僕らの日常。
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焦げたような臭いと小さな黒煙。それが発生する度に鳴る爆発音。
勢いのある爆発はなんとか自分に向かって来ないように風を使って少し軌道を逸らすのが精一杯。
あぁ、もう。息付く暇もない。少しでも気を抜いたら死ぬ。
「おらなまえ!死ぬ気でやれやァ!!」
「うっ…!」
その言葉を発しながらも攻撃が止むことはなく何発も撃ち込まれ続ける。
放課後、訓練所の使用許可をもらって私の苦手な対人戦闘の訓練を行っている最中だけど、きっと私が何も知らずにこの場にいたなら訓練だとは思わない。
そのくらい勝己くんの爆破はちゃんと高火力で一切手を抜くつもりはなく本気だ。
だからこそ彼に訓練の相手をお願いしたし、本気でやってくれることはありがたい。
爆破の威力を使って空中にいる勝己くんからの攻撃はまだ続く。
「もっと本気出せや!!訓練にならねぇだろーが!!」
「くぅ…もう、限界ーーーーっ!!!!!」
「甘えんな!!」
動けば動くほど個性の調子を上げてくる勝己くんに対して私はどんどん体力が減っていく。
この状況をどうにかしないとこの訓練は終わらないし、私も成長出来ない。
ここでやめたら何も変わらないもの。
まずは勝己くんに近付かないと私に勝ち目はない。
「これならどうだっっ!!!」
「大雑把なんだよ、てめェは」
さっきよりずっと強い風を勝己くんの爆破の熱気ごと巻き上げて一帯に竜巻を起こして勝己くんの攻撃の軌道をずらす。
私と勝己くんの間に出来た竜巻はお互いの視界を奪う。
勝己くんだって竜巻の向こうにいる私がどこにいるか、正確な位置なんてわからないはず。
だったら風の中から…!
「そこっ!!」
「バカか」
「…いっ!!」
竜巻の中から勝己くんがいる位置まで上昇して自分の体を風で押して加速させながら飛び出して、そのままの勢いで拳を繰り出した。
だけど飛び出した瞬間、勝己くんとばっちり目が合ってこれはミスったって瞬間的に思ったけどもう遅い。
出した腕を掴まれたと同時に捻り上げられてしまって降参を余儀なくされてしまった。
「やっぱダメかぁ…」
そう呟きながら勝己くんと一緒に地上におりる。
腕を捻り上げられたって言っても、もちろん手加減してくれてるから痛いのはほんの一瞬だったからすでになんともない。
「みょうじ大丈夫か!?」
「2人とも派手にやるねぇ」
一緒に訓練所に来ていた切島くんと瀬呂くん、上鳴くんが私たちの模擬戦を見て心配したり感想を言ったりしながら集まって来た。
私はみんなに笑いながら「大丈夫だけどまだまだだね」と応えた。
「てか爆豪さぁ、彼女相手によくあの思い切りのいい爆破を何発も撃てんね!?」
「あァ?なまえだからだろ」
「信頼だ」
上鳴くんの言葉に平然と言う勝己くんに少し嬉しくなった。
勝己くんに比べたら全然弱い私に対して手加減をしないでくれてる。それは私の力を認めてくれてるってことだもん。
「つーかなまえ!」
「最後の攻撃だよね…バレバレだった」
「対人苦手なヤツが正面から突っ込むンじゃねぇ!実践だったら死んでんぞ」
「う…おっしゃる通りです…」
私はあの場で正面からじゃなくて背後、頭上、足元の死角から攻撃するべきだった。
冷静になればそんなことすぐにわかるのに、いっぱいいっぱいになると判断力が鈍る。
それはこちらを殺しに来てる可能性のあるヴィランを相手にする時に命に直結する大問題。
どうしたって戦闘での経験が劣る。だけどこのまま苦手だからって何もしなかったらみんなとの差は広がるし、私の理想とするヒーロー像からも離れてまう。
もっと経験を積まなきゃ。
「さっきの見て体育祭での爆豪麗日戦思い出したわ」
「あん時の爆豪のヒールっぷりな!」
「あ、みょうじはヒーロー科ひとりだけ予選落ちだっけ!」
「…やめて、言わないでよっ」
みんな楽しそうに話すけど私にとっては苦い思い出のひとつで穴があったら入りたい。
あの頃はまだ今みたいに上手く個性を使えなかったし、倒れて来る大型仮想ヴィランから他科の人たちを助けてたら出遅れたというか…。
何を言っても言い訳にしかならないけど。
「来年は優勝するからいいのっ!!」
「優勝すンのは俺だわ」
「じゃあ決勝対決だね!」
「まず訓練で俺に勝ってから言えや」
「うへへー」
ヴィランのタイプだって数え切れないほどある。
勝己くんだけに相手をしてもらっていては勝己くんの戦い方の癖で戦うスタイルが私にも身に付いてしまう。
それを避けるためにも切島くんたちにお願いして訓練に付き合ってもらってる。
来年の体育祭で勝ち残るためにも、それから将来プロヒーローになれた時のためにも、私は少しでも多くのことをみんなから吸収しなきゃいけない。
「よしゃ!爆豪!連戦で悪ィけど俺の相手も頼む!」
「ハウザー撃ち込んだらァ」
「おう!来い!」
「度が過ぎてたら治癒してあげないからね!」
そのあともローテーションで何戦か訓練をした。
勝己くんと切島くんの訓練はいつも迫力がすごい。勝己くんも容赦なく爆破を撃ち込むし、切島くんは硬化の持続時間が前よりも伸びてる。
瀬呂くんはテープを使ってのトラップが上手いし、上鳴くんもポインターで放電の誘導を出来るようになってから敵だとしたらますます厄介だ。
みんなにはたくさんいい刺激をもらえる。頑張らなきゃって思える。
「そういやみょうじ、両親と相澤先生交えて話し合いしたんだっけ?」
訓練所を片付けてから制服に着替えて、職員室に鍵を返して帰路に着く。
校舎から寮までの5分程の道をみんなで歩いていると瀬呂くんにそう話を振られた。
「うん、したよ!」
「九州の時のあの状況だけでもビビるっつーのに、みょうじまで来たから俺も気が気じゃなかったっつーか…親御さんからしたらもっとだったよなぁ」
目が覚めてすぐに電話をした時に生きた心地がしなかったって言われた。
それ程までに心配をかけてしまった。もちろん友達たちにも。
これを言ったら忘れろって怒られるから言わないけど、神野の時は私も胸が張り裂けそうだった。だからみんなにもう一度「ごめんね」って謝った。
「親御さんにはヒーロー続けること許しえもらえたんだろ?」
「元々反対はされてなかったの。でもやっぱり心配だって。だけど相澤先生のお陰でちゃんと応援するって言ってもらえたよ!」
相澤先生の言葉があったからこそだけど、最後には両親も笑ってくれた。
それでもっと強くなるって先生とも両親とも約束したから、私はみんなの何倍も努力しないといけない。じゃないと肩を並べられないし安心もさせられないもん。
「さすが相澤先生!」
「みょうじも頑張ったんだな!」
「勝己くんがね、私なら大丈夫って背中押してくれたの」
九州から帰って来た日、両親と話すことになったと勝己くんに伝えた時に言われた言葉。
いつだって私を信じてくれてるって思えてすごく嬉しくて、その言葉にどれだけ背中を押されたかわからない。
私の発言で3人が勝己くんを見ながら「へぇ~」ってにやけたもんだから「ぶっ飛ばすぞ!」って勝己くんも怒ってて思わず苦笑いしちゃった。
「そ、それでね!両親と相澤先生に強くなって立派なヒーローになるって約束したの!だから、みんなにも負けない!」
言い合いになりそうな4人を止めるように、だけど本心を言うと「おう!俺も負けねぇ!!」って切島くんが拳を握った。
上鳴くんと瀬呂くんも「俺も!」って返してくれて、戦闘が苦手な私でもライバルとして認めてくれてるって嬉しくなる。
「俺が勝つ」
「うん!でも私も負けない!」
「さっきからいい度胸してやがんなァ」
「えへへ、勝己くんに鍛えられてますからねぇ」
勝己くんを隣から見上げて笑うと彼も口角を上げていた。
クラスのみんなが私の原動力で、負けられないから私も頑張れる。
それになにより勝己くんがその存在で、態度で、言葉で私を引っ張り上げてくれるから隣にいればどんなことだって乗り越えられるって思える。
だけど支えられるばかりじゃ嫌だから、いつか私も支えになりたい。
それで隣に並び立てるような、両親と相澤先生に認めてもらえるような立派なヒーローになるんだ。
「ハイハイ、ノロケごちそーさまでーす」
「え!?ち、違うでしょ!?」
「見つめ合って微笑むとかノロケ以外のなんでもないっしょ」
「からかわないでよっ!」
「事実」
「うるせンだよ!黙って歩けやクソども!!」
またここから、がんばろう。
