君に贈る花言葉。
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私と勝己くんの熱愛報道が出てから3週間程が経った。
ネットでは「あのダイナマイトが夢中になる女性ってどんな人!?」「ダイナマイトってあんな感じだけど大事にしてくれそう」「車内キスしてるダイナマイトかっこよすぎる」とか、私に対して羨むようなコメントはあったけれど、批判などはほとんどなかった。
それは普段の勝己くんの活躍のおかげだったと思う。
もちろんテレビのニュースでも取り上げられていたのでお母さんも知っていて、キスしてるところを見られた恥ずかしさでどうしていいかわからなかったけど「気をつけなさい」と心配そうに言われてしまったので頷くしかなかった。
職場に行くと先輩がコソコソと私に駆け寄って来て「あの報道の女性ってみょうじさん?」と聞かれたので苦し紛れに否定したら、あっさりと信じてくれて胸を撫で下ろしたのもよく覚えてる。
勝己くんとは報道前とは変わらず、仕事が早く終われば会っている。
前と変わったことと言えば、合鍵をもらったので休みだったり勝己くんより早く帰れる日は夕飯を作って待ってるくらいだ。
勝己くんはなんでも器用にこなすから最初は手料理を振る舞うのもドキドキしたけど、いつも美味いと全部食べてくれるから嬉しくなる。
世の中はクリスマスとお正月の2大イベントを終え、ようやく落ち着きを取り戻し普段の生活に戻ろうとしている。
私は仕事がお休みなので久しぶりに一人でショッピングにでも出かけてみようと思い、電車に乗って隣街まで来た。
大きなデパートに入って洋服やアクセサリーを見たり、スポーツショップに入ってみては登山コーナーを見て勝己くんはどういうのを使うんだろうと見てみたりした。
オシャレなカフェに入って軽食を取りながら、外にある大型モニターに目をやると先日の勝己くんの活躍がニュースになって流れていて彼の姿を見て思わず頬が緩んでしまう。
きっと今も街のためにヒーロー活動に勤しんでいる頃だ。
他のニュースに切り替わり、自分の携帯に視線を戻す。
路地に可愛い雑貨屋さんがあるみたいだからせっかくだから寄ってみよう。
初めての道なので地図アプリを出しながら目的の雑貨屋を目指す。
隠れ家的なところなのかな、路地の奥の方にありそうだなぁ。
あ、曲がるのここかなと立ち止まって地図を確認する。
「きゃっ」
突然前から人が勢いよくぶつかって来て、堪えきれずに道に倒れてしまった。
咄嗟に手を付いたら手首が痛んだ。
「あー、痛ってぇなぁ。今日はダイナマイトは一緒じゃねぇ、よな」
背筋が凍った。もうすっかり忘れていた。
でもその声を聞いてすぐに恐怖が蘇る。
恐る恐るその声の主を見ると恐怖で体が動かなくなった。
「6年振りだなぁ、女ァ。元気だったかよ、なぁ」
「あ…な、んで…」
なんでこんなところにいるの。
6年前のあの男。
あの時は勝己くんと切島くんが助けてくれたけど、今はひとりだ。
それにダイナマイトと一緒じゃないことを知っていたような口ぶりだった。
計画してここにいた…?
執着心の強い人だと言われていたのを思い出す。
まさか、6年も経ってるのに…?
体は金縛りにでもあったみたいだったけど思ったよりも頭は冷静だった自分に驚いた。
勝己くんに連絡を…手、動け…!
「久しぶりの再開だからよォ、積もる話もあんだよなぁ!」
「い、いや…っ! 」
動かない体を持ち上げられて連れて行かれる。
どうにか勝己くんに私がここにいるって伝えないと…!
「離して!離し…ああっ!!」
「少し寝てな」
抵抗するために精一杯暴れたら身体中に突然強い電流が走って意識を失ってしまった。
きっとこの人の個性だ。
次に目を覚ました時には手足が後ろで縛られていて口も塞がれていた。
まだ体が痺れている。
辺りを見回すと高い鉄塔の上にいるみたいだ。
「起きたかよ」
「ぐっ!」
「つくづく計画通りに行かねぇよ、テメェらはよぉ」
髪の毛を鷲掴みにされて痛みが走る。
この人はなんの話をしているの?
6年前、勝己くんと切島くんが助けてくれたから私は事なきを得た。
計画…お金…?
大きな音と共に強風に体を煽られて、音の方に目を向けるとヘリコプターが旋回して飛んでいる。
「これだから地獄を見せたくなるよなぁ、どうだった?6年前は地獄だったか?」
「……?」
「おいおい、気付いてねぇのかよ。悲しいねぇ」
この男は絶望したような顔をした後にすごく楽しそうに笑った。
「お前の父親の横領、指示したのは俺だよ」
その言葉に背筋がゾクッとして体が震えた。
なんで、何?何のため…?
「大変だったよ、お前のこと調べるのは。どうやって地獄を見せてやろうか考えた。でもどうせだったら金も欲しい。なら手っ取り早い方法がある。テメェの父親だ。調べて接触した。金を用意しないと娘を殺すってなぁ。会社の金使えば娘は助けられるだろって助言してやったら、そっから行動するのが早かったなぁ!」
「うううう!!!!」
憎しみ、恨み、黒い感情が溢れる。
私のせいで、私を守るためにお父さんは犯罪者になった。
全部全部、優しいお父さんがこの男から私を守るためだったんだ。
「だけど金は500万ぽっち。しかもすーーぐ捕まっちまって、お前ら家族も行方をくらましやがった」
この声が、男が忌々しい。
憎しみが広がる。
呼吸が苦しい。
「それが最近俺に運が向いた!ダイナマイトの熱愛報道!俺はすぐわかった!相手がお前だって!それならまた地獄を見せてやれると思ったよ!」
顔を掴まれる。
触れられている所から腐っていくような感覚。
ひどい吐き気がする。
「お前のせいで父親は犯罪者だぁ!!」
心臓を突き刺されたような気がした。
「その顔が見たかったぜ。いい顔だなぁ!」
にたりと笑うその顔が、全部が許せない。
優しいお父さんを利用した。
許せない、許せない。
なのに何も出来ない。
悔しさで涙が溢れてくる。
「なまえーーーーー!!!!!!」
その声に一気に頭が冷えて冷静さを取り戻せた。
大好きで、勇気をもらえる、勝己くんの声だ。
「来たか」
「んっ!」
男は私の体を無理やり立たせると鉄塔の端に立って私の首を掴んで身を乗り出させる。
その高さに身震いをしたけれど、地上にたくさんのヒーローと一般の人がいる中に勝己くんがいるのをしっかりと確認したら不思議と恐怖はなくなった。
今の私は人質だ。どうにかしないと勝己くんが動けない。
「久しぶりだなぁ!ダイナマイト!立派なヒーローになってて嬉しいぜ!」
「てめェと話す気はねぇんだよ!クソ当たり屋野郎がッ!!なまえ返せや!!!」
「おい、動くんじゃねぇぞ」
「んんん!!!!」
ビリビリと体に鋭い電気が走った。やっぱりこの人の個性は電気系だ。
さっきほど強い電気じゃなかったけど体が痺れる。
電流が収まったと思うと力が抜けた。
「なまえ!!!」
「俺とダイナマイトとこの女のための場だぜ!次他のヒーロー共が手出したらこの女を殺す」
「クソがァ…!!」
どうしよう、勝己くんが攻撃できない。私がここにいるから足でまといになってる。
この人の目的はきっとお金と私と勝己くんに地獄を見せること。
どうするつもりかわからないけど、ハッキリしてるのは私はここから逃げないといけないということ。
やった事ないけど、やるしかない。
大丈夫。私がここからいなくなれば後は勝己くんがどうにかしてくれる。
勝己くん、私、勝己くんみたいに強くなりたい…!!
「んんんんーーー!!!」
「おわっ!!なんだよこれっ!!!」
私の個性は花を咲かせること。
そんな弱くて、何の力にもならない個性だけど、出来ることはある。
そう思えたのは勝己くんがいてくれたから。
ありったけの力で男の腕と顔中に花を咲かせていく。
こんなにたくさんの花を一気に咲かせたことはなくて、体の内側が焼けるみたいに熱くて、水分が抜けていくのがわかる。
でも、まだ、もっと!
男は自分の体に咲き続けていく花を引きちぎるために私を拘束していた腕の力を抜いた。
今だ…。
モヤがかかったみたいにぼやけた頭で何とか拘束された足に命令を出す。
そのまま鉄塔から自分の体を投げると遠くで爆発の音が聞こえた気がした。
「さすが、俺が惚れた女だなぁ、てめェは!」
気が付いた時には爆破で飛んだ勝己くんに空中で抱えられていた。
ほら、やっぱり勝己くんがどうにかしてくれた。
勝己くんは私のヒーローだ。
「切島ァ!なまえ頼む!」
「おう!」
切島くんも現場に居合わせたみたいで私を地上に下ろすと切島くんに保護されて、勝己くんはまた爆破で鉄塔に戻って行った。
「よく頑張ったな、みょうじ!痛てぇかもしれねぇけど我慢してくれな」
切島くんは私にそう言うと口を塞いでいたテープと手足の拘束を取ってくれた。
飛びそうな意識をなんとか保って上空にいる勝己くんを目で追うと何回かの小さな爆発の後に大きな爆発が鉄塔の上で起きて、その直後に凄まじい地面が割れる音と衝撃波が辺りを巻き込んだ。
私が覚えているのはここまでで、いつの間にか意識を失っていた。