君に贈る花言葉。
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時はあっという間に過ぎ、1年が経つ。
お父さんは少しずつ社会復帰をして、今では働きに出れるようにまでなった。
私は今も保育園で働いていて、保護者にダイナマイトとの関係をちょこちょこ聞かれながらも頑張っている。
その大・爆・殺・神 ダイナマイトはヒーロービルボードチャートJP下半期でついにNO.1ヒーローになった。
夢を叶えた彼から事前に教えてもらってはいたけれど、いざテレビで発表されると嬉しくて泣いてしまった。
中継が終わってすぐに電話をかけると「また泣いとんのか」と言われたけれど、勝己くんの声には自信と喜びが滲んでいた。
それから数ヶ月間は多忙を極め、普段のヒーロー活動に加えて取材やらで家に帰れない日も多く、休みもほとんど取れていなかった。
それでも時間を見付けては電話やメッセージをくれる彼の優しさを感じて、私は大事にされていると思うのと同時に彼の体が心配でもあった。
最近はようやく仕事も落ち着いてきて休みを取れる日も多くなって来たので少し安心している。
「明日空けとけ、迎えに行く」
そう電話がかかって来たのは日付が変わる直前。
時間に余裕があったのか、少しだけ話をしてから電話を切った。
彼の声を聞くと頑張ろうって前向きな気持ちになれる。
寝る直前に「お仕事頑張ってね、おやすみなさい」そうメッセージを入れると珍しく「おやすみ」と返って来て、それだけの事で温かい気持ちになる。
勝己くんに会えることが決まってから遠足前の子供みたいに楽しみで、そわそわしながら仕事をしていたから時間が過ぎるのがすごく遅く感じた。
定時になったと同時に退勤して、少しだけオシャレをして来た服に着替えて髪の毛も整える。
付き合いたての頃みたいと思ったけれど、もう何回も寝起きでぐしゃぐしゃなところも見られているのにと少しおかしくなる。
駐車場に出ると見慣れた勝己くんの車が停まっていて、思わず車まで走って助手席に乗ると「コケんぞ」と言われた。
「勝己くんに会えるの楽しみだったの」
「そうかよ」
「いつも私ひとりで喜んでる…」
わざと少しぶすくれてみると沈黙になってしまったので慌てて冗談だよと言おうとしたら、勝己くんが運転席から身を乗り出して私の唇にキスをした。
突然の事で、触れたものと至近距離の勝己くんの顔に一気に恥ずかしくなる。
「…我慢してやっとんだ、こっちは。職場でこれ以上のことされてェンか」
「あ…う、や…刺激強い…」
思わず顔を背けると勝己くんが意地悪く笑う声が聞こえた。
もう、また楽しんでる…。悔しいなぁ…。
車を発進させて夕飯を食べに行き、それから「寄りてェとこある」と言われてどこに行くのかもわからないまま車に揺られた。
車の中ではずっと2人で喋っていて、なかなか会えない時期があったからこそ一緒にいるだけで幸せだなって実感する。
しばらくして着いたのは雄英高校の近くの桜が満開の河川敷。
車から降りると心地の良い風が頬を撫でた。
「わぁ!ここ久しぶりに来た!懐かしいね!」
7年前を思い出す。あの時勝己くんは怒っていたっけ。
それで思わず手を引いてここに連れて来た。
勝己くんは私には他に好きな人がいると思っていて、それが勘違いだと気付いたらバツの悪そうな顔をしていたけれどそれすら私にとってはいい思い出。
「ふふ、あの時存在しない人に怒ってたよね」
「…ンなことばっか覚えてんじゃねェよ」
「だって私嬉しかったんだもん。ここで告白してくれたこと」
不器用な告白をしてくれたあの時のことを忘れたことはない。
今思うとバカな選択をしてしまったけれど、私が笑って過ごせているのは勝己くんのおかげだ。
「なまえ」
名前を呼ばれて振り向くと私に差し出された勝己くんの手には彼には似つかわしくない私の好きなトルコキキョウという花が一輪握られていて、彼の表情はとても真剣だった。
「一生守って、誰よりも幸せにしてやる」
勝己くんの声が響いて胸がドキリと大きく脈打って、まるで時間が止まったみたい。
月明かりに照らされた勝己くんの髪の毛はなんだか眩しくて、赤い瞳は射抜かれてしまうんじゃないかってくらい真っ直ぐに私を見つめていた。
不器用な彼が不慣れな言葉を、この場所で、突然口にしたから意味を間違えて解釈してしまっているんじゃないかと自分を疑う。
だって、なんの前触れもなく突然こんなことを言うなんて、まるで…
「結婚すんぞ」
嬉しくて、嬉しすぎて涙があふれた。
いつかって思っていたけれど、今日こんなふうに言われるなんて思ってもみなくて。
その言葉を口にしてくれただけでも嬉しいのに、彼は嘘をつかないから一生をかけてこの約束を守ってくれるんだと思う。
彼の手からトルコキキョウを受け取って、やっと花をくれた意味を理解した。
不器用な彼なりの柄にもない愛情表現。
胸がドキドキして、きゅうっとなって、嬉しすぎて苦しいくらい。
私の頬に触れて涙を拭ってくれる手があたたかくて優しい。
「ふふ、勝己くんがそんなに私に惚れてるなら結婚してやるよ」
「ハッ、生意気」
勝己くんが笑いながら私の頬をつねるけれど、全然痛みはなくて、優しさと愛情が詰まっている気がした。
それから自分のジャケットのポケットから小さな箱を取り出していて、さすがの私でもそれが何かわかって嬉しさでまた涙があふれた。
箱の中に入った指輪を取り出すと私の左手薬指にはめてくれる。
きらびやかで、でも繊細な指輪。
いつの間にか私の指のサイズを測って、忙しい中選びに行ってくれたんだと思うとそれだけで幸せな気持ちになる。
「勝己くん、ありがとう…私、すごく幸せだよ」
「バカか。ンなモンじゃ足りねェんだよ」
「幸せすぎてバチが当たらないかなぁ」
「だから一生守ってやるっつったろ」
そんな事を簡単に言ってのけるのはあなたくらい。
勝己くん、完璧主義者のあなたのことだから私が出会った時にたった1回だけトルコキキョウが好きって言ったことを覚えていてくれたんだよね。
あの時私は「感謝」と「希望」の花言葉をあなたに贈ったけれど、今だってその気持ちは変わってないんだよ。
私が過去を乗り越えられたのも、今こうして笑ってあなたの隣にいれることも、全部全部あなたのおかげで感謝してもしきれない。
何度も何度もダメだって思った時、あなたが私を照らして前を向かせてくれる希望だったんだよ。
それから今も。慣れない言葉でプロポーズをして私にこれからの希望をくれた。
ねえ、勝己くん。
私がどれだけあなたを好きか知ってる?
この気持ちはあなたと同じだけど、あなたにだって負けないんだよ。
「引くくれェ大切にしてやるから覚悟しとけや」
「もうずっと大切にしてもらってるよ」
「だからもっとだわ、バカなまえ」
「うん、ありがとう」
2人笑って、どちらからともなくキスをした。
今までで一番、甘くて、とろけそうで、優しくて、幸せなキス。
いろんなことがあったよね。
勝己くんと出会って、恋をして、分かれて、再会して、たくさんの困難を乗り越えた。
でもこれからもいつだって、勝己くんと一緒ならなんだって乗り越えていけると思うんだ。
「私がトルコキキョウ好きなこと覚えててくれたんだね!」
「…まァな」
「えへへ、嬉しい!帰ったら飾らなきゃ!」
不器用で、でも優しくて、なんでも完璧にするあなただから、きっとトルコキキョウの花言葉も調べたんでしょう?
「感謝」と「希望」以外の花言葉。
「勝己くん、だいすき。これからもよろしくお願いします」
「あなたを思う」「永遠の愛」
私からもこの先ずっと君に同じ花言葉を贈らせて。
fin.
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