僕らの日常。
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あっという間に12月下旬になって、今年もあと少しで終わってしまう。
今までで1番目まぐるしい1年だったなぁ。
雄英に入学して、いろんな経験をして、いろんなことを感じて、ヒーローとして成長出来たんじゃないかって思う。
好きな人が出来て、その人が隣にいてくれる当たり前のことが当たり前じゃないことを知った。
私を支えてくれる人達に心配かけないためにもっと強くなるって誓った。
大好きで、私を信じてくれる彼の隣を歩いても恥ずかしくないように。
…けど、彼はどう思ってるんだろう。
私はまだそれを聞けないでいる。
「間抜け面しとんぞ」
思いを巡らせてる私の意識を遮るように低い声がふってきた。
そちらに視線を向けるといつも私のペースに合わせて隣を歩いてくれる勝己くんと目が合う。
なんだか少し不機嫌そう。
「勝己くんのこと考えてた」
「本人おるわ」
「えへへ、そうだねぇ」
「うぜぇ」
一緒にいるのに私が心ここに在らずだったから不機嫌になったんだってすぐにわかって、マフラーに口元を埋めながら悪態をつく勝己くんを可愛いと思ったらさらに愛おしくなる。
外には雪が積もってて、冷気をまとって吹く風は体を縮こませていく。
けれど勝己くんと学校外を一緒に歩くのは久しぶりで、なんだかあたたかく感じるから不思議。
「買い出しあと何」
「えっと…香辛料系かな、砂糖くんに頼まれたやつ」
寮でメモしてきたものを見ながら答える。
なぜ私たちが買い出しをしているのか、それはもうすぐクリスマスだから!
当日はエリちゃんも招待してA組でクリスマスパーティーをするために早めに手分けして準備をしている。
パーティーのことを考えたら楽しみでわくわくする!
……なんて、考えれば少しは気が紛れるのかな。
「俺のスパイスも買う」
「え、あれもうないの!?」
「もう無くなる」
楽しく話していても、頭の片隅で最近ずっと考えてる。
勝己くんと一緒にいると楽しくて、ずっと一緒にいたいと思うのに私を大切にしてくれる程、勝己くんは我慢してるんじゃないか、本当は私に興味がないんじゃないかって思ってしまう…。
こんなことを考える時点で勝己くんに失礼なこともわかってる。
だけど一度考えてしまったら止まらなくなって、でも隣にいられなくなったらって考えると怖くて本人に聞けないまま時間だけが過ぎていく。
話すだけならいつも通りにできるのになぁ…。
「はぁ、寒かったぁ。寮あったかいねぇ」
買い出しを終わらせて寮の玄関を開けるとあたたかい空気が体を包んだ。
体の芯まで冷えてしまったから、まだ暖房が効いてない場所でも外よりはあったかい。
「赤くなってんぞ」
「…っ!」
勝己くんの手が頬に伸びて来て、もうすぐ触れそうってところで反射的に後退りをして明らさまに避けてしまった。
あ、違う。避けたかったわけじゃないのに、触れられるのが嫌なわけじゃないのに。
「あ…ちが…」
「……悪かったな」
勝己くんは表情を変えずに私にそれだけ言って先に談話室に入って行く。
怒らせた…?嫌な思いをさせた…?そんなの当たり前じゃない。さっきまで普通に話してたのに突然あんな避け方して最低だもん…。
謝らなきゃ…そう思って勝己くんを追いかけたけど、上鳴くんたちと一言二言言葉を交わしたあと、私を視界に入れずに部屋に戻るためにエレベーターに乗ってしまって声をかけそびれてしまった。
私が悪いのに何で私が落ち込んでるんだろう…。
「なまえちゃんおかえり!」
「た、ただいま」
「爆豪くんとなんかあった?」
多分私と勝己くんの様子がわかりやすくおかしかったんだと思う。
お茶子ちゃんが心配して声をかけてくれて、その優しい声に胸がぎゅうってなった。
「…勝己くんを傷付けちゃったかもしれない」
「あの爆豪くんを…!?」
「うん…勝己くんのこと嫌いなわけないのに、避けるようなことしちゃった。ちゃんと違うよって伝えなきゃ」
逆の立場なら私はすごく落ち込むと思う。
それなのに大好きで、いつも私のことを大切に考えてくれる勝己くんにひどいことしちゃったって、お茶子ちゃんに話しながら気持ちが少し整理されていく。
「爆豪くんが傷付いちゃうんも相手がなまえちゃんだからやね!他の人だったら絶対気にせんもん!なまえちゃんも後悔しとるならちゃんと話して仲直りして来たらええよ!善は急げ!」
優しくて明るい笑顔と声に励まされて、お茶子ちゃんに「ありがとう。勝己くんと話してくる」って伝えると「おう!頑張れ!」って背中を押してくれた。
そのままエレベーターに乗って男子棟の4階の1番奥、行き慣れた勝己くんの部屋の前で立ち止まって気持ちを落ち着かせる。
トントン、って乾いたドアを叩く音が誰もいない廊下に響く。
「勝己くん…。なまえだけど、あのね…」
きっとこのドアは開かないと思ってた。
だから部屋の前ででも謝ろうって思ったのに、ゆっくりと開いて中から普段と変わらない表情の勝己くんが顔を出した。
「寒ィから入れ」
一瞬だったけど、勝己くんが私の手を引こうとしてやめたのがわかった。
私が避けちゃったからだ。
罪悪感を抱えながら見慣れた部屋に入って立ってると「立ってないで座れ」って促される。
「…あのね、さっきの、違うの。勝己くんが嫌いだからとかじゃないの…本当だよ。勝己くんに我慢させて、無理させてたらって思ったら…どうしていいかわからなくなって…」
「…おい、どっから俺が我慢して無理してるっつー話が出て来た」
座れって言われても座ることなんて出来なくて、スカートを強く握りしめながら話し始めたのを真剣に聞いてくれたけど私の言葉に反応した。
勝己くんの顔を見ると怪訝そうな表情を浮かべてる。
「この前、上鳴くんと峰田くんと話してて……男の子は女の子に、ふ、触れたいって思う、みたいで……。勝己くんは…私に魅力がなくて、我慢して無理してるんじゃないか……って……」
「……なまえが最近悩んでたのそれか」
「…うん」
さっきお茶子ちゃんと話して整理された気持ちなんてどっかに行ってしまって、言葉を必死に紡ぎながら鼻の奥がツンとしてくる。
勝己くんに嫌われたらどうしよう、無理しててしんどかったって言われたらどうしようって、考えれば考えるほど心臓が押し潰されそうになるのを唇を噛んで耐えた。
「…俺に触られるンが嫌だとか、愛想尽かしたとかじゃねンだな?」
「そんなわけないよ!勝己くん以外考えられないもん!」
勝己くんじゃなきゃ嫌。勝己くんがいいんだもん。愛想尽かすなんてありえない。
私の言葉を聞くと私の手を取って優しく引き寄せてそのまま力強く抱きしめられる。
恐る恐る勝己くんの背中に手を回すと「…ンだよ」って弱々しい声が聞こえた。
「勝己くん…?」
「俺、なまえになんかしちまったンかと思って…はァァァ…悩んで損したわ」
「ご、ごめんなさい…」
私の行動で勝己くんを悩ませていたなんて思わなかった。
さっきよりも強い力で抱きしめられて少し苦しいくらいなのに勝己くんが安心したからだってわかるから、避けてしまったことに罪悪感がわく。
「…惚れた女には触れたいに決まっとンだろ」
「そ、そうなの…?」
「人の事なんだと思ってんだ。こっちはいつも理性保つの必死だわ」
「……我慢して無理してる…?」
「ンなもん我慢と無理の内に入んねぇよ。なまえが嫌がることはしたくねぇ」
少しだけ体を離して私の顔を見ながら愛おしそうに頬に触れてくれる。
大きくてあたたかい手と柔らかいけど真剣な表情を見てそれが本心なんだと伝わる。
元々自分にも人にも嘘をつかない事はわかっているけれど、こんなにも私は大切に思ってもらえてるんだと再認識する。
「つーか、そもそも聞く相手間違えとンだろ!アホ面と玉って人選どーなっとんだ!」
「いひゃい!だって同じ男の子だし…言ってたんだもん」
「アイツらと一緒にすんじゃねぇ!」
柔らかい表情から一変、今度は怒った顔をしながら私の頬を摘まれて手加減してくれてても痛い。
勝己くんを悩ませてしまったから文句も言えない。
「…嫌な思いさせて、ごめんね」
「もうわかった。でもまァ…今度からもうちょい本気出すわ」
「ひぇぇ…」
さっきまでと違って今度はいつものイジワルで楽しそうな顔をしていた。
自分から振った話とはいえ、今でもずっとこのかっこいい顔が近くにあるってだけでドキドキするのにこれ以上本気を出されたら私の心臓はもたないと思う。
勝己くんには申し訳ないと思いつつ私のために悩んでくれたことが嬉しかったなんて、また怒られそうで口には出来ないなぁ。
「とりあえずアホと玉殺してくる」
「私が悪いからやめてぇ…」
そのあと談話室に戻った私たちを見て、お茶子ちゃんは「よかったね!」とすごく喜んでくれた。
上鳴くんと峰田くんは勝己くんに怒鳴られてしまって、それを必死に止めて謝ると「愛されてんねぇ…」って小声で言われて恥ずかしくなった。
……怖かったけど、勝己くんの気持ちも聞けてよかったなぁ。
