短編
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都内にある外装はお世辞にもオシャレとは言えねぇ居酒屋。
俺らが集まる時は毎回ここって決まってんだよなぁ。
個室があるから他人の目を気にしなくて済むし、都内なのに値段も安い、なによりここの肉はうまい!
久しぶりに飲みに行こうぜ!なんて話して集まると俺らも大人になったんだなと思う。
店の前でちょうど上鳴と合流して個室に案内してもらう。
爆豪は仕事が押してるらしく遅れて来る。
アイツも大変だから仕方ねぇ!
ビールとつまみを適当に頼んで上鳴と先に「お疲れ!」と乾杯してビールを喉に流し込む。
これがうめぇって思えるのも大人になったと感じる瞬間だ。
「そうだ切島!アレ見たか!?」
「アレってなんだよ」
「そりゃあ今ちょーー話題になってる爆豪の熱愛っしょ!!!」
「あー」
見るも何も俺昔から知ってんだよなぁ。
そういや上鳴とみょうじって会ったことあったよな?
一度4人で茶ァした記憶あるしな。
上鳴のこういう話が好きなとこも昔っから変わってねぇ。
「あの爆豪が熱愛って、写真も見たけど想像できねぇんだよなぁ」
「そうか?アイツはずっと一途だぜ、男らしく!」
「というより、誰かを好きになるってのがさ。爆豪って自分の強さァ!って感じじゃん!?」
上鳴の言うことはわからなくもない。
たしかに爆豪は学生時代からトップヒーローになるために努力を惜しまないヤツだった。
恋愛だなんだよりも強くなることが大事なんだと。
もちろん強さを追い求めることもやめなかったけど、相手がみょうじだったから変わったのかもしれねぇな。
「人の話を酒のアテにしてんじゃねぇよ」
個室の扉が開き、不機嫌な声と共に登場したのは世間でもここでも話題になってる爆豪だ。
飲みに行こうって誘ったら「てめェらと違って暇じゃねぇンだわ」なんて悪態つきつつ、なんだかんだ都合がつけば顔出してくれんだよなぁ。
「お、爆豪お疲れ!この話聞きたくてウズウズしてたのよ、俺!」
「てめェらに話すことなんざひとつもねぇわ!」
そう言いながらビールの入った自分のジョッキを持って上鳴が俺の隣に移動して、空いた方に爆豪が座る。これも毎度のことだ。
間もなくしてここに来る前に頼んでいたらしい、爆豪のビールが来て改めて「お疲れ!」と乾杯すると爆豪も嫌な顔をしながら控えめにジョッキを上げてからビールを流し込んでいた。
「それで爆豪の彼女さんってどんな人なのよ!」
「この話するためだけに呼んだなら帰んぞ」
「学生の時に会ったことあるだろ、ほら、4人でファミレス行ってさ!」
「ああ!たしか…なまえちゃん!」
「話してんじゃねぇよ切島ァ!!」
あの時以来会ってもねぇってのに上鳴はよくみょうじの名前まで覚えてんなぁと感心しちまった。
爆豪は「クソが…」とボヤいて眉間に皺を寄せながら再びジョッキに口を付けてる。
こんなだけど爆豪はみょうじには弱いというか甘い。
それは昔からだけど、再会してからはさらにそうだと思う。
とは言ってもみょうじが下を向いたらぶん殴って前向かすような、傍から見ていてもいい関係だと思う。
もちろん本当にぶん殴ってるわけじゃねぇけど。
「まあまあ!いいじゃん、たまには男だけでこういう話も!俺好きよ!」
「てめェは女なら誰でもいいんじゃねぇか」
「そんなことないですけど!?」
高校の時の話したり、仕事の話したり、久しぶりに会ってもこうしてワイワイ出来るってのはやっぱいいもんだよな!
爆豪も本当に嫌ならそもそも絶対ェ来ねぇし、わかりにきぃけどいつもより酒のペースも速くて楽しんでんだと思う。
「なまえちゃんと酒飲んだりしないの?」
「アイツ酒弱ェから相手になんねぇ」
「みょうじが酒弱いのは想像通りだ」
2、3口飲んで顔真っ赤にさせて、1缶空けないうちにへろへろに酔っ払ってたらしい。
そういう爆豪も今日は結構酒回って来てんな。
普段だったら自分からみょうじのこんな話はして来ねぇ。
上鳴はここぞとばかりに爆豪に気になってたことを聞こうと試みてる。
「しっかしあの爆豪のかっちゃんがメディア気にせず車でチューしちゃうなんてなぁ!」
「あの写真は驚いたよな!」
「どうだっていいんだよ、他人の目なんざ」
昔っから人目を気にするようなヤツじゃねぇのは知ってる。
ただみょうじは一般人だから、抜け目ない爆豪はメディア対策も万全だとも思ってた。
「メディア対策なんかしてんのかと思ってたぜ」
「そもそも付き合っとんのも隠してねェんだよ。惚れた女がいンならしてェ時にすんだろ」
「ほぉっ!?」
酒が回ってるとは言え爆豪の口からこんな言葉が出て来るなんてよ…!
ビックリしすぎて上鳴も変な声出てるし、これ聞いちゃってよかったのか!?
爆豪のそういうとこはくっそ男らしいけどみょうじのことも知ってるし聞いてるこっちが恥ずかしくなるぜ…!
今度みょうじにどんな顔して会えばいいんだ。
「爆豪にこんなん言わせるってなまえちゃんすげぇな」
そう、すげぇんだよみょうじは。
努力とか、向上心とか、才能マンの爆豪にそもそも人一倍あったもんがみょうじが原動力になってもっと上に動かしてる。
「後にも先にもなまえだけだわ。俺にここまでさせる女」
「くぅ…!爆豪がここまで惚気けるなんて…!」
「惚気けてねぇわ!脳みそに酒でも入っとんのか!?」
それはおめェだ、爆豪。珍しく酔っ払ってんなぁ。
酒飲むペースは変わらず速い。
爆豪の携帯が短く振動して、それを確認した爆豪の顔が見たこともねェくらい穏やかになったのを俺は見逃さなかった。
聞かなくてもわかる、みょうじからメッセージが届いたんだと思う。
爆豪にこんな顔させちまうみょうじはやっぱりすげぇヤツだ。
時計を見るともうすぐ日付が変わる。
そろそろ帰るかと話して会計を済ませて店の外へ出ると上鳴が爆豪に泊めて欲しいと絡み始めた。
上鳴も結構飲んでたから酔ってるのもあるんだろうけど、一番はこの時間から自分ちに帰んのがめんどくせぇんだろうな。
もちろん帰れと一蹴していたけど、めげない上鳴がめんどくさくなったのか「朝起きたらすぐ帰れ」と渋々承諾していたから俺も便乗することにした。
爆豪の家に行くのなんて久しぶりだ。
最後に行ったのはみょうじと再開する少し前だったはず。
タクシーを拾って20分くらい走ってから下ろしてもらって5分くらい歩くと爆豪のマンションに着く。
わざと少し離れた場所に下ろしてもらうのは家を特定されないための対策だ。
相変わらず綺麗なマンションだなぁと思ってると初めて来たらしい上鳴は「ホテル見てぇ!!」と少し興奮気味だった。
俺も初めて来た時そう思ったからわかるぜ!
エレベーターで上がり爆豪は玄関の鍵を開け俺らに構わず中に入って行くのを追って入る。
「へぇ!さすが爆豪!玄関から整頓されてんのな!」
感想を言いながら爆豪の後をついてリビングに向かう上鳴について行くとまた上鳴は感嘆の声をあげた。
男の一人暮らしにしちゃァ広くて綺麗に整頓されたシンプルでありオシャレな部屋。
「ほぇ~!これが爆豪んちかぁ!」
「うっせぇな」
前からいい部屋住んでるよなぁと思ってたけど、なんか前来た時から少し雰囲気が変わったような気がする。
…あ、花だ。
サイドボードの上に可愛らしく置かれてる爆豪には似つかわしくねぇ花。
「花なんて飾ってたっけ?」
「あ?そりゃなまえの趣味だわ」
いつだったか遊びに来た時、男らしい置物持って来てやったら「ンなもんいらねぇわ!持って帰れ!!」ってすげェ剣幕で言われたのを覚えてる。
花だけじゃねぇ。
キッチンにはお揃いのマグカップが片付けられてるし、洗面所には歯ブラシが2本置かれてる。
多分片付けられてるだけでみょうじのモンがここにはたくさんあるんだと思う。
「人のモンが家にあんのは落ち着かねぇ」って言ってたのにな。
爆豪も彼女とお揃いのモン使うんだなぁとか、 爆豪にとってみょうじは気を許せる存在なんだなと思うと微笑ましくなった。
「……た…だね」
「……だろ」
……誰の声だ?何の話してんだ?
「みんな泊まってたなら申し訳ないし帰ろうかな」
「なんでだよ、寝すぎなんだよコイツらは。そろそろ蹴り飛ばして起こしたるわ」
この声は爆豪とみょうじだ。
あー、そうか。昨日爆豪と上鳴と飲んで爆豪んちで喋っていつの間にか寝ちまったんだな。
でみょうじが爆豪んちに来て2人で喋ってんのか。
頭はボヤっとしながらも2人の会話をしっかり聞き取ってる。
だけど酒も飲んだし眠過ぎて起きれねぇ…。
「寝かせてあげなよー、2人とも疲れてるんだよ」
「こいつらいんの邪魔だろーが」
「もう、またそんなこと言って」
寝てる俺たちを気遣って小声で喋ってるけど、静かな家の中に2人の声は響く。
わりィ爆豪、俺もうまた落ちそうだ…。
「いつ起きるかわかんねぇから、なまえのこと抱きしめらんねぇだろ」
「~~~それはずるだよ、勝己くん…」
意識が落ちる前に聞いたみょうじの声は顔を見なくてもわかるくらい照れてて、爆豪の声は、聞いたことがねぇくらい穏やかで、そんなこと言うのかよと思いながらもみょうじのこと心底大切で好きなんだとわかる。
でもそれも普段聞いたことがない声だったからから、ギリギリ聞こえたのか、夢ん中なのかもうよくわかんねぇや。
ただやっぱ爆豪とみょうじは誰にも邪魔出来ねぇくらいお互いのことが大切でお似合いだと思った。
そんで俺と上鳴はそれから少し後に本当に爆豪に蹴り飛ばされて起こされた。
fin.