君に贈る花言葉。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そういう時は体が疲弊していても目が覚めてしまうものなのかもしれない。
その記事はネットのトップニュースとして出て来た。
『大・爆・殺・神 ダイナマイト、一般女性と車内キス』
そのタイトルに眠気でモヤがかかっていたような頭が一気に覚醒した。
記事を開きスクロールして読み進めていく。
『弱冠21歳のルーキーながら個人事務所を構え、プロヒーローとしても人気急上昇中の実力派、大・爆・殺・神 ダイナマイト。
今まで彼は粗暴さに反して徹底している几帳面な性格もあり、女性の影を感じさせたことがなかった。
写真は都内某所でダイナマイトの自家用車と見られる車内で女性とキスを交わしている瞬間だ。
その後は二人揃って楽しそうに会話をしながら車を発進させて行った。
ダイナマイトの性格から考えて真剣交際をしていると考えられる。』
そんな文面と一緒に載せられていた写真は紛れもなく昨夜の私たち。
もちろん私は一般人なので顔はモザイク処理されていたけれど、キスしているところと、その後に喋ってるところがしっかりと載っている。
私は一気に血の気が引いて、隣で寝ている勝己くんを揺すって起こす。
「か、勝己くん!!どうしよう!!!!」
「……ンだよ、うっせぇ…寝てろや…」
「ごめん、でも、どうしよう!!!記事に書かれちゃった!!!」
「……あ?」
気怠げに起き上がった勝己くんにネット記事を見せると文面と写真を確認しながら静かに読み進めている。
あの時あそこで車を停めてと言わなければと後悔ばかりが押し寄せる。
記事を読み終わった勝己くんは別段表情を変えるわけでもなく、私に携帯を返してきた。
「…ごめんね」
「何謝っとんだ」
「だって、私がワガママ言わなかったら記事にならなかったもん」
「俺となまえが付き合ってんのは事実だろーが。俺ァ別に隠してるつもりもなかったしな。書きたいヤツには書かせとけ。なまえが気にする必要もねぇ」
そう言いながら横になった勝己くんに腕を引っ張られてすっぽりと抱きしめられる。
顔を上げて勝己くんを見れば彼も私のことを見ていた。
「ワガママとも思ってねぇわ。俺も帰したくもなかったしな」
「……うん」
ギュッと勝己くんの背中に手を回して抱きしめると勝己くんも力を強めて私の頭に顔を埋める。
勝己くんの匂いと体温で心が落ち着いていく。
「まァ、惚れた女に帰りたくねぇなんて言われちゃァ帰せねぇよなァ」
「あっ、耳やめてっ」
耳元で囁かれて、その低い声と耳にかかる吐息に冷めたはずの熱が体中を巡っていく。
顔を見なくても勝己くんが楽しんでいるのがわかる。
それに比べて私はいつも必死だ。
「一晩中可愛がってやったのに足らなかったんかよ」
「そ、そんなわけないでしょ!勝己くんの体力おばけっ!」
「プロヒーローなめんな」
体勢を変えて私の上に覆いかぶさった勝己くんとキスをすると体中に電気が走る。
首から耳元にかけてを優しく触れられながら何度も角度を変えられると甘くて熱くてとろけてしまいそう。
「は…ぁ、っ」
「クッソエロい顔…」
「え、ちょっ…!仕事でしょ!?」
「そんなツラして誘っといてお預けはねぇだろ」
「ひゃっ…!」
色気のある上気した表情で舌なめずりをする勝己くんはすでに戦闘態勢になっていて、こうなってしまった彼を私は止められないし、心の隅では期待してしまっている自分もいる…。
甘くて、熱くて、痺れて、刺激的で、優しくて、溺れてしまう。
「勝己くんのばかぁ!」
結局足腰立たなくなってしまって私はベッドから動けなくなってしまった。
布団に丸まったままの私を横目に体力おばけの勝己くんはシャワーを浴びに行こうとしている。
「あ?てめェもよがってたろ」
「やだその言い方!」
「時間さえありゃなァ…」
「もう無理だよ!早くお風呂入って来て!」
私の言葉を意に介さず楽しそうに笑いながら浴室に消えて行った。
残されてシンとしたベッドの上でボーッとしているとシャワーの音がかすかに聞こえて来る。
時計を見ると間もなく6時になろうとしているので、疲れて重い体に鞭打って起き上がり、借りていた勝己くんのロンティーと自分のスカートを身につけてからベッドを整えた。
それから髪の毛をひとつに束ねながらキッチンに向かい、コーヒーメーカーのスイッチを入れ、冷蔵庫を開いて中を見回す。
冷蔵庫に何も入ってないことが今まで一度もあったことがなく必要最低限の物は全部揃ってるのはさすが勝己くんだ。
卵と牛乳を取り出してから食パンをトースターに入れるとコーヒーメーカーからはコーヒーのいい匂いが漂ってくる。
ふわふわの卵焼きを作って粗熱を取ってる間に野菜を洗って切って、勝己くん愛用の激辛ソースを使ってパンに塗るソースを作る。
パンが焼き上がると準備していた野菜や玉子、ソースを挟んでサンドイッチにする。
「なんか作っとんのか」
シャワーから出て来た勝己くんがまだ濡れてる髪の毛をバスタオルで拭きながら私の方へ寄って来る。
上半身は裸のままだし、その色気ったら…もう少し自重してくれると私の心も乱されなくて済むんだけど。
「簡単にサンドイッチ作った。コーヒー入れるけどスープも飲む?」
「コーヒーだけでいい」
そう言われてコーヒーを入れようとすると後ろからお腹辺りに手が回ってきて勝己くんに抱きしめられる。
「わっ!危ないよ!」
「俺ん家のキッチンも使い慣れたモンだな。嫁みてぇ」
首元に顔を埋められてそう呟かれれば息がかかるくすぐったさと、距離と言葉にドキドキして穏やかではいられなくなる。
嫁という言葉にもし勝己くんと結婚したらこんな感じなのかなと考えて、期待して恥ずかしくなる。
「どうしたの?」
「…あ?」
「勝己くんが甘えてくるの珍しいから」
「甘えてねぇわ!」
「そっか」
コーヒーをマグカップに注いで、勝己くんのはミルクを、私のは砂糖とミルクを足してかき混ぜる。
「なまえ」
「んー?」
「堂々としてろや。てめェが気にすることなんざ一つもねぇ。わかったかよ」
「うん、大丈夫だよ!だって私は、爆豪勝己の彼女だもん! 」
勝己くんは出会った時からずっと優しい。
今の言葉だって私がお父さんのことをずっと気にしているのを知っているからだ。
大変になるのは表に立ってる勝己くんの方だ。
だから私は私を守ってくれる彼を支えたい。
「ほら、早くご飯食べよ!遅くなっちゃうよー」
NO.1ヒーローになる男の彼女だもん。
あなたがみんなを明るく照らすなら、せめて、私はあなたを照らせる存在でありたい。
私もあなたみたいには強くなれないけれど、私なりに強くいたいと思う。
朝食を食べ終えてお互いに身支度を済ませて勝己くんの車に乗り込む。
今日は休みだからのんびり一人で帰ると言ったけれど、「俺が一人で帰らせるわけねぇだろ!ふざけんな!」と怒るので送ってもらうことにした。
普段から送ってくれているけど、今朝は特に熱愛報道の記事が出てしまったので張り付いてる人がいるかもしれないと勝己くんが配慮してくれていて、そんな気遣い一つで私は大切にされていることを強く実感する。
勝己くんのマンションからうちまでは車で20分程で着いてしまう。
「勝己くん、昨日からありがとう!スノードームも!大切にするからね!」
この後、勝己くんは仕事があるので早く別れないといけないから早めにお礼を伝えると運転をしながら「あー」と返事をして来た。
久しぶりに長く一緒にいられて嬉しかったなぁ。
私も明日からお仕事頑張ろう。
会話をしているとあっという間に家の前に着いてしまった。
「お仕事前なのに送ってくれてありがとう!お仕事頑張ってね!怪我しないでね!」
そう捲し立てて車から降りようとしたら腕を引っ張られて唇が重なった。
突然の事であっけに取られていると勝己くんは私を見て笑っている。
「張り付いてる人いるかもしれないんじゃないの!?」
「見せつけてやりゃァいいだろ。俺に大事にされてますってな」
「それは、そうなんだけど…」
不意打ちのキスで降りるタイミングを逃してしまっていると勝己くんが自分のポケットの中から鍵を取り出して私に渡して来た。
「なに?」
「家の鍵。持ってろ」
「あ、合鍵!?」
「他に何があんだよ」
まさか部屋の合鍵を渡されるとは思わなくて、でも、それを見ると嬉しくなった。
ついにやけてしまうと「何にやけとんだ」と言われてしまったけど、それでも大好きな彼の家の鍵を持てることは嬉しい。
無くさないようにギュッと握りしめて、仕事前だったことを思い出して車を降りようとしたけれど、勝己くんの方を振り向いてもう一度唇に触れるだけのキスをした。
「ありがとう、またね」
「…なまえ、次会うときは覚えてろ」
「うん、行ってらっしゃい!」
「じゃあな」
車から降りて手を振る。名残惜しい。
きっとニュースを付ければ勝己くんの顔はすぐにでも見れるのに。
テレビだけじゃわからない勝己くんの優しさと温かさを覚えてしまったら、もうテレビの中の彼を見てるだけじゃ満足出来なくなってしまった。
私は欲張りだ。
車が見えなくなってから家に向かう。
外は息が白くなるくらい寒いけど、勝己くんのことを思い出すだけで心がポカポカになって暖かかった。
大好き。
そう心の中で呟いた。