僕らの日常。
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大通りを走り抜けて狭い路地に入る。
頭上から「あぁ!もうっ!狭い道は管轄外なのに!」って怒りを含んだ声が降って来るのを聞きながら風を使って速度を上げてなんとか食らいつく。
強風を吹かせても上手いこと足止めが出来ない。くそ、歯がゆい…!
「終わったぞ」
角を曲がるとヴィランを拘束するシンリンカムイとエッジショットが涼しい顔をして立っていた。
プロヒーローの仕事を目の当たりにして、また何も出来なかったって悔しさが募る。
「迅速にヴィランを制圧せねば更なる被害を生むぞ」
「はい…!」
インターン初日がもうすぐ終わる。
事故にもヴィランにも何件か遭遇したけれど、結局全部ラーカーズが速く解決してしまって今日一日何も出来なかった。
個性を攻撃や足止めに転用して、エッジショットに言われたように素早くヴィランを制圧するって目標を持ってここに来たのに。
グッと拳を握って悔しさを糧にする。
「今日は事務所に戻る」
ヴィランを警察に引渡し、ラーカーズの後ろを一緒にインターンに来た上鳴くん、瀬呂くん、峰田くん、塩崎さんと一緒に歩く。
事務所に戻る道中はパトロールも兼ねているからもちろん気を抜くことはないけれど。
「他のみんなも今頃がんばってんのかな」
「そりゃそうっしょ。そのためのインターンなんだし」
「新学期始まってみんなに差付けられてたらシャレになんないよ!私たちも頑張ろう!」
実家に帰る前、勝己くんに超えるつもりでいるって大口叩いた以上差を付けられるわけにはいかないし、私は私を超えるって決めてきたんだから。
絶対にここで何かを掴んで雄英に帰る。
「今朝も説明したが、冬休みの間は俺の事務所で寝泊まりしてもらう。荷物運んだから部屋はわかるな?風呂と少し手狭にはなるが訓練所もある故使って構わん」
「なぁおい…聞いたか…?女子と同じ風呂…?」
「誰もそんなこと言ってねぇよ」
「なんて穢らわしい…」
いつどこでもスタンスを崩さない峰田くんを少しだけすごいと思いつつ、峰田くんへのガードをいつもより固くしながら個性訓練もこなさなきゃ。
勝己くんにも「あの女狂いの玉には絶対ェ隙見せンじゃねぇぞ!何かあったらぶっ飛ばせ!」って念を押されたし。
エッジショットの解散の合図でみんなが散っていく。
私はもう少し風のコントロール頑張らなきゃ…!
「あの、エッジショット」
「どうした」
「私の風の個性、今は守るための物として使ってるんです。だけど攻撃に転用したくて、それでその…なんていうか…風に強度を付けて足止めとか、そういうのが出来たらって思ってるんです」
風の強度ってなんだって言ってる自分でも思うけど、強風よりも強い風で相手の動きを封じたい。
そうすれば私に出来ることはもっと増えると思う。
でもその強さをどうやって出せばいいかわからない。
エッジショットは少し考えるような仕草をしてから再び私の顔を見た。
「編み物をやったことはあるか?」
「……へ?」
あ、編み物って毛糸とかの編み物だよね?
個性のことを聞いたのになんで編み物をやったことがあるか質問されたんだろう。
よくわからなくて少し混乱してる。
「編み物はやったことないです、けど…」
「そうか。ではしばらく自主練は編み物をしていろ。個性使用は日中のヒーロー活動のみとする」
え、どういうこと?私、編み物してろって言われた?なんで?
言われたことを理解出来ずにその場を動けずにいると「必要な物はサイドキックに言うといい。この期間中に最低マフラー5本仕上げてみろ。仕事故手は抜くなよ」と言い残してエッジショットは部屋から出て行った。
私は一人、何もかもから取り残されてしまった。
「……なんで、編み物…」
マフラー5本?仕事?エッジショットの事務所は普段なんの仕事を引き受けてるの!?
私はここにヒーローとしての個性と技術を伸ばしに来たのに!
なのになんで自主練が編み物で個性もラーカーズでの活動時のみなの!?
編み物を教わりに来たんじゃないのに!
そんな怒りがフツフツと沸いて来て、エッジショットに相談したのが間違いだったのかとすら思ってしまう。
「~~ンもう!!」
インターン先のプロに仕事と言われてしまえば断るという選択肢はない。
こうなったらさっさと終わらせて早く自主練で個性使えるように許可をもらうしかない。
覚悟を決めて、編み物には無知すぎるので一度部屋に戻って必要な物などを調べてからサイドキックの人にお願いしよう…。
「……くそぉ…」
携帯を片手に思わずそんな言葉が漏れてしまう。
初心者が1本編むのに5~10時間って…!!
私は本当に何をしにここに来たんだろう…。
……もういつまでも文句言ってたって仕方ない、そう思って部屋を出てサイドキックに必要な道具を伝えると「お古でいいならあるよ」と倉庫になっている部屋からすぐに出してくれた。
なんでお古でも道具があるんだろう…。
部屋に戻ってすぐさま作業に取りかかって動画とにらめっこしながら、やったことのない編み物と格闘する。
こんな時勝己くんならすぐに理解してわかりやすく教えてくれるんだろうなぁ…って他事務所で頑張っているであろう愛しい人を思っては、甘えちゃダメ!と自分を律する。
「全然進まない……」
同じことを繰り返すだけの単純な編み方とは言え、慣れないことをするのは時間だけが溶けていく。
作業に没頭しては間違える度に私はなんでこんなことをしているんだろう…って悔しくなる。
他のみんなは今頃自主練して個性を磨いているはずなのに。
そうやって不満を抱えつつ、マフラーを1本編み上げる頃には少しの楽しさも出て来て、慣れてきたから作業スピードも上がった。
ラーカーズでのインターン活動をしながら、私は4日で指示された5本を完成させた。ほぼ意地だった。
「出来ました!!」
忙しいエッジショットを捕まえて完成した物を差し出す。
彼もこんなに早く終わらせてくるとは思っていなかったのか少し驚いた表情をしている。
「…編み目も均一で丁寧な仕事だな」
「やりすぎて瞼に編み目が浮かびますもん」
「それでいい。個性に活かせ」
個性に活かせ…?編み物を…?
どういうことだろう。とりあえず個性使用の許可は出たけれど…。
考えながらみんなもいるはずの訓練所に向かった。
「お、みょうじ!やっと合流?」
「うん!遅れた分取り返す!」
訓練所に入ると当然みんなは訓練を始めていて、4日間という大きな遅れを取り戻すために気合いを入れる。
自己治癒出来るとはいえ、自ら怪我をするのは違うのでストレッチで体を解していくところから始めていく。
「みんな訓練どう?」
「もーみょうじ聞いてよ!塩崎!塩崎さぁ!あのツルやっぱずっこいの!何重にも張って盾にされっから俺の電気全く通さないんだよね!」
「ずるいなど…私は最善の方法で防御をしただけで、卑怯なことをしたつもりはありません」
「塩崎のツルは密度もあるし、防御はもちろんだけど攻撃も強いんだよな」
……ん?なんか今、なんかすごく大事な何かを聞いた気がする。
塩崎さんの個性がすごいことは体育祭の時から見て知ってる。
すごく当たり前だけど私が見逃してる何か…。
なんだ?何を見逃してる?頭の中整理して気付け。
今の話、ツルを何重にも張る…電気を通さない…密度……強い……何重にも…密度……。
「あっっ!!!!!」
そ、そうか!そういうことだ!!
なんでそんな単純なことに思い至らなかったんだろう!!
そうだ、そうだよ!
でも私の風でそんな繊細なコントロールが出来るの?
…私の個性は操風だもの。ただ吹かせるだけじゃない。やってみる価値はある。
「なにみょうじ…突然そんなでかい声出されたらビビるわ」
「ご、ごめんね!でもひらめいた!」
イメージは出来てる。嫌という程やったもの。
一筋の光を見つけたみたいで胸がドキドキしてわくわくする。
「…オイラもひらめいたぜ。なぁみょうじ」
「え?うん、どうしたの?」
「お前は今日から合流だから知らないと思うけどよぉ…オイラはもう疲労困憊なんだよな」
「あ、気が利かずにごめんね。治癒するよ」
「そうなんだよ。オイラには癒しが必要なんだよ。爆豪がいない今!みょうじのおっぱいって癒しがなぁっ!!!! 」
「え!?」
「おっぱい触らせろォォォオ!!!!」
ひ、ひぇぇ!峰田くん自分に正直すぎる!勢い怖い!いつもより迫力ある!
絶対勝己くんがこの場にいないからだっ!!
何かあったらぶっ飛ばせって言われたし…!
「峰田くんごめんっ!!」
イメージ。よくイメージして、何重にも密度のある編み込まれた強度のある風を巻き起こせ!
謝りながら風を起こすと「グェッ」って潰れたような声が聞こえた。
吹っ飛んで行った峰田くんが壁に当たる直前に瀬呂くんが咄嗟にテープで回収してくれた。
「で、できた…出来たぁ!」
よかった!イメージ通りに出来た!!
これで合ってた!
まだまだ集中力が必要だけど、これが無意識下で出来るようになれば私ももっと出来ることが増える!!
「みょうじ何今の。小柄の峰田とはいえ、すげぇ吹っ飛び方したし、風に当たったとは思えねぇ声出してたけど…?」
「今までと威力違くね…!?」
みんなの視線が私に集まる。
今まで訓練にも参加しなかったのに突然今までの威力を超えた物を見せられれば私だってビックリする。
というか私も嬉しい反面、思ったよりも威力が強くてびっくりしてもいる。
「編み物だよ」
「…は?編み物?」
「うん!私、風の強度を上げたくて」
「風の強度」
「ずっと考えてたけどいい方法が見つからなくて、でもさっき塩崎さんのツルが何重にもなってて密度があるって聞いて、それで強度出るのは当たり前なのになんでそ考え付かなかったんだろうって!それにエッジショットに編み物を個性に活かせって言われたから、何重にも密度のある編み込まれた風ならどうかな?ってやってみたの!」
最初エッジショットに編み物をやれって言われた時は意味がわからなくて怒りすらあったけど、そっか、そういうことだったんだ。
私がやってたことも無駄じゃなかった!
「実験に使ってごめんね、治癒するからね」
そうやって謝りはしたものの、峰田くんごめん!
治癒もくっ付けるんじゃなくて編んでより細胞同士をより強く結ぶイメージで…!
「わぁ…!」
「治癒の時間まで早くなってね!?」
もしかしたらと思ったら、やっぱり出来た…!
こっちの方が上手く連結出来て、早く治癒が出来る!
これならもっとたくさんの人を助けられる…!
「私、ここに来てよかった。このイメージ崩さないうちに特訓の相手お願いしますっ!」
「そのストイックさ爆豪みてぇだわ」
「勝己くんにだって負けてられないもん!」
私がやりたいと思ってたこと、こんなにも早くたどり着いた。
こっからは無意識下で出来るように何度も繰り返し特訓しなくちゃ。
残り数日で完ぺきにしてみせる。
勝己くん、負けないからね。
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