傘下のひとりごと

読んだ本からの抜粋

2024/09/03 04:17
戦争の記憶が遠ざかるとき、
戦争がまた
私たちに近づく。
そうでなければ良い。
(弔辞 職場新聞に掲載された105名の戦没者名簿に寄せて/石垣りん)

死刑は国家の現実です。もし国民が殺人を憎むのなら、死刑を見る義務がある。丁度、動物愛護主義者が一度は屠所を見る必要があるように。それは別に、死刑反対とか肉食反対なんて主義の問題じゃなくて、そういう現実を平気で受け入れるためです。
(宣告/加賀乙彦)

おお、薔薇、汝病めり!
(田園の憂鬱/佐藤春夫)

苦しみも
悲しみも
手放してはならない
人生という
貝殻が
なぐさめの真珠を
宿すまで
(なぐさめの真珠/若松英輔)

自然も人も、未知なるが故に、我愛す。
(フランドルの冬/加賀乙彦)

平和は願うものではない。自分たちで作り出すものである。平和は行いであり、人のあり方である。平和とは与えることである。
(人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ/ロバート・フルガム)

故郷(ふるさと)は要るのだ、たとえ立ち去る喜びのためだけにせよ。故郷は人が孤独でないことを告げる。村人たちのなかに、植物のなかに大地のなかに。おまえの何かが存在しおまえがいないときにもそれが待ち続けていることを知らせる。
(月と篝火/パヴェーゼ)

人間はだれでも狂人だが、人の運命というのは、この狂人と宇宙とを結びつけようとする努力の生活でなかったら、なんの価値があるだろう。
(誰か故郷を想はざる/寺山修司)

私が小鳥を愛すれば愛するほど、小鳥はより多く私そのものである。私にとっては私自身のものだ。私が小鳥を愛すれば愛するほど小鳥はより多く私そのものである。私にとっては小鳥は私以外の存在ではない。小鳥ではない。小鳥は私だ。私が小鳥を活きるのだ。
(惜しみなく愛は奪う/有島武郎)

誘惑は定義不可能なものから発する。欲望には明確な対象などない。意味を不確定にしておくことが誘惑の定石であり、ぴったりあうものはむしろあやしむほうがいい、ということを。
(じぶん・この不思議な存在/鷲田清一)

意志のないものに絶望などあろうはずがないじゃありませんか。生きる意志こそ絶望の源泉だと常に思っているのです。
(いのちの初夜/北條民雄)

苦悩、それは死ぬまでつきまとって来るでしょう。でも誰かが言ったではありませんか、苦しむためには才能がいるって。苦しみ得ないものもあるのです。
(いのちの初夜/北條民雄)

象牙の白い玉がむれてとぶなかに
お前の身は波がしらのやうにもまれ、
千鳥のたわむれ、
泡のおどろき。

死は正装のはなやかさに
端然と滅亡のおとづれをささやく。
(死の絵姿/大手拓次)

愛は、この世に存在する。きっと在る。見つからぬのは、愛の表現である。その作法である。
(女人創造/太宰治)

ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる。また会える人がいる。二度と会えない人もいる。いつの間にか去る人、すれ違うだけの人。私はあいさつを交わしながら、どんどん澄んでゆくような気がします。流れる川を見つめながら、生きねばなりません。
あの幼い私の面影だけが、いつもあなたのそばにいることを、切に祈る。
(ムーンライト・シャドウ/吉本ばなな)

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