短編
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プロヒーローになって3年目の春。
新年度ってだけで忙しいっつーのにそれに乗じてヴィラン共も活発になりやがってほとんど家にも帰れてねぇ。
まァ帰っても寝るだけだ。だったら事務所で寝ちまった方が時間の無駄はなくていい。
それに会いてぇと思うヤツには仕事で会えとる。事務所も近ェし、チームアップで行動することも多い。
だがそりゃァヒーローとしてだ。
俺にだけ見せるあのツラ、最近見れてねぇ。
ンなこと考えてっと携帯が震えてメッセージが受信される。画面を見ると今まさにツラ思い出しとったなまえからだった。
「今日帰れそう?」
…デスクの書類に目をやると急ぎのモンは全部終わった。なんならデスクワークの方は余裕がある。
人員にも余裕はあるし、今日は帰れるようにジーパンに頼んでみっか。断られるこたァねぇと思うしな。
「なァ、今日帰りてンだけど」
「帰ればいいだろう」
ジーパンのとこに行って声をかけると目を通しとった書類から顔を上げて俺の言葉にその一言を返して来る。
よく周り見て状況判断する上司だ。仕事の進捗なんかの事務所内部のことなんざ手に取るようにわかってんだろ。
「そもそも君は働きすぎだ。帰れと言っても帰らず事務所で寝泊まり。帰りたいと言ってくれて安心したよ。向上心はいいことだが休息も仕事のうちだぞ」
「わーってる」
ひとまずジーパンに礼を伝えると「今すぐ帰るといい」って言われたンでなまえに「もう終わる」とメッセージを送った。
仕事もキリよく終わってっから遠慮なく帰宅準備を始めっと「ダイナマ何日ぶりの帰宅だ?」「たまには休まないと体壊すぞー」っつって先輩たちはヘラヘラと笑って俺を送り出してくれた。
事務所を出て携帯を見ると「私も終わるから事務所行くね」となまえからのメッセージが届いたンで、時間もあるしなまえの事務所も近ェから迎えに行ってやることにした。
(……すっかり散っちまったな)
なまえの事務所の前に着いてライトアップされた桜の木を見上げりゃァ、この前まで満開だった桜が新緑に変わってる。
そーいやなまえが花見してぇって言ってたな。結局時間を取ってやることも出来ねぇまま見頃はとっくに過ぎちまった。
お互い仕事が軌道に乗って忙しいのは事実だが、それでも時間とってやれればよかったな。
…アイツはワガママ言わねぇから、我慢させちまってンだろーな…。
「勝己くん来てくれてたの!?」
私服に着替えて事務所から出て来たなまえに目を向けると驚いたツラしたあと嬉しそうにしながら俺に近付いてくる。
ヒーロースーツじゃねぇなまえを久しぶりに見た気がする。
そりゃそうか。プライベートで会うこと自体が久しぶりだ。
「ヒーロースーツじゃない勝己くん久しぶりでなんか新鮮!」
「仕事でしか会ってなかったからな」
同じこと思ってたんかと笑っちまう。
なまえが笑ったツラ見てやっぱ俺はなまえに心底惚れとるンだと再認識させられる。
久々に会った恋人だから余計にだ。
「なまえ」
「ん?」
「花見すんぞ」
「ふふ、もう葉桜だぞ?」
「…いいから行くぞ」
「あ、場所私決めていい?ちょっと付き合ってほしいんだぁ」
「おー」
満開の桜で花見はしてやれンかったけど、葉桜だと言いながらも嬉しそうにするなまえを見て気分だけでも花見してやれんなら言ってよかったと思うが、俺の隣を歩きながら珍しくちょこちょこ携帯を触っとんのを見て「仕事か?」と聞くと「あ、ううん。ごめん」と何かを隠すような返事をしたのが少し引っかかる。
いつもと違ェから気になっただけでそれをやめろだとかは思わねぇけどよ。
「お腹空いたね!近くのお店でご飯買って行こー!」
仕事でチームアップ組んで隣歩いてる時ァ、雑談はしても仕事中だからこんな気の抜けた子供見てぇなツラで笑うことはねェからな。
コロコロ表情が変わるなまえ見てっと飽きねぇしつられちまう。
店に着きゃァ2人だっつーのに次から次にこんな食えんのか?って量をカゴに入れていきやがる。
「おい、こんな買って食えねぇだろ」
「え…っと…お腹すいたから食べられます」
「なまえてめェ、なんか隠しとんだろ」
「う…、い、いいから私に任せてよっ!」
もうこの事は喋らねぇとでも言うように歩く速度を上げやがった。
隠し事が下手でそこ突くと慌てんの見んのも俺ァ好きなんだが、なんか考えてんだろうし、これ以上は詮索しないで付き合ってやるか。
何人で食う気だっつーような食いモンと飲みモンを買って袋に詰めたのを持ってやると、断ったところで意味ねぇことを知っとるから素直に礼を言ってくる。
「ここの先だよ!」
しばらく話しながら歩くと河原に着く。
夜も遅いっつーのに複数人の騒ぐ声が聞こえて、時期が外れたとは言えこういうヤツらはおるんだなと思っとったら「わーーー!!お待たせーー!!」っつって声の方に向かってなまえが走ってく。
「お!!来た来た!!」
「ばくごーー!!みょうじーー!!」
俺となまえを呼ぶそいつらは元A組の見慣れた顔だった。
なんでこいつらここにいんだよ。つーか隠してたのこれかよ。
ちょこちょこ携帯いじってやがったのもこいつらと連絡取り合うためで、この大量の買い物もそのためか。
「今日はみんなで集まる約束してたの!いつも頑張ってる勝己くんにはサプライズでしたー!」
「隠し事出来ねぇヤツがやることじゃねぇな」
「手厳しい!」
先に来てた連中が準備してたンであろうシートに座りゃ、麗日が俺たちの分の飲みモンを準備して渡して来たンを受け取る。
それこそ仕事でそこそこ顔合わせるヤツもいりゃァ、久しぶりにツラ見るヤツもおいる。
仕事柄、なかなか全員で集まることなんざ出来ねぇのによくもまぁ集まったもんだ。
「かっちゃん最近家帰ってないんだって?」
「そーいうてめェはどうなんだよ、デク先生ェ」
「デクくんも生徒のことになると時間忘れとるって相澤先生困っとったよ!」
「どっちもどっちじゃねぇか!さすがA組の問題児!」
高校卒業して3年経っても集まりゃギャアギャア騒いでンのはあの頃と何も変わりゃしねぇ。
自分でも不思議だが、うるせぇとは思ってもそれが嫌だとは思わねぇ。
この場所が居心地いいと思ってンだ。うぜぇから絶対ェ言わねぇけど。
「楽しいね!」
「…まァな」
隣から視線を感じて見るとなまえがにこにこ笑いながらこっちを見とった。
俺の言葉にもっと嬉しそうに笑いやがるから、視線を外したまま空いてる片手でなまえの視界を塞ぐと「勝己くんの顔見たいのに~」っつって不満をもらした。
「おっ、みんなそろそろだぜ!」
切島の声にバタバタと全員が動き始める。なまえも立ち上がって場所移動すっと俺の前に座り直した。なんだァ?
他のヤツらも俺の向かい側に移動して集まってきやがる。
「勝己くん!」
「爆豪!」
全員の俺を呼ぶ声が重なって、こいつらが投げた紙吹雪が降って来る。
葉桜になった桜の木と重なって満開になったみてぇ…。
目の前にはすげぇ嬉しそうななまえとダチたちがいる。
「お誕生日おめでとう!!!!!」
その言葉とこの状況を理解すンのに少し時間がかかった。
忙しくしてたせいで今日が何日かも把握してなかったし、自分の誕生日なんて頭の隅にもなかった。
あぁ、そうか。こいつら日付またいで祝うために今日集まってくれたんか。
「……あんがとな」
「ばくご~~!!!」
素直に礼を伝えると上鳴、切島が飛びかかって来やがってうぜぇったらねぇ。
サプライズ大成功だと女同士で喜んでるなまえと他の連中を見て、柄にもなくコイツらと同期でよかったと思った。
明日っつーか今日も仕事だっつーのにいつまでも解散する気がねぇヤツらを見兼ねた委員長が「いつまでもここで騒いでいたら迷惑になる!みんな朝から仕事だろう!名残惜しいが今日は解散にしよう!爆豪くんおめでとう!」っつってまとめて、帰る時にも全員俺に祝いの言葉をくれた。
「勝己くんのお祝いだったのに私もいっぱい楽しんじゃった」
「こういうのは楽しんだモン勝ちだろ」
なまえと二人になって帰り道を歩く。
多分今日のことを企画してあいつらに声かけたンはなまえだろーな。
「あんがとな」
「ううん、集まってくれたみんなに感謝だよ」
「そーだな」
「勝己くんがお花見って言うから急きょみんなに移動してもらってね。焦っちゃった!」
やっぱ俺が花見するっつったンがお前のためってわかってなかったんか。
そりゃそうだ、わかるなら付き合う前だって俺の好意に気付いてたはずだ。
他のヤツらは気付いてたっつーのによ。
しかもジーパンにも今日は俺が帰るように頼んどったらしく、帰りたいって言った時に安心したって言ってたンはそういうことかよってやっとわかった。
「勝己くん、改めてお誕生日おめでとう!」
立ち止まって俺を見上げて笑うなまえは月明かりに照らされて、眩しいのに儚く消えちまいそうで抱きしめたくなった。
なまえを引き寄せて小さくて細っちい体を抱きしめると「わっ」って色気もなんもねぇ驚いた声を小さく上げた。
「……なまえ」
「なぁに?」
「好きだ」
「ふふ、私も好きだよ」
「笑ってんじゃねぇぞ」
「だって誕生日なのは勝己くんなのに私がプレゼントもらっちゃったみたいなんだもん」
嬉しそうな声させやがって。あぁクソ。昔からなまえには敵わねぇな。
いつだってお前には笑っててほしいって思う。そんなん思うの世界中でてめェだけだわ。
なまえの顎を上げて軽く唇を重ねて離すと真っ赤なツラしてやがって、俺にだけ見せるその表情に自然と口角が上がる。
「誕プレもらったわ」
「~~~もうっ!ばかっ!!」
来てくれたあいつらにも一応礼のメッセージ入れとくか。
ンで、俺の知らんとこで俺のために動いてくれとったなまえには今度は俺が時間作ってしてぇこと付き合ってやる。
恥ずかしがってンのを誤魔化すためにずっと「勝己くんのばか」っつって隣を歩くなまえを愛おしいと思った。
……あんがとな。
2025.4.20
Happy Birthday
