僕らの日常。
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朝6時。
いつもより少し遅めに起きて部屋のカーテンを開けると外は雪が舞っていた。
ここ最近は急激に寒くなって来たし、天気予報でも雪が降るって言ってたことを思い出す。
厚手のカーディガンを羽織って髪の毛をひとつにまとめ上げてから部屋を出ると誰もいない廊下はヒンヤリと冷たい空気が漂っている。
室内なのに吐いた息は白くなって消えていく。
「寒い寒い…」
そう呟きながら小走りでエレベーターに乗り込んで共有スペースまで降りると、さっきまでの廊下と違ってエレベーターの扉が開いた瞬間に暖かな空気が流れ込んで来た。
「あったかーい…」
今度はそう呟きながら談話スペースに向かうと聞き馴染みのある元気な声が聞こえてくる。姿を見なければ一人で喋ってるみたいだなぁなんて思ったけど、これを言ったら怒られるんだろうなぁ。
「てめェはさっきから何でこの広い空間で俺の側にいンだよ、あァ!?離れろや!!」
「誰かと話してた方が緊張も和らぐだろ」
「緊張なんざしてねぇンだよ!!てめェと話してっと和らぐどころかイラつくわ!!」
話しているのは勝己くんと轟くん。これを話と言っていいのかはわからないけれど…。
2人とも、今日は仮免補講最終日。
つまり、今日仮免が取得出来るか否かが決まる。
それがあるから2人は早起きをして準備をしているところで、私は2人の準備の邪魔をしたくないからいつもより遅めに起きて今に至る。
「おはよー。今日も朝から仲良しだねぇ」
「お。みょうじおはよう」
「これのどこが仲良しに見えンだよ」
「こんなに言い合えるのは仲良しでしょー」
既に朝食を済ませて出発するだけの二人は緊張どころかリラックスしてるように見える。
そもそも勝己くんは言葉遣い、轟くんは士傑の夜嵐くんとのトラブルが無ければ仮免だって取得出来てたはず。
夜嵐くんとの衝突はもう大丈夫そうだし、勝己くんは同じ失敗はしない人だもん。
だから大丈夫だって信じられる。
「つーか起きて来なくていいっつったろ」
「そうだけど習慣で起きちゃうし、お見送りもしたかったんだもん」
二人に何か出来るわけでもないし、邪魔もしたくない。
勝己くんが「朝早ェし、準備出来たらすぐ出るから起きて来んな」と気を遣ってくれたけど、ちゃんといってらっしゃいと頑張ってねだけは顔を見て伝えたかった。
荷物をまとめて言い合いをしながら玄関に向かう二人について行って靴を履き終えるのを待つ。
「轟くんも勝己くんも、試験頑張ってね!」
「あぁ。ありがとな」
「誰に言っとんだ、余裕で取ってくるわ」
「うん!お祝いの準備して待ってる!2人ともいってらっしゃい!」
寮から出て行く後ろ姿を見送って、私も今日一日を頑張ろうって自分を鼓舞する。
と言っても今日は日曜日で授業もないし、外は雪が積もり始めてるから簡単なストレッチだけしてあとはお祝いの準備をするくらいだ。
ひとまずストレッチだけ終わらせちゃおうとそのままエレベーターに乗り込んで部屋に戻った。
「みょうじおっはよー!」
「なまえちゃんが最後って珍しいね!」
ストレッチをして体を解し終わる頃にはみんなも起きて談話室に集まっていて私が最後に行ったもんだから驚かれた。
いつもは勝己くんとトレーニングしたり一緒に話してのんびりしたりして誰よりも早く談話室にいることが多いからだと思う。
勝己くんたちを見送った後に部屋で体を解してたことを伝えると納得していた。
「ちゃんとお見送りしてたんだぁ、みょうじ!」
「大事な日だからするよ…。あ、あー、そうだ私ちょっと用事が…」
三奈ちゃんの言葉とにやけた表情を見て、逃げた方がいいと私の直感が警告している。
急いでその場を離れようとしたら後ろから肩をガッシリと掴まれた。
逃がさないという圧と「用事、ないよね?」という声が後ろから聞こえて、観念すると満足そうに「こっちおいで~」とソファに座るように促される。
ソファに腰を下ろすと三奈ちゃんと透ちゃん、響香ちゃん、それから上鳴くん、瀬呂くん、峰田くんまで集まって来た。
「え、えぇ…みんな集まって…私なにかした?」
「いやいや!なんか面白そうだなって思っただけ!」
「だってぇ!たまには2人の惚気聞きたいのにいつも聞かせてくれないじゃん!恋バナしたい~!!」
「爆豪くんいないし絶好のチャンスでしょ!」
なるほど、そういうことか…。
勝己くんがいると怒鳴られて何も聞けないからいない間に私から聞こうってことね。
しかもこうやって集まるってことは私が来る前に打ち合わせしてたんだ、きっと!
私の直感は当たっていたみたい。
「そういう話は恥ずかしいので却下!」
「却下なし!」
「というか私たちの関わり方もずっと見てるじゃない?」
学校でも寮でもずっと一緒なんだからみんなには全部知られてるはず。
普段は、特に人前では私も勝己くんもベタベタくっつかないし、勝己くんといられる時間は特別で大好きで、だから濃く思えるけど実際は離れてお互い友達といる事の方が多い。
だからこそ恋バナが聞きたいのかもしれないけれど。
「二人の時は違うかもしれないじゃん!!」
「あの爆豪がデレてたりしてな!」
「みんなといる時と変わらないよ」
「いやいや。爆豪がみょうじを見る時の目、めちゃ優しいから」
「みょうじの名前呼ぶ時も俺らの時とは違くね!?」
「わかるぅ!なんかぁ!愛おしそうにしてるよねぇ!」
「あ…う…やめてぇ…」
「オイラも呼んでやろうか?」
勝己くんが私のことを大切に思ってくれてることは、視線から、触れる指先から、態度や行動から、言葉から、勝己くんの全部から伝わってくるもの。
だからそうやって人に言われるとすごく恥ずかしくて手で顔を隠した。体温が上昇して顔が熱い。
「よく部屋行ってんじゃん?何もないわけ?」
「その日あった事話してるだけ…もう恥ずかしいからやめようよ!」
そ、そりゃ…喋って終わりの時もあればそうでない時もある。
キ、キスはたくさんする。力強いのにすごく優しくて熱くて甘くてとろけてしまいそうになって、ずっと、もっとたくさんしたいって思って、幸せで…。
うわぁぁ…みんながいる前で何考えてんだろうって勝手にもっと恥ずかしくなった。
「はァ!?付き合ってる男と女が同じ部屋にいて喋って終わりなワケねぇだろ!!そこに合法的に触れる女体があるんだぞ!!」
「うるさい」
目を血走らせて喋る峰田くんに響香ちゃんのイヤホンジャックが炸裂した。
だけど、峰田くんの言葉が引っかかった。
私も勝己くんには触れたいって思うけど、私が思ってるよりもっと大人なやつの話
…だよね…?
ずっと前に1度だけ胸を触れられたことはある。けど、それだけ。
あの時はドキドキしていっぱいいっぱいで考える余裕なんて少しもなかったけど、キスして抱きしめ合うだけじゃ本当は嫌なのかな…。
「…男の子は、好きな子に触れたいって思う?」
「え、ん、まぁ、そりゃ触れるもんなら…」
「付き合ってなくても触りてぇだろ!」
「それは峰田だけ」
「サイテー」
私、勝己くんの…というか、男子高校生の気持ちをわかってなかったのかな。
でも触っていいですよなんて自分から絶対言えない。自信がある体でもないもん…。
前に触れられた時も許可を取られたわけでもなく自然にだった…。
…あれ。それってあの1回でもういいやってなったってこと…?
「……私に魅力がないのかな……あっ!!ち、違うから!違う!」
無意識に言葉にしていた事に気付いて慌てて否定するけど、これじゃ勝己くんが触ってくれないって言ってるようなものだ。
勝己くんを巻き込んじゃった。穴があったら入りたい。今すぐ逃げ出したい。
「爆豪さ、あいつ前にみょうじのこと引くくらい大切にしたいって言ってたんだよ。あのかっちゃんがよ!?だからなんつーか、みょうじが気にする必要ねぇと思うわけよ!」
「だ、大丈夫!勝己くんが大切にしてくれてることはわかってるから!」
「なんだったらオイラがいくらでも触ってやるよ」
「爆豪に爆破されろ」
こういう時、どうやって切り抜けたらいいのかわからなかった。
私は今すごく幸せだから勝己くんもそうなんだって勝手に思ってた。
本人に聞いた訳でもないけど、私全然勝己くんがどう思ってるのか考えてもなかったんだ。
少しだけ怖いけど話をしなきゃいけない。
それからはぐるぐると考えが巡ってしまうのを遮るようにみんなで2人が帰宅する時間に合わせてお祝いの準備をした。
勝己くんは我慢してるのかな?私に魅力がない?そもそも私に興味が無い?だけど勝己くんが大切にしてくれてることは伝わるし…。そうやって少しでも時間に余裕ができると考えてしまう。
本人しか知らないことを何度考えても本人に聞かないとわからないもの。
上の空になってしまってもみんなに心配をかけたり気遣わせたりするだけだから、なるべく考えないようにした。
「爆豪くんと轟くんなんか遅ない?」
「二人ともちゃんと合格して帰って来るから大丈夫だよ!」
「つーかしてくれないと困るって。パーティーの準備したんだから」
18時頃帰宅予定と言っていた二人はまもなく19時になるけどまだ帰って来ていない。
オールマイトが付き添いとして同行しているし、勝己くんと轟くんはうちのクラスのツートップだから心配をしているわけでもない。
どちらかと言えば18時に合わせてパーティーの準備をしたから時間を持て余してるって方が正しいかもしれない。
まだかまだかと二人を心待ちにしていると少ししてガチャっと玄関が開く音が聞こえて、待ってました!とみんな一斉にバタバタと玄関に向かった。
「おかえりー!!!!」
「ただいま」
みんなで出迎えに行くと轟くんが少し驚いた顔をしながら返事をしてくれて、勝己くんは気にせず靴を片付けてる。
二人はいつもとなんら変わらなくて、こっちの方がそわそわしてしまう。
「…で!?結果は!?」
「合格した。爆豪も」
轟くんからその言葉を聞いて「やったああああ!!!!」「これでA組全員仮免持ちだ!!!」ってみんなで大喜びした。
そのままみんなは轟くんを囲んで共有スペースに戻って行った。
「勝己くん、おめでとう!!」
「…おう」
「……?どうしたの?」
玄関に残って勝己くんに言葉をかけると私のことをジッと見てから返事をしたので不思議に思いながらその顔をジッと見返すと勝己くんの手が私の頬に伸びる。
車で帰って来たからか、そんなに冷たくない。大きな手が優しく触れる。
「なまえ、なんかあったんか」
「え?えへへ、なにもないよ」
「……ふーん」
私の答えにあまり納得してない様子だけど、それ以上は何も聞いてこなかった。
いつも通りにしてたはずなのに、帰って来て一言言葉を交わしただけでなんでわかるんだろう。
頬に触れた勝己くんの手は私に愛おしそうに触れてくれて、それがすごく伝わるからますますわからなくなるし、試験から帰宅したばかりの彼にする話でもない。
だから「お祝いの準備してあるんだよ!」って話題を変えて勝己くんを共有スペースに促した。
「予定より帰り遅かったね」
「ヴィランのして来た」
「え!?ヴィラン!?戦ったの!?」
「おー。クソザコだった」
それからみんなでいっぱいお祝いをして楽しんだ。
仮免取得後に華麗なヴィラン退治をした勝己くんと轟くんの元には数日後にメディアの方がインタビューをしに来た。
私はまだ勝己くんに胸のモヤモヤを話せないでいた。
