僕らの日常。
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休日のお昼を少し過ぎた時間。
クラスのみんなは息抜きでお出かけに行ったり、訓練に出向いたりしていて寮に残ったのは私と勝己くんだけになった。
寮に残ったと言っても私達もさっきまで訓練をしていて戻って来てようやく一息ついてお昼を食べ終わったところで、他のみんなとは入れ違いになっただけなんだけど。
食べた物を片付けて談話スペースのソファに体を沈めるとさっきまでの訓練で息付く間もない緊張感からのんびりとした時間が流れ始める。
勝己くんと過ごすこの時間が好き。
「こんなにのんびりするの久しぶりな気がする」
「てめェが忙しねぇからだろ」
「勝己くんも補講あるしお互い様だよー」
今日は勝己くんと轟くんの補講はお休みで、轟くんは外出したみたい。
私が九州に行ったり、その時の補習に両親との話し合いにと慌ただしくしていて、勝己くんと過ごす時間は放課後の訓練とご飯の時くらいになってしまって、その時間はもちろんクラスのみんなもいるわけだから二人きりなんていつぶりだろう。
「勝己くんの隣、あったかくて好き」
携帯を触りながら隣に座る勝己くんの肩に頭を寄せると体温が伝わって、あったかくて安心する。
みんなの前ではこんなことしないし、2人きりなのもあってなんだかくっ付いて甘えたくなった。
「あァ?てめェの方がお子様体温だろーが」
「…好きなのは本当だけど、くっつく口実だもん…」
言いながら恥ずかしくなって顔に熱が集まって来るから少し俯いて勝己くんから顔が見えないようにした。
勝己くんはいつも余裕があるからどう思ってるのかわからないけど、私はたまには甘えたいし、甘えてもらいたいですし…。
ただ一緒の時間を共有出来れば嬉しいし、そんな時間が幸せで続けばそれだけでいいって思うけど、同時に好きな人には触れたいとも思うわけで。
「なまえ」
「なぁに」
「くっつくだけでいいンかよ」
「……」
「こっち見ろ」
「…やだ……んぅっ!」
私が拒否の言葉を呟くと勝己くんに頬を掴まれて強制的に上を向かされて顔を見られてしまう。
勝己くんの表情には余裕があって私の気持ちなんて全部見透かされてるみたいに悪い顔をしているから余計に恥ずかしくなる。
「ちゃんと目ェ見ろや」
「う…えっと…」
「泳ぎ過ぎだわ」
「だって…」
「だってなんだよ」
「わ、わかってるのに言わせようとするのイジワルだよっ」
そ、そんなのたまにはくっつきたいし、キ、キスだってしたいし…!
自然な流れだったら出来る…けど!のんびり寛いでる休日の午後に突然キスしたいだなんて言えない!
「わかりやすくキスしてぇってツラに書いてあンだよ」
「書いてないでしょ!」
「いいから黙ってろ」
勝己くんの目に見つめられると吸い込まれちゃいそうで抗えなくなる。
いつもより静かで低い声と、近付いてくる整った顔に細められる目が色っぽくて、どうしようもなく胸がきゅんとして苦しいくらいに高鳴る。
あ、もう唇触れる…。
そう思った時に「ガチャ」と玄関が開く音が耳に入った。
「わあっ!!」
「……は?」
誰か帰って来た、そう反射的に理解して思わず勝己くんを突き飛ばしてしまった。
それも私の力だけじゃ勝己くんの力に負けるから風の個性を付与して。
反動で私はソファに倒れて、勝己くんは受身を取って床に着地していた。
う…どうしよ…反射でつい突き飛ばしちゃった。絶対怒ってる顔見るの怖い!!
「なんだ、爆豪ひとりか?」
さっきまでのときめいてる緊張から、見られたんじゃないかって緊張に変わって冷や汗をかき始めた私の耳に聞き慣れた声が届いた。
この声、相澤先生だ。
ソファに倒れたままだから私のことは死角になって見えてないみたい。
だったら尚更勝己くんとのその、キスしそうなところを見られなくてよかったと安堵する。
「お前だけだと任せられないな…」
「あァ!?」
「せ、先生!私もいます!」
起き上がって先生に存在をアピールすると何かを考えるように私と勝己くんを交互に見てからまた視線を私に戻した。
私たち2人だけなのを不思議に思ったのか、先生が来てすぐに顔を見せなかった私を不自然に思ったのか、とにかく何か突っ込まれたらなんて答えようって頭の中でグルグルと考えを巡らせる。
「みょうじ、ちょうど良かった。頼みたいことがあるんだが」
「俺に任せらんなくてみょうじに任せられるってなんだァ!!」
先生に噛み付く勝己くんにハラハラするけど、もう慣れているのか意に介していないみたい。
私は私で頼まれ事でよかったと密かにホッとした。
「休みに悪いんだがこれから緊急の職員会議でな。エリちゃんのこと見ててもらってもいいか?」
「エリちゃん!もちろんです!」
エリちゃんと仲の良い通形先輩も用事で外出、緑谷くんも訓練中で他に関わりのある人がいなかったみたい。
私も少しエリちゃんと顔を合わせたことがあるだけで、しっかり一緒にいるのは初めて。仲良くなりたいって思ってたから嬉しい!
そこまで考えて、勝己くん1人じゃ不安になる先生の気持ちもわかってしまった。
先生が玄関の方に「入っておいで」と言うと恐る恐るエリちゃんが姿を見せて「こんにちは。よろしくお願いします」って丁寧に挨拶をしてくれた。
「エリちゃん、こんにちは!みょうじなまえです!よろしくお願いします!」
目線をエリちゃんに合わせてしゃがみながら挨拶を返すと先生は「それじゃあ頼んだ」と寮を出て行った。
目の前に残されたエリちゃんは慣れないA組の寮とほとんど関わったことのない私たちに緊張してるみたい。
「あ、こっちの人はね爆豪勝己くんだよ!目付きと言葉遣いが少し悪いけど、本当は優しい人だから安心してね」
「誰の目付きと言葉遣いが悪ィンだよ」
「……たいこのかっちゃんさん」
「わあ!そう!太鼓やってたかっちゃんだよ!」
「クソデクの仕業か。ぶっ飛ばす」
エリちゃんをソファに案内してから冷蔵庫の中に入っているジュースをコップに入れてクッキーと一緒にテーブルに置くとお礼を言われた。
まだ小さいのにしっかりしている…。自分が同じ年齢の時はこんなにしっかりしてなかった!
勝己くんは部屋に戻るかと思ったけど一緒にソファに座って近くにいてくれて、私たちを見守ってくれてる、やっぱり優しいって顔がにやけてしまった。
「このクッキーおいしい」
「美味しいよね!私もそのクッキー大好きなの!砂糖くんが作ってくれたんだよ!」
砂糖くんは個性訓練を兼ねてお菓子作りをしているからおすそ分けしてくれるんだって補足をすると個性って言葉を聞いて、エリちゃんの顔が少し曇ったように見えた。
相澤先生や緑谷くんにとても6歳の子が経験しなきゃいけなかった物とは思えない程の痛みや苦しみとずっと独りで戦ってきていたって聞いた。
こんな小さな女の子がそんな苦しみを独りで背負っていく必要は無い。
「エリちゃん。私の個性、少しだけエリちゃんと似てるんだよ!」
「え…?」
「ほんの少しだけどね、一緒!」
私の治癒は対象者の細胞を活性化させて治す手助けをしているだけだから、厳密に言うとエリちゃんの巻き戻しとは違うもの。
だけどそんな細な仕組みよりこじつけでもなんでもいいから、少しでも心の拠り所になれればいいと思った。
「私もね、ずっと自分の個性の使い方がわからなかったの。でも人を助けたい、ヒーローになりたいって思ったからいろんな方法で使い方試して、前より使えるようになったんだよ!それでもまだまだ練習中だけどね!えへへ」
エリちゃんも個性訓練をちゃんとしたら使い方がわかって暴走だってしなくなる。
ヒーローになれってわけじゃない。ただ、自分の個性は理解してた方がいいし、自分でも抑えられる術を身に付けておいて損は無い。
「私の個性もエリちゃんの個性も、誰かの辛くて痛くて苦しんでいる物を取り除いてあげられる、その手伝いが出来る、とっっても優しい個性なんだよ!」
「自分で言うンかよ」
「本当のことだもん!」
「……やさしい、個性」
ずっと私の言葉を黙って聞いていた勝己くんが声を発した。
エリちゃんの表情もさっきより少しだけ明るくなったように思う。
少しだけだとしても私も同じだよ、みんなエリちゃんが大好きで頼って欲しいって思ってるよって伝わればいい。
「すぐには難しいかもしれないけど、優しい個性を持った自分のことを少しずつでいいから好きになってあげてね。私たちはエリちゃんのことが大好きだよ」
「巻き込むんじゃねぇ」
勝己くんの腕を無理やり組んでエリちゃんにそう言うと、文句は言っても否定はしなかった。
私が「照れてる~!」って冗談で言うと「てめぇには目ン玉付いてねぇンか」って言われて、笑いながら数回言葉を交わしていると「仲良しさん…!」って私たちを見たエリちゃんが言った。
「私、エリちゃんともっと仲良しさんになりたいな」
「私も、なりたい、です」
「えへへ、嬉しい!」
相澤先生が戻って来るまでの1時間半くらいの間、器用な勝己くんにお願いしてお揃いのヘアアレンジをしてもらったり、たくさんお話もして仲良くなれたように思う。
だから先生は大変だっただろうけど、私たちにエリちゃんを任せてくれてありがとうございますって気持ちでいっぱい!寮にいてよかったー!
「おい」
そんな風に浮かれながら使った食器を洗っている私を現実に戻すように勝己くんの低くて威圧感のある声が私の耳に届いた。
これは不機嫌かもしれないと思いながら彼の顔を見ると予想通り不機嫌な表情丸出しの勝己くんが私にがんを飛ばしているので、洗い物を中断して勝己くんに向き直る。
「ど、どうしたの?」
「俺ァてめェに突き飛ばされたまんまなんだが?」
「あ!ご、ごめん!扉が開く音が聞こえたから反射でつい…」
エリちゃんと遊んで浮かれてる私にイライラしてるみたいで、言われてみれば突き飛ばしておいて謝るのを忘れていた…。
言い訳になっちゃうけど、あの時は本当にビックリして反射で個性まで使っちゃったから怒るのは当然だ。
勝己くんは表情を変えることなく私を睨み付けてる。
「…ごめんね。どうしたら許してくれますか?」
「……ン」
「な、なに?」
ほんの少しだけ顔を私の方に差し出すようにして何かと思ったけど、これ多分キ、キス待ってる。
た、確かに先生があと5秒遅かったらくっ付いていた…。
でも寮のキッチンで、もうみんなも帰って来る時間だし…だけど勝己くん不機嫌だし、許してくれる?って聞いたの私だし、でもでも自分からするの恥ずかしいけど勝己くんがキスしたいって言ってくれるの珍しいし、目が早くしろって言ってるし…ええい!ごちゃごちゃ考えても、みんなが帰って来る前に勝己くんの機嫌を直すのが最善なんだから!!
私の前に立つ勝己くんの服を掴んで、身長の高い勝己くんの唇に向かって背伸びをした。
柔らかい唇に一瞬触れて、離れる。
「早ェよ」
「え、ん…ぅ」
離れた私を逃がさないように後頭部に手を回されたと思ったらそのまま唇に勝己くんの唇が降ってくる。
みんながいつ戻って来るかもわからないから止めなきゃって思うのに、何度も唇を食むようなキスをされて頭がとろけそう。
強気で言葉も行動も荒いのに、この時はいつも優しくて甘くて、それなのに刺激が強くてどうにかなっちゃいそう。
「たっだいまー!」
「帰宅時間一緒じゃん!」
「つーか聞いてよ、さっきさー」
玄関が開く音と同時に複数の元気な声が薄らと聞こえてみんなが帰宅したんだと気付いて勝己くんの胸元を必死に叩いて解放して欲しいと訴えるとリップ音を鳴らして顔が離れた。
音も感触も体温すらも全部が体に残って、熱くて頭がほわほわする。
「そのツラ、他のヤツらには見せンなよ」
「ば、ばかっ!」
満足そうに少し意地悪く笑ってそう言いながら私から離れてソファの方に戻って行く後ろ姿に悪態をつくのが精一杯だった。
…勝己くんのあの顔はずるい。だってかっこいいんだもん…。私があの顔に弱いの知っててやってるのかもしれない。くそぉ…。
私の声を聞いて心配そうに共有スペースに入って来たクラスメイトたちに「ふざけ合ってただけだよ」と心臓がドキドキしてるのを隠しながら言い訳をするのでした。
そしてこの後、クラスのグループメッセージにえりちゃん、私、勝己くんが並んで髪の毛のアレンジをしている写真がスニークスキルの高い透ちゃんによって送られて来て、しばらくの間いじられて恥ずかしかった。
探りを入れたら「バレないように写真だけ撮って外出し直した!」と言っていたのでキスしてるところは見られてなくてよかったって心から思った。
透ちゃんの個性恐ろしすぎる!!
