短編
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文化祭の出し物、それから担当が決まって空き時間にはダンスの練習が始まった。
今までダンスなんてほぼした事ないからステップを覚えるだけで一苦労。
「違う違う、そこはもっと力強くグッ!」
「えっと…グッ!」
「そう!それ!今のめっちゃいい!」
三奈ちゃんの教え方はすごく厳しい。
それはダンスが好きだからこそなんだと思うし、厳しい分出来たらすごく褒めてくれて教え方が上手い。
だから覚えるのに苦労はしてるけど苦痛だとは少しも思わない。むしろ出来るようになることが楽しいと思えるし、私以外のダンス未経験者もメキメキと上達していってるから三奈ちゃんは本当にすごい。
「よし!今日はここまでにしてまた明日やろー!」
三奈ちゃんのその声でダンス隊は解散となった。
他科の生徒たちに喧嘩を売られたし、勝己くんが鼓舞してくれたからダンス練習に手を抜くつもりもないけど、それで元々やっているトレーニングなんかを疎かにしては元も子もない。
勝己くんも早寝なのに最近は毎日遅くまでドラム練習してて疲れてるだろうし、明日はひとりで走りに行こうかな。
そうやって考えてたらバンド隊が練習している部屋から怒鳴り声が聞こえた。
「何度言わせんだアホ!死ぬ気でやれや!!」
見なくたってすぐにわかる、勝己くんだ。
「ここすげぇ難しいんだってぇ!」って上鳴くんの弱気な声も聞こえて来て、そこからみんなが励ます声と耳郎さんがアドバイスをしてる声も聞こえる。
「ここ初心者はつまずくところだから、今よりスローペースにしてもう1回やろ!」
そしてまた演奏が始まる。
演出隊もバンド隊もいい物にする為に頑張ってる。ダンス隊も、私も負けられないなって士気を上げてもらった。
みんなでいいものにして、いい思い出にしたい。
また明日から頑張るぞっ!
「んーーーー!!やるぞっ!!」
次の日の朝早く外に出ると少し肌寒くてもうすぐ冬だなぁなんて思いながら軽くストレッチをして体を解してから走り始める。
私も入学したての頃に比べたらこの半年で体力がついたと思う。
当時は頭がクラクラして来るような治癒も今じゃ楽に出来るようになったし、自己治癒も出来るようになって少しは戦えるようにもなった。
組手は勝己くんとお茶子ちゃんに相手してもらってまだまだ訓練中だけど…それでも少しは強くなったと思いたい…!
出来るようになったことよりもやることの方が山積みだなぁ。
これを苦痛に思わないのは一緒に頑張ってる仲間がいるからなんだと思う。
私ひとりじゃきっととっくに折れてた。
「…エリちゃんはずっと一人だったんだよね」
この前初めて会った、インターン組が関わった事件で保護された女の子。
ずっとひとりで全てを抱え込んで自分を犠牲にせざるを得なかったって聞いた。
この前遊びに来てくれたエリちゃんは今までのこともあったり、初めての場所や人に緊張していたけどとても可愛らしい女の子だった。
エリちゃんも文化祭に来てくれるって言ってたし、楽しんで笑ってほしいなぁ。
「もっともっと頑張らなきゃ!!」
気合いを入れ直して走ってると緑谷くんとオールマイトが喋ってる姿が見えた。
何を話しているかは聞こえないけど遠くからオールマイトと目が合ったから、喋ってる途中とは言え無視するのも良くないかなと思って2人に近付いた。
「オールマイト、緑谷くん!おはようございますっ!」
「みょうじ少女、おはよう。こんな時間に走り込みかい?」
「文化祭のダンス練習なんかでこの時間が1番自由に動けるので」
ダンス練習が始まる前から勝己くんとトレーニングしたり話したりして朝早く起きるのには慣れてるからいつも通りと言えばいつも通りなんだけど。
というか2人はこんな朝早くに何をしてたんだろう?
「トレーニング中?」
「あ、えっと…あのその」
「そうだよ、緑谷少年に少し指南をね」
「オールマイトと緑谷くんの個性似てますもんね!あっ!緑谷くん怪我してるっ!」
緑谷くんを見ると右手の中指を怪我してる。また激しい訓練してるんだなぁ。
勝己くんの時みたく喧嘩での怪我じゃないからいいけれど…。
彼の手を包むようにして触れて個性を使って治癒をする。このくらいの怪我ならほんの数秒で治せるようになった。
「う、わああ!!みょうじさん!!こんなの大した怪我じゃないからっ!!かっちゃんに見られたら殺される!!」
「怪我は怪我だよ。勝己くんに殺されたくないなら怪我しないように!」
「うん、気を付けるよ…ありがとう」
「じゃあ行くね!訓練頑張ってね!またあとで!」
貴重な訓練の時間を邪魔するのは良くないし、私もみんなが起きるまでに寮に戻りたいから早めに話を切り上げて二人に手を振って走り込みの続きをする。
帰ったらお風呂に入って学校の準備をしなきゃ。今日の朝ご飯なんだろ、お腹すいたぁ。勝己くん起きたかなぁ。練習始まってから会う時間減っちゃったし…顔見たいなぁ。
気付けば残りの道程は勝己くんのことを考えて走っていた。
「遅ェ!!!!!」
寮に帰った私を出迎えたのは不機嫌丸出しの勝己くんだった。
私の見たい勝己くんの顔じゃない!
談話室にいるのはまだ勝己くんだけで、他の人と何かあったわけでも無さそうだし、私も昨日はお互い練習の終わる時間が違かったから会わないまま寝て、そのまま今に至るわけだし心当たりがない。
「走りに行ってた」
「見りゃわかるわ」
「途中でオールマイトと緑谷くんに会ったよ」
「ンな情報どうでもいいンだよ!」
オールマイトの話しを出してもダメかぁ。それは困った。
なんでこんなに不機嫌なんだろ。
私に遅いって言ってきたってことは私が原因…?
「…私のこと待ってた?」
「……フツーひとりで行くか?」
「勝己くんここのところ毎日夜遅いでしょ?疲れてるかなと思って」
「ナメんな、余裕だわ」
……わ、そっか。勝己くんが不機嫌だったのは私と一緒に行きたかったからか。
こんなこと言ったら怒られるから言わないけど寂しがってる勝己くん可愛い…!
キュンとしたのと、嬉しいのでにやけちゃいそうになるのをグッと堪えて勝己くんの袖を掴んで顔を見るとやっと目が合った。
「明日は一緒に行こ」
「…最初からそーしろや」
「勝己くん、そろそろ起きてるかなと思ったら顔見たくなって急いで帰って来た」
私が言い終わると勝己くんがハァァァと溜息をつきながら私の肩に頭を乗せて来たからびっくりした。
普段こんなことしないのに今日は甘えたい日なのかな。
こんな勝己くんは貴重だからたまには私がいっぱい甘やかしてあげたいけど今私走って来たばかりだし、談話室だしって思ったら恥ずかしくなった。
「あ、あのっ私今汗くさいからっ」
「…臭くねぇわ、いいから黙っとけ」
「みんな起きて来ちゃうよ」
「俺らが付き合ってンの知ってんだから見せつけりゃいいだろ」
これは勝己くんが満足するまで何を言ってもダメなやつだって思うと同時にこうして私にだけ見せてくれる姿が嬉しくて、胸がキュンとして思わず勝己くんの頭を抱きしめた。
この勝己くんは私だけが知っているから「秘密がいい」って言うと少しの沈黙の後に「……クソ」って小さな声が聞こえた。
しばらくお互いにそのままの状態でいて鼻をかすめる勝己くんの匂いが安心出来て落ち着く。
機嫌悪くてトゲトゲした雰囲気もなくなったみたい。
「充電できたわ」
そう言って顔を上げた勝己くんはイタズラっ子みたいに笑うから、さっきまでの甘えてる時とのギャッブが激しすぎて私の心臓がもたない。
この人は本当にずるい。こんなの好きになった頃よりもっと好きになるに決まってるもん。
「私も甘えんぼさんな勝己くん見れて嬉しかったよ」
「甘えてねェだろ、ざけんな」
「んふふ、今度いっぱい甘やかしてあげるからねぇ」
「なまえてめェいい度胸してやがンな」
「だって勝己くんの彼女だもん」
いつもは勝己くんが余裕で優位に立ってて、それが嫌なわけじゃないけどたまには私だって…!と思ってたから今日はちょっとやり返せて嬉しい。
バツが悪いのか「はよ風呂入って来いや!」と怒鳴られたから「はーい」って笑いながらお風呂場に向かった。
学校も帰る場所も一緒だけど少しでも長い時間2人でいたいと欲が出てしまう。
なるべく我慢してるつもりだったけど、でもそれが私だけじゃなくて勝己くんもだったのかなって思ったら、嬉しくて幸せで頬が勝手に緩んじゃう。
私も充電出来ちゃったみたい。
次の日から練習前まで日課だった勝己くんとのトレーニングや話す時間を再開させて、昼間は学校に行って空き時間や放課後は文化祭の練習という日々を送ってあっという間に明日は文化祭の日。
出来ることは全部やったからあとは私たちも楽しもう!
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