君に贈る花言葉。
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勝己くんとお付き合いすることになって数ヶ月が経った。
最初は名前で呼ぶことに慣れなくて少し恥ずかしかった。
勝己くんの低い声でなまえって呼ばれることにも慣れなくて、恥ずかしくて、それ以上に嬉しくて胸がきゅうっとなったのを覚えてる。
勝己くんは雄英が全寮制になったので寮に入り、私は前みたいに1人で登下校するようになった。
外を出歩く時は連絡を入れる約束をした。もう何ヶ月も前のことなのに勝己くんは心配症だなぁって思う。
それから夜に電話をすることが日課になった。
会えないことが多くなったから私に気を遣ってくれてるのかもしれない。
電話は勝己くんからかかってくる事が多い。
彼は夏休み中とはいえとても忙しいから、時間を見つけて電話をくれる。
「無理しなくていいよ」と言えば「俺に無理なんてこたァねぇんだよ」と言われた。
だけど勝己くんから着信が来るとそれだけで嬉しくなるのも事実で、彼の名前の並びを見るだけで頬が緩んでしまうなんて、私は自分が思っている以上に勝己くんが好きみたいだ。
勝己くんは、私のことをすごく大切にしてくれてるのがわかる。
思えば出会った時からずっと自分の時間を削ってまで私と一緒にいてくれている。
ヒーロー科は他の学科に比べて習得しなければいけないことが多くて、もちろん学校外でも自主練は欠かせない。
勝己くんだって例外ではない。
すごくすごく忙しくて大変なはずなのに、その中で私との時間を作ってくれる。
それが勝己くんの負担にならないか聞いた時は「余裕だわ、余計なこと考えてんじゃねぇ」と言われてしまった。
負けず嫌いで弱い所を見せない、強くて優しい彼だからその時は私がストッパーになるようにしなければいけない。
大好きな彼だから、彼のためになることをするんだと心の中で誓う。
夜。家族でご飯を食べて、お風呂に入ってリビングで家族と談笑した後に自室に戻る。
学校から出された課題を広げて、よし!と気合いを入れて課題を進めていく。
カリカリとシャーペンがノートを走る音だけの無音の部屋に携帯が振動する音が響いて顔を上げると30分経っていた。
今日は集中出来たなぁと思いながら振動を続ける携帯を見ると「爆豪勝己」という文字が表示され、彼からの着信を知らせていた。
毎日のように電話をしていても彼からの着信は嬉しくなって頬が緩んでしまう。
「もしもし」
「はよ出ろや」
「ごめん、課題やってた」
「…いい事でもあったんかよ」
勝己くんに言われて、電話が嬉しかったのが出ちゃってたのかなと思うと恥ずかしくなると同時に隠し事は出来ないなぁと思う。
「勝己くんが電話かけて来てくれたから」
「毎晩電話してんだろーが」
「だって声聞けるの嬉しいんだもん」
私がそう言うと電話の向こうからチッと舌打ちをする音が聞こえた。
きっと照れてるんだと思ってつい笑ってしまうと「何笑っとんだ!」と怒られてしまった。
「次の日曜の午後、予定空けとけや」
「え?」
「会ってやるっつっとんだ」
「いいの?」
「そう言っとんだろ」
「嬉しい!」
そこからはいつも通り、今日はこんなことがあったよとか他愛のない話をした。
いつも話に付き合ってくれるし、私がした話をしっかり覚えていてくれるのも嬉しい。
最近は会うことは少なくなったけど、それでもこうして時間を見つけては電話をくれて私を思ってくれる。
それだけで私はすごくすごく幸せで、毎日毎日勝己くんへの気持ちが大きくなるんだ。
「勝己くん、大好き」
「てめ…」
「なんでもない!おやすみ!」
恥ずかしくなって一方的に電話を切ってしまった。
今、目の前に勝己くんがいなくてよかった。
見なくてもわかるくらい、私の顔は真っ赤だと思うから。
課題の続きをしなくちゃ。
日曜日はなんの服着ていこうかな。
早く勝己くんに会いたいな。
Side 爆豪
高めで、かと言って耳障りじゃねぇ、柔けぇ声。俺の好きな声。
全寮制になってからは毎晩なまえと電話をする。それが気が休まる瞬間でもあった。
アイツはいつも楽しそうに喋る。それに相槌を打つのがほとんどだが、あまりにも楽しそうに喋るもんだからこっちまで笑っちまう。
なまえはいつも俺の心配をする。
「勝己くんの負担にはなりたくない」それがなまえの口癖だ。
負担どころか、なまえがいるから何だって出来ると思える。俺の原動力だ。
そんな小っ恥ずかしいこと本人には言ってやらねぇが。
日曜は久しぶりになまえに会う。
寮生活に訓練なんかで会う時間がなかなか取れねぇが、なまえは1度だって不満を言ったことがねぇ。
「私のことは気にしないでいいんだよ!頑張ってる勝己くんがかっこよくて好きなんだから」
そう笑顔でいるなまえに甘えちまってんのは俺だ。
今度会う時は思いきり甘やかしてやると決めている。
「クソがッ!!!!」
普段は休みの日曜に急に訓練が入っちまった。
仮免試験前だから仕方ねぇとはいえ、なんでよりによって今日だ。
14時には行けるだろうと事前になまえに連絡は入れたが、訓練が長引いちまって16時30分になろうとしてやがる。
雄英近くの公園にいると2時間前に来ていたメッセージを確認して、急いで着替えて外出許可書を記入して雄英の門をくぐり抜ける。
こう急いでる時にいちいち外出許可書を書かなきゃいけねぇのは面倒くさくてしょうがねぇ。
訓練後で多少疲れちゃいるがなまえが待ってる公園まで走る。
個性使えりゃ速ぇのによ。
俺が走ってまで女のとこに行く日が来るなんざ誰も思わねぇよな。
自分でも信じらんねぇが、そんだけなまえに惚れとんだ。
公園に着くとなまえはベンチに座って握りしめた携帯を操作するんでもなくただ見てやがる。
「なまえ」
俺が名前を呼ぶとハッとして顔を上げて、俺の顔を確認するなり勢いよく立ち上がって安心したような、泣きそうな顔で近付いて来た。
「よかったぁ。事故とかに巻き込まれたんじゃないかって心配してたぁ…よかったぁ…」
「訓練長引いて遅くなった」
「急いで来てくれたの?」
目に涙溜めながら笑うなまえを愛おしいと思う。
コイツだけだ。俺が今まで思ったこともねぇ感情にさせんのは。
鞄からハンカチを取り出して俺の額を拭いながら「ありがとう」と眩しいくらいの、それでいて優しい顔で笑う。
それだけで急いで来た甲斐があった。
なまえをよく見ると女みてぇな格好してやがる。
コイツに似合う落ち着いた服装だ。
普段はほとんど制服しか見たことねぇからな。
髪もいつもよりも複雑に結ばってる。
近くまで出かけるつもりでいたから気合い入れて来たんか。
この時間からじゃどこにも行けねぇな。
「せっかくそんな格好して来たのにどこも行けなくなっちまったな」
「勝己くんに会えたのが一番嬉しいからいいの」
コイツは素直だから本心で言ってるんだとわかる。
なかなか時間も取れなくて我慢させてるし、俺も会いてぇと思うことが増えた。
久しぶりになまえの顔が見れて、俺も珍しく浮かれとるんだと思う。
頬に触れると餅みてぇに柔けぇ。
「似合っとる」
「…わ」
俺の言葉を聞いてなまえの顔が一気に赤くなる。
こっちまで柄にもねぇこと言って恥ずくなるからやめろや。
「勝己くんに褒められると思ってなくて…」
「二度と言わねぇわ!」
照れながら笑う顔を見て抱きしめたくなるが、誰もいないとはいえ外だからなんとか自制する。
コイツを目の前にすると自制すんのに必死だ。
今まで女なんてどうでもよかったのに今じゃなまえがいねぇのが考えられねぇ。
そう思いながら自分のボディバッグを開けラッピングしてある細長ぇ箱を出すとなまえはそれを不思議な顔して見てやがる。
「やる」
「え!?プレゼント!?私に!?」
「他に誰がいんだよ」
「ありがとう…開けていい?」
「勝手にしろ」
あんま時間作ってやれねぇから、なまえが喜ぶことを俺なりに考えた。
プレゼントなんて贈ったこともねぇが、見た瞬間に似合うと思って即決した。
「わぁ!可愛い…お花のネックレスだぁ!」
花がモチーフになってるシルバーネックレス。
想像した通り嬉しそうな顔をするなまえに、こんな喜ぶなら安いモンだなと思う。
「あんま時間作ってやれてねぇからな…っおい…!」
俺の言葉を聞いてまた目を潤ませたなまえが勢いよく抱きついてきた。
細ぇ体を抱き止めてなまえの肩に手を置いたのは、しっかり手ェ回したら自分を抑えられねぇと思ったからだ。
「毎晩電話くれるのも、急いで来てくれるのも、勝己くんが私のこと考えてくれるだけで嬉しいんだよ。勝己くんと付き合えて、いっぱい大事にしてもらえてる私はすごくすごく幸せ者だね。勝己くん、ありがとう!」
俺の配慮も知らねぇでなまえは心から幸せそうに笑う。
この笑顔が見たかった。そのために入った事もねぇ店入ってプレゼント用にラッピングまでして、今までの俺じゃ考えらんねぇな。
もう一度頬に触れると甘えてるみてぇに俺の手に頬を寄せてくる。
そんななまえを見ちゃァ、もう衝動には抗えねぇ。
唇に触れるだけのキスをした。
離すとなまえの顔は真っ赤になっとる。
「寂しかったんかよ」
「……勝己くんに会いたくないわけじゃないもん」
会いてぇって本当はワガママ言いてぇはずだ。
でも俺の負担になりたくねぇって気持ちもあって我慢してんだろうな。
「たまにはワガママ聞いてやるよ」
「…もう1回、してほしい…」
「何をだよ」
「わかってるのにイジワルだよ!」
「言わなきゃわかんねぇだろーが」
「~~~キス、してほしい…」
恥ずかしそうに少し唇を尖らせて困ったような泣きそうな顔をして言われりゃ、理性を保つのに必死だ。
だが甘やかしてやるって決めてきた。
会ってやれる時くらい好きな女の願いなら叶えてやる。
片手でなまえの腰を抱き寄せ、もう片手を顔に添えて柔けぇ唇に何度もキスを落とすと俺の胸元辺りの服を握りしめて応えようとするなまえに愛しさが増す。
「…離れたくなくなっちゃうなぁ」
俯きながらボソッと呟いたなまえのか細い声はしっかり俺の耳に届いていたが俺が声を発する前になまえの明るい声が遮る。
「あ、ネックレス付けたい!付けて!」
「自分で付けろや!」
「勝己くんに付けて欲しいの!」
にこにこと嬉しそうにケースから丁寧にネックレスを取り出して俺に渡して来たそれを受け取るとなまえは俺に背を向けネックレスを付けるのに邪魔にならねぇように垂れた髪を束ねて持った。
普段見えねぇうなじが見えて色っぽさを感じる。
あー、クソが…。
なまえの正面に手を回すと「抱きしめられてるみたいで恥ずかしい…」なんて言いやがる。
俺はコイツに試されとんのか?
「もうお前黙ってろ」と制止しながら回したネックレスの留め具をとめる。
「ほらよ」
「わぁ!ありがとう!」
付けてやったネックレスを触りながら喜ぶなまえを見て、思った通りコイツによく似合ってると思う。
俺のセンスに間違いはねぇんだよ。
「…そろそろ帰らなきゃだぁ」
「送る」
「門限ギリギリになっちゃうよ!?」
「俺といる時にてめェ一人で帰らせるわけねぇだろ。送って帰って来たって間に合うわ」
「うん、じゃあお願いします!」
ベンチに置いてある鞄を持って公園を出て駅に向かう。
コイツとこの道を歩くのも久しぶりだな。
寮に入る前は毎日歩いてたっつーのに。
「…………いや?」
「繋ぐならちゃんと繋げや」
「えへへ」
控えめに俺の小指を握って不安そうな顔をして俺の顔を覗き見る。
手ェ繋ぎたかったんか。
控えめななまえの手を握り直すとそれだけでコイツは嬉しそうに笑う。
少し前まで手なんて誰が繋ぎてぇんだよ、歩くのに邪魔なだけだ、そう思ってた。
なまえがそうしてぇって言うなら嫌じゃねぇ。
他の女じゃありえねぇ。なまえだからいいと思える。
俺は心底なまえに惚れてる。もう離してやる気はねぇ。
なまえを送った後の一人の帰り道は慣れた道なのに長ぇ気がした。