僕らの日常。
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避難所を出てトップ3とオールマイト、緑谷くんと合流し、手短に今回のチームアップの概要を説明してもらった。
ここを出る前にホークス、ジーニストに言われた通り、簡単に言えば緑谷くんを囮にしてオール・フォー・ワンを見付ける。
私たちはそのサポートをするという言葉にするだけならとてもシンプルなもの。
オールマイト、緑谷くん、私の3人で一緒に行動して、トップ3は私たちから一定の距離を取って捜索しながらサポートに回ると言っていた。
「ダツゴクも見付け次第対処しましょう。オール・フォー・ワンの情報を持っているかもしれない」
オール・フォー・ワンによって世に放たれてしまったダツゴクたち。
暴れ回るダツゴクと応戦する民間人で街はめちゃくちゃで、彼らがもしもオール・フォー・ワンの手がかりを持っている人がいるんだとしたら、街への脅威も減るし一石二鳥だ。
「それからみょうじさん。あなたは戦闘は避けて我々、特に緑谷くんの回復に徹底してください。長期戦になる可能性を考えたらみょうじさんの治癒を欠くことは出来ない」
「はい…!」
何度も何度も考えた。
緑谷くんを囮に。
頭ではそれが一番合理的なこともわかってる。
だけど気持ちがそれを否定する。
覚悟を決めたはずだったのに未だに納得は出来ないで、これじゃあ何もかも中途半端。
「今日はもう遅い。明日の朝から動き始めよう」
「緑谷。体の傷をみょうじに治してもらい万全にしておけ」
裏路地の人目に触れない場所に移動して緑谷くんにヒーロースーツの上を脱いでもらって体に触れて治癒を始める。
トップ3は少し離れたところで順番に見回りをしてくれると言っていた。
彼らプロヒーローは良くも悪くも目立つから、私と緑谷くんに石を投げられないために考慮してくれているんだと思う。
「みょうじさん。その…かっちゃんと話せた?」
治癒を始めると控えめな声で聞かれた。
背中側にいるから彼の表情を見ることは出来ないけれど、私があの作戦以降、雄英に戻ることが出来ていなくて、今も緑谷くんのサポートとして避難所からそのまま来たから負い目を感じてしまっているのかもしれない。
「電話して声聞けたよ!意識が戻らないって聞いてたから声聞いてすごく安心した。あ、これは緑谷くんに対してもだからね!」
「うん、ありがとう」
謝らないで、そうやって私が言ったからか、ありがとうという言葉にしてくれたから彼に笑顔を向けた。
あの時はいろんな嫌な情報ばかりが一気に襲って来て、未だに現実だと思えないこともあるけれど、それでも前を向いてなんとか立ててるのはみんなも何かを決断して前に進んでいる、1人きりじゃないってわかるからだと思う。
「このことは…?」
「口外禁止って言われたから。それに、緑谷くんだってみんなに黙って来たでしょ?私が勝己くんに言ったら一緒にいることすぐバレちゃうよ」
明るく冗談めいて言ったけれど緑谷くんは声のトーンを落とした。
巻き込んだなんて思って負い目を感じて欲しくないのに。
私だってオール・フォー・ワンを捕まえて、元通りの生活にしたいって気持ちは同じだもん。
「……僕の力のこと。オールマイトから譲渡してもらって、それをオール・フォー・ワンが狙ってることも雄英を出て行くことも。みんなに直接言えないけど、オールマイトに手紙を渡してもらうようにお願いしたんだ」
あぁ、だからオールマイトは「ちょっと行ってくるね。私が戻るまでは動かないように」とだけ言ってどこかに行ったのね。
それを受け取ったみんなはどう思うのかな。
…全てを知って行動している私だって納得出来てないから、きっとみんなも同じように思うはず。
勘のいい勝己くんなら緑谷くんの手紙を読んで、回復役の私が一緒にいる可能性を考えて連絡をして来ると思う。
ポンっと緑谷くんの背中を軽く叩いて「終わったよ」と伝えると「ありがとう」と言いながら上着を着直して私に向き直ると彼は真剣な顔をしていた。
「みょうじさん治癒ありがとう。でもこれから先、僕に個性は使わなくて大丈夫だよ」
優しい声色と表情。
なのにその言葉は「君はもう必要ない」と言われたみたいだった。
そんなこと言われると思ってなくて戸惑って言葉が上手く出て来ない。
「…え、な、んで?」
「みょうじさんの個性は、僕じゃなくて市民の皆さんに使ってあげて欲しい。そう思っただけだよ」
本当に傷付いている人はたくさんいるはずだからと。
彼が心の底から優しい人だってことは知ってる。
それが本心なんだってことも伝わる。
1年クラスメイトとして一緒にいただけだけど、たったそれだけだけど、その言葉に隠されているのは私に対しての強い拒絶だとはっきりとわかった。
…あぁ、そっか。
私のことも本当は巻き込みたくなかったのに巻き込まないといけないところまで来てしまって。
それでも私にすら傷付いてほしくなくて、自分一人で全てを背負い込もうとしてる。
せめて自分から遠ざけようとしての言葉。
この人は、緑谷出久という男の子は、どこまでも優しさで出来ているんだ。
「私の個性は傷を癒すためにあるから、緑谷くんだって例外じゃないよ。使わなくていいって言うなら、私が個性を使わなくていいように怪我しないでね!」
「……うん、頑張るよ」
私は戦闘が得意なわけではないし、今回も支援で選ばれただけだけど、緑谷くん一人で戦わせるなんてしたくない。出来ない。
拒絶されても私はここから動かないって意味を含ませたことを彼なら気付いてる。
だから困った顔して笑ってるんだよね。
「私は、緑谷くん連れて雄英に戻るからね」
「……え?」
「絶対連れて帰るから!オール・フォー・ワン見付けて、捕まえて、絶対!」
これは冗談なんかじゃなくて、決意。
みんなを巻き込みたくない彼の気持ちは痛い程わかるけど、それでも緑谷くん一人に背負わせるなんて納得出来ないもん。
だけどそれが一番いい方法で、それしかないのなら、私は彼を連れて雄英に帰る。
私の言葉に目を大きく開いてから少し困ったように笑って「みょうじさんってかっちゃんに似てきたね」って言われた。
最近よく言われて嬉しいけど、勝己くんとは全然違う。あんなふうになりたくてもなれないのに。
「じゃあ、なおさらだ!勝己くんは絶対勝つから!それで有言実行する人だから!私も緑谷くんと雄英に戻るよ」
状況的に勝己くんから連絡が来ても返せない。
それを良く思うはずもなくて、きっと会ったらけちょんけちょんに怒られちゃうと思う。
愛想尽かされちゃう可能性だってある。
…それは嫌だけど、だけど、だったらせめて。
緑谷くんのことを無事に雄英に連れて帰る。
勝己くんみたいになりたいから、私だってそれだけは有言実行してみせる。
「大丈夫だよ、緑谷少年!みょうじ少女!」
その声に顔をあげると雄英に緑谷くんの手紙を渡して帰って来たオールマイトがいつもの笑顔で立っていた。
緑谷くんは立ち上がってオールマイトに静かにお礼を伝えていて、表情の見えないその背中が少し寂し気だった。
「きっと全て上手くいく。何故って?いつだって最後に悪は潰えるからさ!」
そう言って明るく笑うオールマイトの笑顔を見ると勇気と元気が出て来る。
その言葉通りきっとなんとかなるって思える。
だから平和の象徴であるオールマイトはいつだって、どんな時だって笑顔を絶やさなかったんだ。
私はこれから先も、痛くて不安で仕方ない人を支えていくことになる。
オールマイトみたいに強くはなれないけど、笑顔だけはずっと忘れないでいたい。
「緑谷少年の危機感知も反応していないようだし、二人とも休める時に休みなさい」
私もあの日以降ずっと個性を使いっぱなしで、少しでも体を休めないと誰かを治癒するどころではなくなってしまう。
オールマイトに促されて、彼の愛車のエルクレスに乗り込んで仮眠を取るために目を閉じると、さっきまで緑谷くんと勝己くんの話をしていたからか頭の中に勝己くんが浮かんだ。
…怪我は大丈夫かな。すぐにでも治癒してあげられたらよかった。
勝己くんのことだから無理して動いてるんだろうなぁ…。
…………会いたい。
考えれば考えるほど会いたい気持ちが膨らむのを抑え込んだ。
次に会えるまで、あなたみたいに強い私でいられるように頑張るから。
「さぁ、行動開始だ」
朝日に照らされながらオールマイトの声で私たちは動き始める。
オール・フォー・ワンへの手がかりを見付けて絶対に帰るんだ。
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