僕らの日常。
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大晦日の朝。
全寮制になって自宅に帰ることも難しかったけれど、大晦日の1日だけプロヒーローの同伴の元帰ることが許された。
だからみんな必要最低限の荷物を持って寮の談話室で待機している。
「なまえちゃんも実家の方に帰るんよね?」
「うん。一人暮らししてた部屋は引き払っちゃったから」
あのおうちに住んでいたから勝己くんと仲良くなって距離を縮めることが出来たと思う。
たった5ヶ月しか住んでいなかったけど思い出がいっぱい詰まっていて引き払うのも躊躇してしまった。
それでもお金を払い続けるのももったいないからと全寮制になることが決まった時に引き払うことにした。
もうあの道を勝己くんと歩けないんだって思うと少しだけ切なくなるけど、この寮でもたくさんの思い出が出来ているから寂しくはない。
「お前ら、準備出来てるか。プロヒーローの方々来てくださった。迷惑かけずに帰宅しろよ。それからインターン先でしっかり揉まれて来い」
寮の扉が開いて相澤先生が入って来た。
先生の言葉に全員が「はい!」と気合いの入った返事をして荷物を持って寮を出発する。
ただインターンに行くだけじゃダメなんだ。
サイドキックとして扱ってもらえる間にちゃんと何かを得なきゃいけない。
そして、みんなにも勝己くんにも負けないように頑張るんだ。
「ノロノロしてっと置いてくぞ。俺は待たねぇからな」
「うん、わかってる!むしろ超えるつもりでいるから!」
「いい度胸しとんなまじで」
「えへへー」
私は戦闘が得意ではないけど、戦闘が得意な自分に負けないように食らいついて来いって鼓舞してくれてるみたいで嬉しかった。
この期間中に私は今の私を超えて、勝己くんのことだってビックリさせるつもりでいる。
よし、って心の中で気合いを入れ直してから玄関を出て「じゃあな」「またね」って言葉を交わしてお互いが担当してもらうプロヒーローの元に向かう。
勝己くんと緑谷くんはおうちが近いから同じヒーローに同伴してもらうのでギャーギャー言い合い…というか勝己くんが一方的に文句を言ってる声が聞こえてた。
「よろしくお願いします!」
その声を遠くで聞きながら、担当のプロヒーローに挨拶をして一緒に雄英を出た。
高校生になって家を出てから初めて帰るんだ…。
連絡は頻繁に取っているし、この前も九州でのことで両親に会っているから久しぶりという感じはあまりしないけれど。
それでも親子3人でいる時間が今は貴重になってしまったから今日はたくさん話をしようって決めたの。
「ただいまぁ!」
送ってくれたヒーローにお礼をして約9ヶ月ぶりの我が家の玄関を開けるとおうちの匂いとお母さんの料理の匂いがして、家に帰って来たって実感する。
バタバタと足音が聞こえて「おかえり、寒かったでしょ」ってお母さんとお父さんが笑顔で出迎えてくれた。
「うん、お腹空いたぁ!」
「母さんがなまえの好きなハンバーグ作ってるよ」
「ほんと!?嬉しい!お母さんのハンバーグ大好き!」
「ふふ、ありがとう。手洗っておいで」
なんて事ない会話だけど、家族の会話って感じでなんだか胸があたたかくなる気がする。
大晦日で忙しいはずなのに私の好きな物まで作って待っててくれて、久しぶりのおうちに、両親。並べられたお箸と食器。飾られた家族写真。その全部が数ヶ月の家族との空白を埋めて日常に戻してくれているみたい。
ご飯を食べながら学校でのこと、寮のこと、他にもたくさん話して笑った。
「それでエリちゃんがすごく可愛くてね、この前同じ髪型にして写真も撮っちゃった!ほら!」
「…この髪型なまえが自分でやったの?」
「ううん、勝己くん!写真撮ってくれたのも勝己くんだよ」
「え、爆豪くん!?」
「爆豪くん……」
この前エリちゃんと遊んだ時に勝己くんにヘアアレンジしてもらって、同じポーズして撮ってもらった写真を2人に見せる。
勝己くんの名前出したらお父さんの顔が一気に曇って、複雑なんだろうけど面白いって思っちゃった。
お母さんも勝己くんがこんな可愛いアレンジを出来るだなんて思わなかったみたいで驚いて写真を何度も拡大して見てる。
ヘアアレンジも写真撮るのも「自分でやれや、めんどくせぇ…」って言いながらしっかりやってくれたんだよね。なんだかんだ甘くて優しい。
「へぇ…爆豪くんって器用なのね」
「うん!本当にすごいの!勝己くんが作るご飯も美味しいんだよ!それから勉強も出来るし、個性も、技術もあってね。私も隣に並べるように頑張ろうって思えるの」
勝己くんはいつも行動で、言葉で、態度で私を引っ張ってくれる。
インターンでもっともっと頑張らないと置いて行かれちゃう。
勝己くんも絶対にもっと強くなってるはずだから。
次に会う始業式までに私も何かを掴むんだ。
「そうなのね。ふふ、なまえから好きがあふれてる」
「えっ!えぇ!?そ、そうかな…」
お母さんにそんなこと言われたら恥ずかしくなってほっぺをおさえた。
でもたしかにちょっとテンション上がって勝己くんのことばかり話してたかもしれない…うぅ…恥ずかしい…。
「…この間学校でね、なまえの言葉聞いた時に、あぁこの子はちゃんとヒーローとして成長してるんだって思ったの。お友達と頑張ってるのもあるんだろうけど、爆豪くんの存在が大きいのね!」
「うん。尊敬できる人たちばかりだよ」
「人を好きになるって力が湧いて前向きになれるステキなことだと思うから、なまえがこうして誰かを好きになってくれてお母さんは嬉しいよ」
「……お父さんは複雑だよぉ…」
お母さんの言葉をしみじみと噛みしめているところにお父さんの悲しそうな弱々しい声がして思わず笑ってしまう。
将来私がお嫁に行くってなったらどうなっちゃうんだろう、本当に泣いちゃいそうだなぁって考えながら「あはは、お父さんのことも大好きだよ~!」って言うと「…ありがとう」って嬉しそうな、でもちょっと不服そうに言っていた。
その夜は親子3人でずっと話して、笑って、時間が一瞬で過ぎちゃった。
一緒に年越しをして、新年の挨拶をしてから布団に潜ったらすぐに眠りについた。
夢も見ないくらいぐっすり眠っていて、習慣で5時には目が覚めてリビングに行くとお母さんも起きていた。
「あら、なまえ早いわね」
「うん、毎日この時間に起きてるから。習慣で」
「朝が苦手ななまえからそんな言葉を聞くなんて…!」
「最初大変だったけどね…」
ダイニングチェアに座るとお母さんがあたたかいお茶を出してくれて、それを飲むと体がぽかぽかする。
はぁ、日本の新年だぁ…ってほわほわな気分になってしまうけど、私今日からインターンなんだ。
いけない、寮とは違う安心感と包容力で気が抜けてしまう。
「今日からエッジショットのところに行くんだっけ?」
「ラーカーズだけど、そう」
お茶を飲みながらお母さんを見るとほんの少しだけ表情が暗い気がする。
あぁ、そっか。そうだよね。心配してくれてるんだ。
インターンはサイドキックとして扱われて、プロヒーローの元でちゃんとヒーローとしての活動をするから。
湯呑みを置いて「お母さん」って静かな声で呼ぶとお母さんも私の顔をしっかりと見てくれる。
「…私あれから人を守って、自分の身も守るために対人訓練頑張ってるよ。今回ラーカーズのところに行くのもね、誰も怪我したりせずにヴィランを制圧出来るようにするためなの。まだまだお母さんとお父さんに心配かけちゃうけど、ちゃんと見てて欲しい」
真剣にそう話すとお母さんは少し表情を和らげて「うん」って頷いてくれた。
私も痛いのは嫌いだから怪我もしたくないし、私の見える範囲にいる人たちには誰にも傷付いてほしくない。
そのために私は強くなりにいくの。強くならなきゃいけない。
「心配はする、可愛い娘のことだもん。だけど、ちゃんとなまえの言葉も信じてるから大丈夫。相澤先生のお墨付きももらったしね」
「あ、あれは嬉しかったけど、慢心は出来ないもん」
「そうだね、頑張れ!」
こうして話している時、私はお母さんの娘でよかったって心から思う。
こんなにも寄り添ってくれて、心配して、最後には応援してくれる。強くて優しい自慢のお母さん。
そんなお母さんの期待を裏切らないようにしなきゃいけない。
「気を付けるんだよ」
「うん!また連絡するからね!」
「頑張ってね」
「はーい!行ってきます!」
起きて来たお父さんと、3人で朝食を済ませて家を出る。
短い時間だったけれど家族と過ごせてよかった。
玄関先で見送ってくれる両親に手を振って、約束したことを実現させるために今年も頑張ろうって決意し直した。
今日からインターン。また気を引き締めよう。
やりたいことが出来るようになるために。
理想のヒーローに近付くために。
