。
(内的体験/ジョルジュ・バタイユ)
憎むことを愛す。
(シオラン)
(初夜/イアン・マキューアン)
見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある。見られる傷みに耐えようとして、人は歯をむくのだ。しかし誰もが見るだけの人間になるわけにはいかない。見られた者が見返せば、こんどは見ていたものが、見られる側にまわってしまうのだ。
(箱男/安部公房)
窓の夢想は、鏡以上の力をもって、自分に自分を返してくる。窓から外を覗くことは、内側を覗くことに等しいのだ。窓を前にした戸惑いはいつまでも心の識閾にとどまって、書くという営為のなかからついに消えることがない。
(戸惑う窓/堀江敏幸)
人を審判する場合。それは自分に、しかばねに、神を感じている時だ。
(もの思う葦/太宰治)
「太陽」は「夜」だけをひたすら愛し、地球へ、その光の暴力を、淫らな男根を差し向けている。だが太陽は、眼差しに、夜に、出会うことができない。地表の夜の広がりが絶えず太陽光の汚れに向けて進んでいるというのに。
(太陽肛門/ジョルジョ・バタイユ)
月は衛星ではない
あれは空に空いた穴だ
向こうの世界の光が穴からもれているから光って見えるのだ
(笑う吸血鬼/丸尾末広)
あなたはあなたの関係者ですか
あなたはあなたとどうやって関係をもったのですか
あなたはあなたの関係者だとあなたは証明できるのですか
(自殺サークル/古屋兎丸)
太陽も死も直視することはできない……
(ラ・ロシェ・フーコー)
神はおぞましいものへの恐怖である。神を探ってゆけばだから、おぞましいものへ行き当たる。
(わが母/ジョルジュ・バタイユ)
溢れる豊かさこそ美だ。
(ウィリアム・ブレイク)
死を避け、荒廃から身を清く保つ生命でなく、死に耐え死のなかでおのれを維持しようとする生命こそが精神の生命である。精神は絶対の分裂に身を置くことからこそ真理を獲得するのだ。
(精神現象学「序説」/ヘーゲル)
愛したい、とはげしく求める念がわたしのなかにあって、それ自身が愛のことばとなる。わたしは光なのだ。夜であればいいのに!この身が光を放ち、光をめぐらせているということ、これがわたしの孤独なのだ。
(ツァラトゥストラはかく語りき/ニーチェ)
神と名のつくあらゆるものは、人間と少しばかりちがった眼を持っていたに過ぎない。
(望遠鏡と電話/川端康成)
私はうめく、もう望んではいないのだ
もう耐えることができないのだ
私の牢獄を。
苦しげに
私はこう言う
私を窒息させる言葉たちよ
私を放っておいてくれ
私を放してくれ
私は別なことに飢えているのだ。
私は死を欲しているのだ
こんな言葉たちの支配など
望ましい恐怖のかけらもない連鎖など
認めたくはないのだ。
私というこの自我
こんなものは何でもありはしない
存在するものの
だらしない受容というだけだ
私は憎む
この道具の生を。
私は裂けめを探している
私の裂けめをだ
砕かれるためにである。
私が愛するのは雨、
雷、
泥、
水の漠たる広がり、
大地の底。
断じて私などではない。
大地の底で
おお、私の墓穴よ、
私を私から解放してくれ。
私はもうこんな存在を望んではいないのだ。
(内的体験/ジョルジュ・バタイユ)
憎むことを愛す。
(シオラン)