君に贈る花言葉。
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職場の先輩といる時に勝己くんが来て一緒に帰った次の出勤日、案の定「ダイナマイトと知り合いだったの!?」と言われ質問攻めされてしまった。
付き合ってることは勝己くんのヒーロー活動の邪魔になってしまうのでもちろん言わずに「学生の時からの友達」と誤魔化して「他の人には内緒にしててください」とそこを強めに付け加えたので職場でも私と勝己くんのことが広がることはなかった。
私と勝己くんは勝己くんの仕事が早く終わった日はだいたい会っている。
ヒーローという仕事柄、なかなか休みも合わず、一緒にいても呼び出されることは珍しくない。
けれど仕事の合間を見ては連絡をくれる。
会えないことも多いけれど、勝己くんが私を大切に思ってくれていることが伝わるから私はそれで十分だ。
今日は勝己くんが久しぶりに1日オフで、せっかくだからゆっくり休んでと言ったけれど勝己くんが私が行きたい場所に出かけようと言ってくれた。
いろいろ調べてみたけれど、人が少ないところよりも少し多くて他のところに目が向く物があるところの方が目立たなくていいかもしれないと思ったのと、クリスマスシーズンなのでクリスマスマーケットに行ってみたいと伝えたら了承してくれた。
服装と髪型とメイクが変じゃないかを姿見でもう一度確認しているとお母さんが部屋に入って来た。
「もう爆豪くん来る時間じゃないの?」
「うん、もうすぐ!変じゃない?」
「変じゃないから大丈夫」
朝から何度も確認している私を見てお母さんは呆れたように笑った。
お母さんには勝己くんと再会したことも、またお付き合いしてることも、全部話した。
そして勝己くんがお母さんと会ってくれて、お母さんは勝己くんに「たくさん迷惑をかけてしまったけれど、娘をどうかよろしくお願いします」と頭を下げて、勝己くんは「なまえは俺が守って泣かせねぇ」と言ってくれた。
2人の言葉がとても嬉しかった。
「お母さん、いつもありがとう」
「なぁに、突然。あ、ほら、爆豪くん来たんじゃない?」
「お土産買ってくるからね!」
「いらないから楽しんでおいで」
車の音が聞こえたのでお母さんに見送られながらコートとマフラーと鞄を持ち家を出ると外には見慣れた勝己くんの車が停まっている。
私に気付いた勝己くんはチラッと目線だけをこちらに向けると車のロックを解除してくれたので助手席に乗り込む。
「おはよ、勝己くん。運転よろしくお願いします!」
「ああ」
短くぶっきらぼうな返事をすると車をゆっくりと発進させる。
何度見ても勝己くんが運転する姿がかっこよくて好き。
1時間くらいの道を走る間、ずっと他愛もない話をした。
会えない時は何をしてたとか、テレビで見たこととか、とりとめのない話ばかりだけど勝己くんも楽しそうにしてくれていて、1時間なんてあっという間に過ぎてしまった。
会場の近くのパーキングに車を停めてそこからは歩いて向かう。
外は風が冷たくて持って来たマフラーを巻いていると勝己くんもしっかりダウンジャケットを着てマフラーを巻いていた。
個性的に勝己くんは冬はいつでもすぐに100%のパフォーマンスが出来るようにと厚着をしている。プロだなと感心する。
家に行くだけだからいつもは軽装なのにモコモコしてる勝己くんはなんだか可愛い。
「何笑っとんだ」
「勝己くん可愛いと思って」
「おちょくっとんのか」
「褒めとんの!」
「嬉しかねぇんだよ!」
会場までの短い距離を歩く時もさり気なく車道側を歩いてくれていて、こういうところ学生の時から変わらないなぁ、なんて思う。
はぁっと息を吐くと白くなり、「わぁ!白い息出た!」なんて言うと「ガキかよ」と鼻で笑われてしまうけれど、彼も楽しそうにしているのがわかって嬉しくなる。
会場はすごい人混みで、あっちにもこっちにもいろいろなお店が出店されていて、広場にはイートインスペースがあったり、大きなクリスマスツリーが飾られていてどの人も他人よりも雰囲気やお店に夢中のようで勝己くんには見向きもしないのでよかったと心の中で呟いた。
「どの店が見てぇんだよ」
「特に決めてないから順番に見たい!」
お昼ご飯にはまだ少し早いからとりあえず近くにあるお店から準番に見ることにした。
クリスマスマーケットなだけあってクリスマスデザインの雑貨が売っていたり、ぬいぐるみが売っていたりしてとても可愛い。
甘い飲み物やスイーツもたくさん売っていて目移りしてしまう。
お店で商品を見ていると勝己くんも隣から顔を覗かせて一緒に見たり、他の商品を手に取って見たりしている。
「可愛いのいっぱいあるね!」
「欲しいのねぇんかよ」
「目移りしちゃうから最後に決めようと思って」
そう言いながらいちごクレープを買うと「食いもんはいいんかよ」と呆れたような声がした。
一口頬張ると最初にクレープ生地のモチモチ感、それからすぐにホイップクリームの程良い甘さといちごの甘酸っぱさが口いっぱいに広がって一気に幸福感が押し寄せてくる。
その美味しさを噛み締めていると勝己くんが笑ったと思ったら隣から私の持っているクレープを一口食べた。
「…甘ェ…」
「勝己くんが食べるの珍しいね」
「うまそうに食っとるから釣られた」
甘い物をあまり食べない勝己くんが釣られるほど美味しそうに食べていたのかと思うと少し恥ずかしいけど、「もういらねぇ」と険しい顔で呟いて持っていた水を口の中に流し込んでいる勝己くんを見て思わず笑ってしまった。
お昼にはパスタ、ソーセージの盛り合わせやホットパイを買って2人で分けてイートインスペースで食べながら、温かい飲み物を飲んで、ゆったり喋った。
勝己くんとの時間は楽しくて、あっという間に過ぎていってしまう。
トナカイの角のカチューシャを勝己くんに付けてみたらいつもよりモコモコした装いも相まって可愛かった。
怒られるかなと思ったけど、カチューシャを私に付け替えて「なまえの方がいいだろ」と口角を上げた勝己くんに鼻をつままれた。
こんな何気ないことがすごく楽しくて、ずっと続けばいいのになって思った。
いろいろなお店を見て回ってお母さんにはクリスマス限定のチョコレートをお土産に買った。
いつものお礼に勝己くんにも何かプレゼントを買いたかったけど、甘いお菓子や可愛らしいオーナメントばかりで勝己くんが喜んでくれそうな物が見つからなかったので諦めて会場を出て駐車場までの短い道を再び歩いた。
「しっぶい顔しとんな」
「え、そう!?」
「自分の分なんも買わんくてよかったんかよ」
「えへへ、目移りしちゃって決めきれなかったぁ。勝己くん何か買ったの?それ」
いつの間に買ったのか勝己くんの手にクリスマス柄の小さな紙袋が握られているのに気付く。
実家か自分の家に買ったのかな、なんて思うと勝己くんもそういうところあるんだなぁって微笑ましくなる。
「やる」
「え!?私に!?」
車に乗り込むと勝己くんは持っていた紙袋を私に渡して来たので、まさか自分に用意してくれてるとは思わなくてびっくりした。
開けていいか聞くと好きにしろと言われたので紙袋の中で可愛くラッピングされた箱を開ける。
「わぁ!スノードームだぁ!!」
中に入っていたのはスノードームだった。
雪の積もる一件の家と周りには背の高い木々。それから家の近くには可愛らしい雪だるま。でも舞っているのは雪ではなくて桜を模したようなピンク色のスノーパウダーで幻想的だった。
「きれい…」
「用意する気があったわけじゃねぇ!たまたま偶然てめェの好きそうなモンがあったから買っただけだ!」
「うん!大切にするね、ありがとう!」
勝己くんが私のことを考えてくれた事が何よりも嬉しかった。
なのに私は何も用意出来てない。
「本当は、私も何か準備しようと思ったの。けどなかなかこれ!って思うのが見つからなくて…」
膝に置いたスノードームを持つ手に力が入る。
それに気付いた勝己くんは私にデコピンをして来た。
「いったい!」
「ンな顔させるためにやったんじゃねぇわ。こっちはやりたくてやっとんだ。何か返して欲しいわけじゃねぇ。てめェは俺の隣でヘラヘラ笑ってればいいんだよ」
「……うん」
おでこがヒリヒリと痛んだけれど、そんなことはどうでもいいくらい心はポカポカだった。
この人には本当にかなわないとおでこを擦りながら思う。
「帰んぞ」と車を発進させて来た時と同じ道を帰るけれど少し渋滞してて、勝己くんと少しでも長くいられると思うと嬉しかった。
「勝己くん、楽しかった?」
「あーゆーとこは楽しんだモン勝ちなんだよ」
「うん、そうだね!」
「それに、てめェといて楽しくねぇこたァねぇだろ」
「……そ、そうかぁ」
その言葉にキュンとして胸が苦しいくらいだ。
勝己くんは不意打ちでこういうことを余裕な顔して言ってくるからズルい。
両頬を押さえてにやけてしまうのと顔の赤みを隠す。
「そのツラ、そそられんなァ」
「ばっ!何言ってんのもう!」
車が止まったタイミングでイタズラっぽく楽しそうに笑う彼に翻弄されっぱなしで、余計に恥ずかしい。
私の頭に手を置いた勝己くんは本当に楽しそうに笑っている。
「なまえも俺といれて楽しかったろーが」
「…楽しくねぇこたァねぇなぁ」
「真似すんじゃねぇわ」
「えへへ、すっっっごく楽しかったよ!」
渋滞していた道ものろのろと進み、気が付けば見慣れた道を走っていた。
もう少しで家に着いて、勝己くんと一緒にいれた一日が終わってしまうと思うと寂しくなってしまう。
勝己くんが私のために時間を作ってくれてそれだけで幸せなのに、ずっとずっとこの時間が続けばいいのになぁ、なんて、それは欲張りかなぁ。
でも、せめてもう少しだけ一緒にいたいと思ってしまって、そう思ったら勝手に口から言葉が出てしまっていた。
「勝己くん、車停めて…」
「あ?酔ったんか?」
「……違うけど」
不審な顔をしながらも車を路肩に寄せて停めてくれる。
ハザードランプをたいてギアをパーキングに入れ、サイドブレーキをかけてから眉間に皺を寄せた顔で私を見ている。
「ンで?」
「…帰りたくないなぁ、なんて」
「あ?」
「もう少しでおうち着いて、勝己くんとバイバイだと思ったら寂しくなって帰りたくないなぁ…って」
反応がない勝己くんを見ると眉間に皺が寄ったままで慌てて謝った。
「ごめんね、勝己くん明日もお仕事あるのに!帰ろ!ごめんね」
ワガママを言って困らせてしまった。
せっかく楽しかったって言ってくれたのに最後で困らせてダメだなぁ。
欲張ったせいだ。
せめてなんでもないように振舞おうと明るくする。
「なまえ」
「はい…っ」
勝己くんに呼ばれて顔を上げると勝己くんの唇で口を塞がれた。
少し触れただけでそこから熱が広がるみたいだ。
勝己くんはいつの間にか外したシートベルトを腕に掛けたまま体を支えるようにハンドルを持っていて、もう片方の手は私の頭を押さえていた。
「あ、勝己くん…」
「バカかてめェは…こっちは我慢しとんだ。なのに毎回毎回人の気も知らんで」
「え、っと」
「惚れた女を寂しくさせんのはクソダセェよなァ」
「勝己くんともう少し話出来たらそれでいいんだよ!」
「てめェはそれで良くてもこっちが良かねぇんだよ。朝送ってやるから俺ん家帰んぞ」
「え!?」
この後のことを想像してしまって一気に恥ずかしくなって体温が上がる。
本当にもう少し一緒にいられればそれでよかったのに。
「自分で言ったんだからちゃんと覚悟決めとけや。明日も休みでよかったな」
そう言ってニヤッと笑う勝己くんを見て恥ずかしさでいっぱいになるのと同時にもう逃げられないと悟った。
心臓がドキドキして破裂してしまいそう。
勝己くんの家に着くまでの間、どんな顔して車に乗ってればいいんだろう。
「お、お手柔らかにお願いします…」
「まぁ無理だろうな。スノードームの礼ってことで精々頑張れや」
「え!?」
そして次の日の朝、勝己くんと私の熱愛報道が出てしまったことをネットニュースを見て知ることになる。