短編
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寮の談話室。ソファに浅く座ってスカートを強く握りしめて覚悟を決める。
息をたくさん吸ってそのままの勢いで声を出す。
「わ、私は魅力がないんでしょうかっ!!」
…顔が熱い。勢いに任せて思ったよりも大きな声が出ちゃって余計に恥ずかしい。
目の前に座って私のその覚悟の一言を聞いていた切島くん、上鳴くん、瀬呂くんの顔を恐る恐る見るとポカーンとした顔をしたあとに笑ったりにやけたりと表情を変えていた。
「笑わないでよっ!真剣なの!」
「それってなに?爆豪に手ェ出されてないの気にしてる感じ?」
「えっ!?や、あ、変な勘繰りやめてよ!セクハラだからね!」
「いやいや、自分からそういう内容の話して来たんでしょうよ」
「それはそうだけど…で、でも!爆豪くんは関係ないのっ!」
「ヘイヘイ」
3人とも笑ってるけど私は気にしてるのに。
大体なんで魅力がないか聞いただけで爆豪くんに、その…手出されてないとかわかるの?
必死に誤魔化したけど返事の適当さからしてバレてるのは間違いない。
「爆豪と付き合ってどんくらいだ?」
「……もうすぐ4ヶ月です。だから爆豪くん関係ないってば!」
…ずっと爆豪くんが好きだった。
最初は怖い人って思ってたけど、段々いいところが見えて来て、夢に必死なところとか、見えないところで努力してるところとか、負けず嫌いなところとか、所作がキレイなところとか、なんでも器用にこなしちゃうところとか、でもすごく不器用なところとか、それですごく周りを見て優しいところとか、全部全部好きになった。
一度好きって自覚したら落ちるまではあっという間で、恋ってこんなにも一瞬で落ちるんだって、初めて知った。
それから少しずつ話をするようになって、2人でいる時間が多くなっていった。
「…好きだ。付き合ってやる」
そうやって短い告白をされた時は都合のいい夢でも見てるんじゃないかって思った。
嬉しくて、しゃくり上げて泣きながら「よろしくお願いします」って必死に声に出したのを鮮明に覚えてる。
「ちょい待って、あんまダチのそういうのって考えたくないんだけど…こう、良からぬ想像しちゃうの気まずいじゃん?」
「……や、やだっ!やめてよ!まだそこまでいってないんだからっ!!」
「へぇ」
「何言わすの…もうお嫁にいけない…」
男の子で爆豪くんとも仲が良くて、切島くんはわからないけど恋愛に強そうだからと恥を覚悟で相談したのに相手を間違えたかもしれないと少し後悔した。
もうすぐ付き合って4ヶ月が経つけどキスどころか手だって繋いだこともない。
彼の性格的に手を繋ぐことは嫌いそうだし、それは別に気にしてない。
訓練なんかで手を握ったことはあるし!
でも、キスはない。
だからと言ってキスがしたいとか、そういうわけじゃなくて…それって私に魅力がないってことなんじゃないかなって…。
もしくは、周りから見ても好きがダダ漏れてた私に同情をして付き合ってくれてるとか…。
そうやってどんどん悪い方に考えちゃうから男の子から見て私の魅力があるのか知りたいと思って今この状況になってる。
「みょうじ元気出せって!魅力ならあるぜ!忍耐力に諦めねぇ根性!俺ァいいと思うぜ!」
「わかってないねぇ、切島!今言ってる魅力ってのは女子としてってことよ」
「みょうじねぇ…色気…はないよね、残念ながら」
「傷付いたからね?」
私の話をあまり真剣に考えてないのか楽しそう…。
それにあるとは思ってなかったけど、やっぱり男の子から見てもないんだ、色気。
手を繋いだり、キスしたり、それだけが全てじゃないことはわかってる。
大好きな人に好きって言ってもらえて、同じ時間を共有出来てる。
これが一番幸せってことだってちゃんとわかってる。
「……でもやっぱり、好きな人には触れたいって思っちゃう」
「それ爆豪に言えばいんじゃねーの?」
「へ!?言えないよっ!私が変なことばかり考えてると思われちゃうもんっ!!」
今だってクラスメイトにいろいろバレちゃって、なんかもう頭パンクしそうなくらい恥ずかしいのに、本人になんて言えるわけがない。
上鳴くんと瀬呂くんはずっとにやにやして!
「この話やめよう!私ばっか恥ずかしい!爆豪くんに言わないでね!」
「まぁ、俺たちが言わなくても伝わってるし」
「え?」
後ろを指さしながら笑う3人の指先を追うように振り向くと苛立っているように眉間に皺を寄せて立っている爆豪くんがいた。
彼の姿を認識したら体中の熱が一気に上がって頭がぐるぐるする。
いつからいたの?どこから聞かれてた?今来たの?でも瀬呂くんの言い方的に間違いなく少し前にはいて聞かれてた。
「みょうじ、ツラ貸せ」
「は、はい」
言い訳を思い付くよりも早く低い声でそう言われれば大人しくついて行くしかない。
みんなに一瞬怒った顔を向けると「早く行きな~」と意に介さず手を振られてしまったので諦めて爆豪くんの背中を追うと男子棟のエレベーターに乗り込んだから多分爆豪くんの部屋に行くんだろうけど、あんな話を3人にしたばかりで私期待してるみたいにならない!?
しかも爆豪くんも少なからず聞いてたんだよね?穴があったら入りたい。
「テキトーに座れ」
「は、はい」
爆豪くんの部屋に入るのは初めてじゃない。本人は嫌がってたけど付き合う前にクラスメイトとみんなで爆豪くんの部屋で遊んだこともあるし、付き合ってからは爆豪くんの部屋で二人で話すことも増えた。
だからいつも通りベッドの前に腰を下ろしたけど、今日は居心地が悪い。
「お前の紅茶残っとる」
「あ、うん、飲む」
部屋の冷蔵庫を開けてペットボトルに入った紅茶をコップに注いで渡してくれたのでお礼を伝えて受け取る。
そのまま少し飲むと茶葉の香りが鼻に抜けて口の中にはほのかな甘みが広がって美味しいって思ったら肩の力がスっと抜けたのがわかった。
気付かないうちに一人でこんなに勝手に緊張して体が強ばってたのかとおかしくなった。
「……てめェに色気はねェな」
「~~~恥ずかしいからもうやめて」
聞かれてた…しかも本人から色気ないって言われた…。
それはもうわかってたけど、触れたいって言ったのも聞かれてたってことが一番恥ずかしくて思わず顔を腕で隠した。
「それだけがいいってわけじゃねぇだろ」
持ったままのコップを取ってから私の腕に優しく触れて顔の前から腕を退けられた。
そしたら爆豪くんと目が合って、見つめられて気恥しくて目を逸らしてしまいたいのに吸い込まれてしまいそうな気がして出来なくて。
「…へらへら笑ってるだけだと思ってたけど、てめェを曲げねェとこ、感情が全部表に出ちまうバカ正直なとこも、変なとこ強気でクソうぜぇとこも」
彼の目が、表情があまりにも真剣に真っ直ぐで、声がいつもよりすごく優しくて、なんだか胸がきゅうっと締め付けられるみたい。
触れた手が熱を持ったように熱く感じる。
「俺がみょうじに惚れたとこだ」
普段そんなこと絶対に言わない彼がそんな言葉を言ってくれたことがすごく嬉しくて胸がいっぱいだ。
爆豪くんも顔を赤くしながら「だから色気なんざどーでもいいだろ。二度と言わねぇ!クソが!」って付け足してたのが嬉しいのにおかしくて少し笑ったら「何笑っとんだ!」と怒られてしまった。
「私、爆豪くんと付き合えて幸せ者だぁ」
「は、今頃かよ」
爆豪くんの指が掴んでた私の腕から手のひらに移動して、そのまま優しく撫でるように触れたあとその大きな手のひらに包まれた。
触り方が優しくて、それだけのことで心臓がうるさいくらいに鳴ってる。
「ちっせェ手」
「ば、爆豪くんの手が大きいんだよ…」
「それやめろ」
「それ?」
「その呼び方いい加減やめろ。覚悟出来てねぇのかと思うだろ」
「覚悟…?」
呼び方はもうずっとこう呼んでたからそれが定着しちゃってて、付き合ったからって突然呼び方変えるのも恥ずかしくてそのままにしていた。
爆豪くんだって私の事名字で呼ぶし、私も変える必要ないのかなってなんとなく思ってた。
だけど爆豪くんが大きく息を吐いて、今度は指が私の唇を優しくなぞるように動いたから体がビクッてして、どうしていいのかわからないくらい顔も体も熱くなる。
「惚れた女が無防備に目の前にいんのに、手ェ出したくねぇわけねぇだろ」
「あ…え…」
「自分でも引くくらい大事にしてやりてぇって思ってんだわ。覚悟あんのかよ、なまえ」
初めて名前で呼ばれてドキドキして心臓が痛いくらい。破裂しそう。
好きな人に名前を呼ばれるってこんなに嬉しいんだ。
いつもかっこいいけど今の爆豪くんはなんかもっと男の人って感じで、色気ってこういうことを言うのかもしれないってドキドキとうるさいくらいの心臓の音を感じながら思った。
触れられた唇とその言葉で次に何されるのかは私にでもわかる。
「…大丈夫だよ。私ちゃんと、か、勝己くん…となら、嬉しい」
「そーかよ」
か、勝己くんの大きい手が私の頬を包んで、目が合って、距離が近くて。
それだけなのに心臓が破裂しそうなくらい脈打って体が熱い。
「目ェ閉じてろ」
言われた通りに目をぎゅっと瞑ると顔が近くなって勝己くんの匂いも吐息も近くに感じて余計にドキドキする。
ほんの1、2秒。
唇に柔らかいものが当たってゆっくり離れる。
目を開くと真剣な表情から勝ち誇ったような笑顔になった勝己くんがいて、私、勝己くんとキスしたんだって実感したら嬉しくて、恥ずかしくて、くすぐったい様な気持ちになった。
「ごちそーさん」
「ばかっ!」
「あァ?てめェだってしたがってたろ」
「…か、勝己くんも、ってこと…?」
「そりゃそうだろ」
そっか…。そっかぁ…。
私がまだ先に進む覚悟が出来てないと思ったから、勝己くんは私のことを考えてペースをゆっくりにしてくれていたんだ。
ずっと私のことを考えて本当にちゃんと大事にしてくれてたんだ。
「…ごめんね」
「あァ?」
「私、自分のことばかり考えてたから。か、勝己くんはいっぱい私のこと考えて待っててくれたのに」
「バカかてめェは。大事にしてやるって俺が決めたンだから黙ってされてりゃいいンだよ」
「ふふ、うん」
勝己くんといるとどんどん好きが大きくなって、この人には敵わないやって思う。
私も勝己くんがいっぱい考えて大事にしてくれてるのと同じくらい私も大事にしたい。
焦らなくても私たちは私たちのペースで幸せなんだってわかったから。
こんな簡単なこともわからなかったなんて、私はバカだなぁ。
「つーかアイツらに言ってンじゃねェよ、バカなまえ」
「だって、か、勝己くんと仲良しだから」
「はよ慣れろや」
「がんばる」
しばらくして談話室に戻った私たちを3人が茶化して来て勝己くんの雷が落ちたのは言うまでもなく…。
いろいろ聞かれそうだけど私のせいでもあるから肩身が狭かったのであとでちゃんと謝ろうと思います。
fin.
