僕らの日常。
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退院して雄英に帰って来たのは日も傾き始めた頃だった。
私がまだヴィラン連合に狙われていたこと、そしてケガをしたこと、メディアに流れてしまったことを考慮して、退院に合わせて雄英がプロヒーローを派遣してくれて無事に帰って来ることが出来た。
そのままプロヒーローと一緒に雄英の職員室に向かい相澤先生に報告をするとヒーローはすぐに帰って行った。
「体の具合はどうだ?」
「絶好調です!たくさん休ませてもらいました!」
「ホークスがいるからとこちらも油断した。すまなかった」
「あそこで脳無が出て来るとは思いませんよ!みなさんのおかげでこうして無事ですし、自分の課題を見つけられました」
少しは強くなったと思っていたけれど全然ダメだった。治癒があったから怪我無く済んだだけで、荼毘は私に対して本気を出していなかった。遊びくらいだったんだと思う。
私の顔が暗くなっていたのか、相澤先生が私の肩を力強く掴んだので顔を上げる。
「みょうじの行動はあの場での最善だったよ。よく捕まらず、無事に帰って来た」
「…はい!」
「とは言え個性あるからって自分を犠牲にする戦い方は改めておけよ」
「う…はい…」
先生の言葉が私は間違っていなかったと肯定してくれて、無事だったことを喜んでくれて嬉しかった。
その後の一言は現実に戻されてしまったけど、その通りすぎて返す言葉もない。
そして、鍛え直すのと同時に避けて通れないもうひとつの問題を先生に切り出す。
「あの…今回の件で両親に心配をかけてしまって、応援するために一度ちゃんと話をしたいと言われました」
「それについては学校としても親御さんにきちんと話すつもりでいる」
自分一人でも納得して安心してもらうつもりでいたけれど、先生が付いていてくれるならそれほど心強いことはない。
話すなら早い方がいいからとその場で日程を調整してくれて、私と両親と相澤先生で話をすることが決まった。
それが決まるとすぐに「疲れてるだろうから帰って休め」と言ってくれて職員室を出て寮に戻る。
たった数日で懐かしさすら感じる寮の扉をガチャっと開けた。
「なまえちゃん、体はもう大丈夫なん!?」
「あのヴィランのヤツに抱えられて来た時は肝が冷えたぜ」
「あれ爆豪の手榴弾だよな!?ゼロ距離であの威力食らう覚悟あんのすげぇよ」
「無事に帰って来てくれてよかったよぉぉ!!」
寮の玄関を開けながら、ただいまと足を踏み入れるとクラスのみんながすごい勢いで出迎えに来てくれた。
私が言葉を発する隙なんてないくらい矢継ぎ早にいろんな言葉が飛び交っている。
それを聞いて気が抜けた自分と、コロコロと変わるみんなの表情におかしくなる。
「心配かけてごめんね。体はもうこの通り大丈夫!!」
笑ってガッツポーズをして見せるとみんなも安堵の表情を見せて、本当に今回の件はいろんな人に心配をかけてしまったなぁって反省する。
「みんな!みょうじくんも帰って来たばかりで疲れているんだ!座らせてあげたまえ!」
飯田くんの気遣いもあってやっと寮の中の談話室に来ると「我が家だぁ!」とソファに座って身をゆだねた。
そのままみんなと喋っていると轟くんがエレベーターから降りてこちらに近付いて来て、そのまま私の前にしゃがみ込んだ。
「みょうじ、無事でよかった」
「うん、ありがとう」
「親父がいたのに危険な目に遭わせて悪ぃ」
「なんで轟くんが謝るの?誰も悪くないよ、私の弱さだよ」
みんなと同じように轟くんもあの中継を見ていたと思う。だとしたらお父さんがあんな大怪我をしてしまって気が気じゃなかっただろうし、それに謝られることは何も無い。本当に全部私が弱くて私のせいなんだから。
「それにヒーローやってたら絶対危ない目にも遭うし怪我もする!だから対応出来るように今よりもっと強くなるから!」
そのために今ここでたくさんのことを学んでる。いつまでも下を向いている時間なんてない。
私が笑うと轟くんの表情も柔らかくなったように見える。
「また訓練付き合ってね」
「俺のも手伝ってくれると嬉しい」
私たちのやり取りを見ていたクラスのみんなも「俺たちともやろうぜ!」って言ってくれて和やかになった。
みんなで盛り上がっていると「訓練と言えばさ!」と上鳴くんが言ったのでそちらに視線を向ける。
「AB対抗戦の爆豪!身を挺して耳郎のこと庇ってさぁ!」
「おお!あれな!あの時の爆豪はかっけぇつーか、漢だったよな!」
「わぁ!そうなの!?」
訓練でクラスごとの対抗戦をしたこと、勝己くんが響香ちゃんを庇ったこと、4-0無傷でB組に勝ったこと。
その話を聞いて私もその場にいてかっこいい勝己くんを見たかったなぁって、少しだけ悔しくなった。
「…爆豪には内緒だけどな。アイツ、みょうじがヴィランに捕まってんの見て血相変えてさ、戦いが終わったら珍しくへたり込んでたんだぜ」
「だけどなまえちゃんが頑張っていたのを見たから、対抗戦で爆豪ちゃんもああいう行動をしたんだと思うわ」
勝己くんをそんな風にさせてしまうくらい心配かけちゃったんだ。
電話した時に大きく息を吐いていたのは、きっと私の声を聞いて「生きてる」って実感して安心したのを隠すためだったのかもしれない。
聞いても彼は答えないだろうから私の勝手な推測でしかないけれど、彼は優しい人だから。
「…私、勝己くんのところ行って来る」
「おう!アイツなら多分まだ訓練場だと思うぜ!」
「うん!ありがとう!」
早く勝己くんに会いたくなって寮を飛び出した。
毎日この時間にトレーニングをしていることは知っているし、雄英に帰って来る時に「寮帰っとけ」ってメッセージが届いてた。
あれはみんなも心配してたから先に帰って安心させてやれってことだってすぐにわかった。
彼はとても優しいのにそれを見せない。
いつも強い彼がへたり込んでしまうくらい、私は彼に心配をかけてしまった。
走って走って、行き慣れた訓練場にたどり着いて少し重い扉を開けるとすぐにペットボトルに入った飲み物を口に流し込んでる勝己くんを見付けた。
離れていたのはたった数日なのに彼の後ろ姿をひどく懐かしく感じた。
私の気配に気付いたのか、ペットボトルを口から外してこちらを振り向いた勝己くんが「おう」と短く言葉を発した。
声を聞いて足が勝手に走り出して、勝己くんの胸に飛び込むと抱き止めてくれた。
「おま、零れんだろ。…体調は大丈夫なんか」
「うん、大丈夫」
あの時、神野で勝己くんが拐われて気が気じゃなかったみたいに、きっと勝己くんも今回は気が気じゃなかったんだと思う。
だからこんなにも私の存在を確かめるように力強く抱きしめてくれているんだ。
勝己くんの匂いも体温も、腕の力強さも、帰って来れたんだって実感する。
「心配かけてごめんね。勝己くんのおかげで帰って来れたよ」
「自分の力だろーが」
彼は素直じゃないけど嘘はつかないから。
だから私の力と言ってくれたことも、電話で情けなくないと言ってくれたことも、勝己くんの言葉だから嬉しい。
いつも負けないように頑張ろうって言葉で、存在で、私を鼓舞してくれる。
「勝己くん、好き。好きだよ。大好き」
「ンだよ突然」
「なんか言いたくなった」
好きがいっぱいあふれて来て、どうしようもなく言葉にしたくなった。
勝己くんの背中に回した腕に力を入れて今よりも強く抱きしめると勝己くんも私のことを苦しいくらいに強く抱きしめてくれた。
「…クソなまえ」
「なぁに?」
「…帰って来たから許してやらァ」
「うん、ありがとう」
少しの間抱きしめ合って、それから一緒に寮までの道を並んで歩く。
隣に勝己くんがいてくれるだけで嬉しくて、心地よくて、すごく安心出来る。
私はいつでもここに帰って来たい、彼の隣に帰って来るためなら頑張れるって思った。
「あ!さっきみんなからクラス対抗戦のお話聞いたよ!勝己くんが響香ちゃんのこと庇ってかっこよかったって!見たかったなぁ!」
「そうすンのが俺が勝つためにベストだったからだわ」
「んふふー、そっかぁ!」
勝つためにベストな行動だったんだとしても、身を挺して誰かを守るというのはまさにヒーローで、そんな姿を間近で見たかった。
そんな行動も自分のためだって素直に認めない彼はいつも通りで思わず笑っていると隣から視線を感じる。
「…ったく、余計なこと考えてねぇで、その間抜け面晒してりゃいーんだよ」
「えぇ…?」
電話した時に心配かけたくなくて私が明るく振舞ってたの、勝己くんにはバレてたんだと思う。
逆に心配させて気を遣わせてしまったのかって申し訳なくなった。
だけど後悔ばかりして立ち止まるのはやめた。強くなるために前に進むと決めた。
いつまでもくよくよしてる時間なんてないんだから。
「お母さんたちに心配かけちゃって、今のままだと応援出来ないからって1度ちゃんと話すことになったの。でも!応援してもらえるように頑張るから!」
「大丈夫だろ、なまえは」
あぁ、もう、本当に敵わないなぁ…。
前を見たまま言われたその言葉は彼からしたらなんてことない一言なのかもしれないけれど、信頼してくれてるのが嬉しくて、私の背中を強く押すには十分すぎる一言だった。
「うん!」
私の好きな場所にいるために、私のやりたい事をするために、心配させることが少しでもなくなるように、応援してもらえるように、ちゃんと話そう。
そうやって改めて心に決めて、大好きな人の隣を歩いた。
